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長期的なバーチャル・チームとリーダーシップ・トレーニングを受容する

~リモート環境における学習と能力開発を成功させるための5つのステップ~

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リモート環境における学習と能力開発を自社の学習文化に発展させるか否かは、貴社次第です。バーチャル形式の学習はすでに普及しつつあります。

パンデミックの影響により、人との接触を最低限に抑えて生活する中で、映画やTV番組の登場人物たちが抱き合っているのを見て、その不適切な行動に顔をしかめたり、恐れから息を呑んだりしたことはありませんか? しかし、今、私たちが置かれている状況のほうが例外で、彼らの行動は “普通”であることを思い出してください。

最近、あるリーダーシップ開発の責任者とこんな会話をしました。彼は、トレーニングルームを歩き回って、参加者に直接語りかけることができた頃のことを思い起こしていました。彼は、トレーニングの内容が参加者に合致しているかを容易に判断し、内容が簡単すぎてしまっている人や、逆についていけていない人に、適切に対応していました。

「いつかまた以前のように戻る日がくると思うか?」と聞かれましたが、私は”はい”と答えることができませんでした。正直なところ、トレーニングが2020年以前のクラスルーム形式に戻ることはないと思っています。リモート環境における能力開発は、今後も妥当性のある選択肢となるでしょう。それは妥協ではなく、実用的で費用対効果が高く、あらゆる場所から参加可能な代替手段だからです。

このことに加えて、質の高いリーダーシップとチームのトレーニングのニーズは変わっていないという事実があります。それどころか、2018年のIWG(International Workplace Group)の調査によると、パンデミックが発生する前は、専門職の70%が少なくとも週に1回はリモートワークをしていました。そして今では、より多くの人がリモートワークをしています。しかし、DDIの調査によると、リーダーが最も不得手とするスキルは、バーチャル・リーダーシップであることが判明しました。実際、4人に1人のリーダーが、リモートで働くチームを効果的に牽引できないと回答しています。

さらに、15,000人以上のリーダーを対象としたDDIの調査において、重要なリーダーシップ・スキルに対する自信が著しく低いことが示されています。変化を起こすスキルが高いと感じているのは30%のみで、他者が変化を受け入れられるように支援できている人は、さらに低い割合となりました。そして、新しいテクノロジーの活用に優れていると感じているのはわずか25%で、チームが燃え尽きないように支援する準備ができているのはわずか18%に過ぎませんでした。このことは、生産性の高い状態を維持するために、迅速に適応し、スキルアップするためのリーダーシップ開発の必要性を明らかにしています。

従って、私がこのことを共有したときに、同僚がわずかに息を呑んで、ビデオ通話からでも明らかに青ざめていく顔が見て取れたのは、驚くべきことではないのかもしれません。私たちは、トレーニングにおいて、この新しい日常に対応する準備をどのように整えるかを考えました。

学習・能力開発に携わるリーダーは、バーチャル・トレーニングの導入にあたり、下記の5つのことを次のステップとして考慮する必要があります。

1. 何らかの手段を講じる

パンデミックの間、自社の能力開発プログラムや能力開発の機会が完全になくなったと報告したリーダーの多さには愕然としましたが、能力開発の主な手段として、オンライン・ライブラリを提供されていたことも、また驚くべきことです。

これは、学習・能力開発の観点からもわかりやすい、安価で拡張性のあるスキルサポートを提供する方法です。しかし、リーダーシップ開発に対する批判の上位を見てみると、これらのソリューションが望ましい影響を与えていない理由がわかります。学習者からの最も多い不平として、以下が挙げられます。

• 同僚からの学びがあまり得られない
• 実用的でない、あるいは職場で適用できない
• つまらない、興味をそそられない
• 仕事との関連性がない

これらの批判をすべて回避できる、リモート環境で実施するリーダーやチームの能力開発ソリューションがあります。この中には、ファシリテーター主導のバーチャル・クラスルーム・トレーニング、同僚とともに重要なスキルを練習するプラクティスラボのセッション、1対1または小グループのピアコーチングが含まれます。さらに、経営幹部が中心となって、チームが直面する喫緊の課題について議論するビジネス円卓会議もあります。能力開発のニーズが何であれ、一時的な中断や様子見が許される余地はありません。リモート環境で行う能力開発施策を選択し、着手する必要があります。

2. 適切なバーチャル・トレーニングを実施するために入手すべきこと

対面式の能力開発で実績のある資材があるからといって、それらをスライドに貼り付けただけで、リモートでのトレーニングを行っていることはありませんか? その方法は、間違っています。リモート環境におけるトレーニングでは、リーダーやチームには、休憩、エンゲージメント、コラボレーション、そして画面から離れて振り返る機会がより多く必要になります。ホワイトボード、投票質問、チャット、顔文字、ブレイクアウトルーム、ファシリテーターの介入など、バーチャル・トレーニングには欠かせない「必須」ツールがいくつかあります。自社で活用し、広範囲にわたり支援できるテクノロジーを模索し、その特徴に焦点を当てる必要があります。これらの機能を活用して、あらゆるバーチャル形式での能力開発コンテンツを設計する必要があるため、これは重要です。学習者からの「つまらない、興味をそそられない」という批判を思い出してください。このリスクを軽減するためには、適切なコンテンツとテクノロジーが必要なのです。

3. 過去の優れたチームは、将来の主力チームとは限らない

これは難問です。これまでのクラスルーム形式において、最高のファシリテーターは誰かと聞かれれば、数分でリストアップできるでしょう。しかし、ここで名前の挙がった人たちは、バーチャル形式の能力開発を主導するファシリテーターとしては、適切な人材ではないかもしれません。リモート環境の能力開発は、従来のクラスルーム形式と同等、あるいはそれ以上の効果が期待できます。しかし、それはまったく異なるスキルセットを必要とします。これらを比較すると、右図のようになるかもしれません。

リーダーやチームが従来のオフィス環境に戻れる目途はたっていないことを忘れないでください。たとえ、戻ったとしても、リモート環境の能力開発を活用する頻度の方がはるかに高いため、今このスキルセットの習得することは、長期的な学習と能力開発への有益な投資となります。

4. 技術的な問題を断ち、エンゲージメントを高める

ここまでで、どこから手をつけるべきかを理解し、優れたテクノロジーを選択し、バーチャル形式の学習コンテンツを作成し、堅実なバーチャル・ファシリテーターを開発しました。しかし、これまでの経験上これでもまだリーダーやチームが確実に優れたリモート環境での能力開発を受けるには、十分ではありません。

ファシリテーターは学習者を集中させなければなりませんが、ここで新たな技術的な問題、あるいは、孤立感が浮上します。学習者の中には、ファシリテーターが参照している文書を見つけられず、エンゲージメントが低下し始めている人がいるかもしれません。これらの問題は、あらゆるバーチャル・トレーニングにおいて、ファシリテーターの右腕としての役割を果たすプロデューサーの重要性を浮き彫りにしています。プロデューサーは、ファシリテーターが知識の伝達と学習者のエンゲージメントに集中できるように支援します。また、学習者がデジタルツールを活用しながら、生産性を高め、モチベーションを維持できるようにします。

具体的に、プロデューサーは以下の支援をしています。

• 学習者にリンクや設定方法を提供する
• 事前に、あるいはその場で資料を共有する
• プラットフォームの使用方法の説明から、学習者が直面するトラブルの解消まで、セッション中に
  発生するあらゆる技術的な問題に対処する

プロデューサーは非常に機敏で、プレッシャーの中でも冷静で、テクノロジーに精通しています。彼らは、クラスルームに入ってくるのと同じくらい容易に能力開発全体を円滑にすることで、これまでの経験から参加者の技術的なストレスをほとんど取り除いています。

5. 組織ぐるみの能力開発が必要

参加者を積極的に従事させるために、関係者と自分自身に問いかける質問があります。これはリモート環境の能力開発特有のものではありませんが、今日の能力開発では重要性が増しており、リーダーやチームの出席率、モチベーション、行動の変化に影響を与えています。

学習者の上司:これまでとは異なる能力開発の方法により、彼らのサポートはどのように変わりますか? リーダーやチームが学んでいることや、その学習をどのようにして積極的に強化することができるのかの概要について、うまく共有できているでしょうか?

経営幹部など上層部の関係者:現在、ビジネスの優先順位が拮抗しており、リーダーシップ開発が議題から外されるのを受け入れざるを得ない状況になることがあります。どのようにして懐疑論を封じ、投資収益率を迅速に示すことができるでしょうか?

HR業界におけるアナリストであるジョシュ・バーシン博士は、かつて「ビジネスに影響を与える最大の要因は、組織の学習文化の強さにある」と述べています。

今日のビジネスで、より強いインパクトを追求しないビジネスはないはずです。成長の著しい企業は、一つ一つのチャンスを最大限に活かそうとしていますが、景気の悪影響を受けた企業は、新しい方向への戦略転換を早急に行うことが求められています。

いずれの状況においても、優れた学習文化の構築は有益です。リモート環境における能力開発を自社の学習文化に発展させるかどうかは、貴社次第です。これからはバーチャル学習の時代であることを受け入れましょう。

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