対談Interview

株式会社 日立ソリューションズ 様

人財こそが会社の財産 本気のコミュニケーション戦略を展開(1/2)

常務執行役員
人事総務本部 本部長
石川 浩(いしかわ ひろし)様
株式会社 日立ソリューションズ 様

ダイバーシティは、総合的な施策の一つ

伊東:御社は、「ダイバーシティ経営企業100選」など数多くの賞を受賞されているほか、経営トップが「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」にも参加されていらっしゃいますね。ダイバーシティの面で先進的なお取り組みをされている印象があります。本日は、多くの人事の方々の参考になるお話を伺えるのではないかと、楽しみにしてまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。

石川:日立ソリューション_0048当社が最も重視しているのは、「社員が明るく楽しく元気に働けること」です。それを実現するには、一つの施策では不十分であり、健康経営、働き方改革など、複合的・総合的に取り組む必要があります。ダイバーシティも、そうした総合的な施策の一つと位置付けています。

伊東:ダイバーシティ経営自体を柱と捉えるのではなく、「社員が明るく元気に働く」ということを中心に据えていらっしゃるのですね。

石川:そうです。社員の幸せ(健康、働きがいなど)を高めていくことが、結果的に会社の成長につながるという考え方です。我々の業界では、人が唯一最大の資源ですから、社員がどれだけやりがいを持って働ける環境をつくるかに尽きます。 

伊東:社員を明るく元気にする経営には、早くから取り組まれてこられたのですか。

石川:当社は2010年に二つの会社が合併して誕生しましたが、そのうち一つの会社が2005年に大赤字を出しました。そのときに社員の士気が下がり、そこから立て直すために取り組んだのが始まりです。合併をしたことも社員にとっては不安要因ですし、2015年には、日立製作所との再編により、合併して1万人になった会社が、また半分の規模になりました。社員が不安になる出来事が続く中、どうやって全員のベクトルを合わせ、やる気を出させるかと取り組んできました。

伊東:この取り組みは、ビジネスにどのようなインパクトを及ぼしましたか。

石川:はい。2011年度からの5年間で、営業利益は1.9倍になりました。残業時間も減少し、特に月100時間以上の超長時間残業の社員が大幅に減りました。この業界で問題になりがちなメンタルヘルス罹病率も低下しています。日立グループ全体で行っているエンゲージメントサーベイを見ても、再編の際にはやはりスコアが落ちましたが、それ以降は右肩上がりです。社員が自信を付けてきていることが分かります。

伊東:ビジネスの結果につながっていることは、すばらしいですね。掛け声をかけて取り組んでも、数字に表れないとモチベーションを持続していくことは難しくなりますから、ビジネスインパクトがゴールになっていることはとても重要ですね。

 

 経営トップの強いコミットメント

伊東:大きな観点からの取り組みということですが、具体的には、どのような施策を打ってこられたのですか。

石川:先ほど申し上げたように、単一の施策ではなく、総合的に取り組むことを意識しています。方針や目指す姿を明確に発信するとともに、組織風土・マネジメント改革や働きやすい環境整備を進め、同時に、組織・コミュニケーションの活性化にも力を入れています。人事施策のあらゆるものに切り込んでいかないと、組織を変えることはできません。

伊東:あらゆる施策に総合的に取り組むことができるのは、トップのコミットメントがあるからだと思いますが、トップからのメッセージの発信はどのようにされているのですか。

石川:それがないと絶対に進みません。歴代のトップに、「当社にとっては人が唯一の財産であり、社員のやる気を高めるためにあらゆる施策をやっていく」というメッセージを出してもらっています。
最近のトピックとして、社員の家族に社長名で手紙を出しました。当社は、2016年9月から、「カエルキャンペーンmotto!(もっと)」という働き方改革運動を進めていますが、その考え方と進捗状況をご家族にお知らせし、家族の人たちのご理解とご協力をお願いしました。こういうことをためらう経営者もいると思いますが、当社の社長は喜んで協力してくれます。社長の家はどうするか尋ねたところ、「おれのうちにも出してよ」と言われました(笑)。

 

すべての施策の根底はコミュニケーション

伊東:経営も本気でコミットしている、組織全体でのコミュニケーション戦略ですね。

石川:すべての施策の根底は、コミュニケーションだと考えています。コミュニケーションには、お金も時間もかけています。
特徴的な施策に、10年以上続く「段々飛び懇談会」があります。直属の上司ではなく上の上、主任であれば、課長、部長を飛ばした本部長との懇談会です。午後4時ごろから7~8人でテーマを決めてディスカッションをし、その後、本社の食堂でお酒を飲みながら懇親を深めます。2つ飛ばした上の人とは視点が違いますので多くの学びが得られますし、会社の考え方を伝えるうえでも有効です。早く帰らなければならない人のために、お昼に実施してもよいことにしました。組織変更やローテーションがあると必ず行います。1人当たり3000円の補助を出しており、総額は年間で3000万円にもなります。

伊東:この施策が定着されたのは、社員の側も価値を感じているからでしょうね。どの企業もコミュニケーションが大事と言いますが、こうしたことを着実に実行していらっしゃることが、ビジネスの結果にも表れているのだと思います。

 石川:日立ソリューション_00942015年から、「幹部塾」という取り組みも始めました。副社長や事業部長が、「お客さまとどう対応するか」「トラブルを発生させないためには」といったテーマで、自社の失敗事例を交えて若手を教育します。これも午後4時前くらいから始め、終わったら懇親会をします。最初は課長以上に行い、次の年は主任で、今は再び課長を対象に行っています。主任は人数が多いので、100回近くになります。

伊東:経営層がコミュニケーションと教育に時間を割いているのですね。他社では、役員クラスが、若い層にどんな人財がいるかが見えていないことがありますが、そういう意味でも経営層自らが若手を直に知るというメリットがありますね。

石川:段々飛び懇談会は事業部内の縦のラインですが、幹部塾は、いろいろな事業部長が登壇するので、他の事業部のことを知ることもできます。

伊東:自分の事業以外のことを知り、ネットワークが広がりますので、これもある意味でダイバーシティですね。
 ほかにも、御社ならではのコミュニケーション施策について聞かせてください。

石川:「SOLmate(ソルメイト)」という社員が褒め合う仕組みがあります。感謝の気持ちをポイントとして付与できる制度です。2015年に会社が再編して社員のモチベーションが低下したときに議論し、若手から出たアイデアを形にしました。

伊東:若手の提案ですか! 社員の声を吸い上げて実現していくスピードも速いのですね。

石川:はい。ワーキンググループをつくって提案させて、いいなとなったら、すぐにやろうという風土があります。

伊東:こうした提案が挙がってくるのも、コミュニケーション戦略の成果ですね。

 

 育成する意識を持ち、候補者を共有

伊東:リーダーを育てるための育成計画についてもお聞かせいただけますか。

石川:一定レベル以上の人財の育成を話し合う「人財委員会」を最低年1回行っています。社長も出席し、各事業部長が、「自分の事業部で、今後、役員にできそうなのはこの人」と顔写真付きで候補者を共有し、そのためにどんな育成や配置を行うかを議論します。部課長クラスについては、事業部内で同様の議論をします。育成する意識を持って共有することが重要です。
また、それとは別に、主任級以上の女性の名簿を共有し、誰をどう育てていくか、いつどのようなローテーションをさせるかを話し合います。2013年ごろから行っていますが、女性は特にしっかりと見ておかなければならないと捉えています。

伊東:こういう仕組みがあると、組織全体に人財育成の意識が高まりますね。本来は男女とも見てあげるべきですが、女性は特に見ておかなければとお考えなのは、どうしてですか。人数が少ないので、バイアスがあるのでしょうか。

石川:そうです。もともと男性が圧倒的に多い組織で、今でも女性比率は12%です。特に40代以上の男性には、いわゆる“粘土層”がまだまだ大勢います。
2006年から女性採用比率を30%に増やしましたが、その層が32~33歳になり、結婚、出産という男性より影響を受けやすいライフイベントを迎えています。古い考え方の人は、「子どものいる女性は、課長への登用をやめておこう」「妊娠中は無理だ」と考えがちですが、そうではないということを訴え、女性にも気にするなと言っています。実際、育児短時間勤務中に課長に引き上げた女性もいます。全員の意識を変えることは容易ではありませんが、言い続けるしかありません。言い続ければ変わります。

人材開発に関することは、お気軽にお問合せください
お電話でのお問合せ
03-6625-5953
(平日10:00~17:00)
フォームでのお問合せ
お問合せフォーム