キャリアデザインための人材アセスメント

キャリアデザインための人材アセスメント研修

キャリアデザインの意義と重要性

キャリアデザインとは

キャリアデザインとは、自身の職業人生を自分の手で設計し、理想とする自己の実現を追求する行為を指します。それは決して新しい概念ではありませんが、その重要性が増してきた理由は、以下の2つの大きなトレンドによるものです。

終身雇用制度から成果主義への移行

従来、社員は一度企業に入社すれば、年功序列による自動的な昇進や昇格が保証されていました。しかし、絶えず変化する現代の環境に対応するため、企業は成果主義やジョブ型雇用への転換を進めています。これにより、個々の社員は自己成長と結果をもたらす能力を持つことを求められています。

働き方の多様化と価値観の変化

ワークライフバランスが求められる現代社会において、個々のライフスタイルに合わせたキャリアを描くことが一般的になっています。企業側も、その変化に対応し、多様な働き方やキャリアプランをサポートする能力が不可欠となっています。

ここで、これらのトレンドに対応するキャリア理論、すなわち「プロティアンキャリア理論」を紹介します。ダグラス・ホール氏により1976年に提唱されたこの理論は、社会や経済の変化に対応しながら、自己の働き方やスキルを柔軟に変化させるキャリアを提唱しています。今日、この理論は個々の能力やスキルの重視が増す中で再評価されています。

キャリアデザインのプロセス

それでは、具体的にキャリアデザインを行うためのプロセスを見てみましょう。人生は一連のイベントから構成され、それぞれが線でつながっています。それゆえ、キャリアデザインには過去、現在、未来の視点が必要となります。

過去のキャリアを振り返る

まず、これまでのキャリアを再評価します。単に成果を振り返るだけでなく、感情の動きにも着目します。それは、自身のモチベーションの起伏と経験との関連性を理解し、意欲の源泉を明らかにするためです。

現在の立ち位置を確認する

次に、現在の自己を理解するフェーズになります。自己認識は一人では困難であり、他者の視点が重要です。研修やフレームワークを活用して自己認識を深め、他者の意見も取り入れながら、自身のアイデンティティを確認します。

未来の自己像を描き、行動計画を立てる

最後に、目指す自己像を明確化し、その実現のための具体的な行動計画を策定します。短期(3年後)と長期(15~20年後)の目標を設定し、その達成のために必要なスキルや経験を洗い出します。そして、それらを具体的な行動計画に落とし込むことが重要です。また、自己の成長や目標達成は、上司や組織からの支援が不可欠です。具体的に必要な支援を明確にし、それを組織に伝えることで、目標の達成可能性を高めることができます。

このように、キャリアデザインは、個々の働き方を自身で設計し、意識的な自己成長を追求する重要なプロセスです。それは、現代の働き方や価値観の変化に対応するために不可欠なスキルと言えるでしょう。

キャリアデザインを推進方法と一般的な組織の問題点

企業は、社員の主体的なキャリア形成と持続的な成長を支援する役割を担います。

しかし、多くの企業ではキャリア支援の取り組みが完全には機能していないのが現状です。社員が自分のキャリアをデザインする際に直面する主要な障壁は次の3つです。

  • 組織の複雑さから、目標の選択肢が明確でない。
  • 自己研鑽のためのリソースや支援が不足している。
  • 企業や上司が、各社員のキャリアについて理解していない。

これらの課題を解消するための3つのアプローチ方法を以下に紹介します。

組織内の役職とポジションの透明化

企業内のどの部門がどのような業務を行っているかを社員に明示することは極めて重要です。日本の企業では、事業部ごとの縦割り組織が多く、組織の全体像が見えづらい場合があります。業務が個々に紐づいてブラックボックス化するケースも見受けられます。組織全体の構造や役割を可視化することで、社員は自分のキャリア目標を明確に設定しやすくなります。

キャリア自律の支援

キャリア自律とは、「変化する環境において自らのキャリア形成と学習を主導的かつ持続的に推進すること」を指します。自己成長のための個人の努力には限界があるため、企業側は社員が多様な実践経験を積む機会を提供する必要があります。ジョブローテーションや社内公募が、具体的な例として挙げられます。しかし、それだけでは不十分です。個々の社員の自主性を尊重した仕組みを整えることが重要です。

キャリアについて意見を共有する機会の提供と情報収集

「本当にやりたいことができなかった」という理由で退職する社員は少なくありません。人事部門や上司は、各社員のキャリアに対する意欲や望みを理解しているでしょうか?自己申告制度などがあるものの、それだけでは社員の本音を引き出すことは困難です。形骸化したシステムでは意味を成しません。

したがって、企業全体としては、キャリアについての座談会などのイベントを開催し、社員が自分のキャリアについての意見や感じ方を共有できる機会を提供することが重要です。このようなアプローチにより、企業は社員のキャリア志向の傾向やパターンを把握し、それに対応した支援を提供することが可能となります。

以上の3つのアプローチにより、企業は社員のキャリアデザインを促進し、組織内の問題を解消することができます。キャリアの透明性を高め、自律的なキャリア形成を支援し、そして社員の意見を収集し反映することにより、社員のモチベーションと企業の生産性を同時に高めることができるでしょう。

企業と社員の間での認識の違いについて、以下のような興味深いデータがあるので、見てみましょう。キャリアに関わる仕組みや制度の導入具合とその活用度合いを示すものです。

若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査

出典:リクルートマネジメントソリューションズ:【調査発表】若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査 https://www.recruit-ms.co.jp/press/pressrelease/detail/0000000358/

学習支援やマネジメントに関しては、一般的に高い評価が見受けられ、導入している企業も多くあります。しかし、キャリア支援の面では全般的に評価が低く、まだ改善の余地があることが明らかでしょう。

ここでは、2つの棒グラフの差異に注目していただきたいと思います。“導入制度”(緑の棒グラフ)が“役立っている制度”(紫の棒グラフ)よりも多い場合、それは制度の効果が十分に発揮されていないことを示しています。一方で、“導入制度”が“役立っている制度”よりも少ない場合、それは社員のニーズを完全に満たせていない状況を示唆しています。

具体的には、前者の例として、

  • 「人事評価結果のフィードバック」
  • 「上司との能力開発やキャリア開発についての面談」

が挙げられます。

日常的に、上司が部下の考えや意見を引き出し、チャンスを提供する能力はキャリアデザインにおいて重要な要素です。このため、マネジメント層のコーチング能力向上は避けて通れない課題と言えるでしょう。

後者の例としては、

  • 「柔軟な勤務体系」

に大きな差異が見られます。

企業は、フレックス制度やテレワークなどの新しい働き方を積極的に導入し、社員が自己成長のための時間を見つけやすい環境を整備することが必要となります。

キャリアデザインと人材アセスメントの相乗効果

キャリアデザインと人材アセスメントは、あたかも手と手が握り合うかのように、互いに補完し合います。キャリアデザインの核心は「自己理解の深化」です。その際、自身のスタートラインが定まらなければ、キャリアの方向性は揺れ動くこととなります。MSCの人材アセスメントは、単なる評価や診断を超えて、自己理解を深める一方で、自己啓発の道筋を示し、個々の成長を促進します。

自身の強みを明らかにする

MSCの人材アセスメントは、各個人の能力を客観的な視点から鮮明に描き出します。様々なシミュレーションに取り組むことで、その人の、どの状況下でも活かせる強みが明らかになります。人はしばしば自身の弱点に目を向けがちで、自身の強みを明確に認識し表現できる人は少ない傾向にあります。各シミュレーション後の振り返りのセッションでは、他の受講者からのフィードバックを通じて、新たな自己認識と学びを得ることができます。

将来の方向性と可能性を探求する

人材アセスメントを通じて、自身が将来に向けて取り組むべき課題も明確になります。自己の将来像と現状とのギャップを視覚化し、具体的な自己啓発計画の策定に寄与します。これは新たな可能性の発見につながります。また、企業側からすれば、人材の特性をより正確に理解するための手がかりとなります。適材適所への人材配置が進むことで、組織全体の成長を促進させます。

こうした人材アセスメントの活用は、個々の成長だけでなく、組織のパフォーマンス向上にも貢献します。これは、まさに個と組織の双方が一緒に成長するための方策と言えます。

さらに、MSCの人材アセスメントは、既存のポテンシャルとスキルセットの範囲を超えて、未開の才能や可能性を発見する手助けとなります。自己啓発やプロフェッショナル成長において、未知の領域を探索することは重要です。私たちはしばしば自分が何を得意とし、何が好きかを理解することに制約を感じます。しかし、MSCの人材アセスメントを通じて、新たな才能や能力を発見することができます。

相互フィードバックを活用した成長促進

他の受講者からのフィードバックにより、自身の行動や姿勢の特徴がより明確化します。他者視点からの刺激は非常に大切です。自分自身が見落としていた可能性に気づくこともできるでしょう。その結果、自己認識が深まり、自己啓発の方向性を定めやすくなります。

適材適所による企業の成長

企業側にとっても、人材アセスメントは極めて価値あるツールです。各社員の、個々の能力と可能性を把握できます。これにより、企業は各社員を、その才能と関心に最も適した役割に配置することができます。これは全体的な生産性を向上させ、社員の満足度を高めるだけでなく、組織全体としての競争力を強化することにつながります。

これらの理由から、キャリアデザインと人材アセスメントの組み合わせは、個々の社員と組織全体の両方にとって、成長と成功を最大化する強力なレバレッジとなります。