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ビジネスエンジニアリング株式会社 様

ビジネスエンジニアリング株式会社 様

トップの強いコミットメントにより、経営陣の意識と行動の変革を促進

取締役会長 大澤正典様

 


製造業を中心とする顧客企業のIT化・デジタル化を支援するビジネスエンジニアリング株式会社(B-EN-G)は、2018年に親会社だった東洋エンジニアリングから完全に独立し、第2の転換期を迎えた。
その変革期において、同社は、社長を含む取締役・執行役員を対象にコーチングプログラムを実施した。多くの企業が経営幹部のリーダーシップを課題として認識しているが、実際に経営層に対してこうした研修を行うのは珍しい。当時、社長としてこのプログラムを採用した大澤正典会長に、弊社コンサルタント統括本部 理事の三村修司が、経営や人材育成にかける思いと本プログラムへの評価を伺った。(文中敬称略)


日本のものづくり企業を支えるIT企業

三村:御社とは2003年からのお付き合いになりますが、日本のものづくり企業をITの面から支えようという一貫した精神を感じます。大澤さんは、この4月に社長から会長になられましたが、最近の環境変化についてどう捉えていらっしゃいますか。

大澤:私どもは、東洋エンジニアリングから分社化し、昨年で20周年を迎えました。業績も4年連続で過去最高を更新し、規模も売り上げも成長しています。一方、株主構成が大きく変わり、次のステップに進もうというところです。
今は、世界中が“アフター・コロナ”をどうしていくかということに苦慮していますよね。私も66歳までビジネスをしてきて、こんなに激しい変化は初めてです。当社は幸い、マーケットの環境はよいのですが、今回のコロナの問題は、世の構造をあぶり出したと思います。私が一番ショックだったのは、日本の危機管理ができていなかったことです。映画シン・ゴジラの世界がそのまま展開されていました。一段落した現在では、日本は世界と比較し患者数が少なく収まり良かったのですが、有事の備えが十分でなかった。今後に備えてしっかりと対策を準備する必要があります。これまで日本の製造業は「人件費の安い海外で生産する」という経営判断をしてきました。しかしこれからは一国に集中するのではなく、リスク管理の視点をより強く取り入れ、サプライチェーンを見直していく必要があります。

三村:いわゆる“チャイナプラスワン”ですね。御社は、ものづくりの企業をサポートすることに専念してこられましたが、その基本路線は変わらないのですね。

大澤:はい。ものづくり企業の基幹システムをしっかりと構築する。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)によるイノベーションをお手伝いする。そして今回コロナであぶり出された海外サプライチェーンの強化・再構築に貢献していきたいと考えています。

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コロナ禍への対応として働き方も変化

大澤:ビジネスの構造も変わりますが、組織の中の働き方も変わりつつあります。今回のコロナの問題で、働き方改革にかなりドライブがかかりました。

三村:ここ数年、在宅勤務やリモートワークの導入がなかなか進まなかった企業が、大きく背中を押された印象ですね。

大澤:私が社長をしていた頃にも、「テレワークをしないのですか」と言われましたが、「我々は顧客と一緒にプロジェクトを進めるのだから、そう単純にはいかない」と捉えていました。しかし今回は、顧客もビジネスパートナーも皆、リモートへの移行を余儀なくされました。

三村:リモートワークにおける課題は、どのようなことだとお考えですか。

大澤:一つは、教育です。新入社員教育もリモートで行っていますが、それだけでは不十分な気がします。もう一つは、新しく何かを始めるとき、設計段階で「すり合わせ」をしますよね。そこが薄くなるのではないかと危惧しています。ある程度切り分けができた後ならばリモートでもよいのですが、設計段階のコミュニケーションは、今後、気をつけていく必要があると思います。

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社員がわくわく、いきいき働ける風土を築く

三村:大澤さんが社長だった当時は、どのような課題がありましたか。

大澤:私が社長になった6年前は、設立以来黒字が続いていたものの、まだ成長の余地が大きくあると思いました。そのための戦略として、まず、マーケットに求められる製品・サービスを充実させ、顧客満足を高める。また、社員がわくわく、いきいき働ける環境を整える。そして、適切な利益を確保して次の投資に回す――このサイクルを回して成長していこうと考えました。幸い、マーケットの状況がよかったこともあり、大きく成長することができました。

三村:御社で研修を実施させていただく際、冒頭で大澤さんから受講者に対してお話しをしていただきますが、私がいつも感心するのは、今おっしゃった「わくわく」「いきいき」のように、わかりやすい言葉が多いところです。トップの方がわかりやすいメッセージを発することは、とても素敵なことだと思います。

役員・執行役員に行動変容を促進するコーチングプログラムを実施

三村:今回、エグゼクティブクラスの方々の研修を担当させていただきました。近年、役員や企業のトップの方の選抜を目的としたアセスメントは増えていますが、育成という観点での研修は珍しいです。大澤さんが、エグゼクティブの育成に踏み切られた理由をお聞かせいただけますか。

大澤:私どもの会社は製造設備もありませんし、人がすべてです。その質を上げることが、サービスの強化につながり、お客様の獲得につながり、利益にもつながります。
また、先ほどお話ししたように、設立から20年が経過し、規模も売り上げも成長する一方で、株主構成が大きく変わりました。そこで、次の成長に向けて、役員層をもう一度強化したいと考えました。また、当社は、製造業のお客様の海外展開をお手伝いすることも大きなミッションです。現在、5ヵ国に海外現地法人を設けていますが、それらを含め、グローバルにマネジメントできる役員が必要です。そこで、ずっとお世話になっている三村先生のところにご依頼させていただきました。

さまざまな気づきが得られるプログラム

大澤:今回お願いしたのは、①経営シミュレーション、②パーソナリティ診断(Hoganアセスメント)、③360度評価(数ヵ月開けて2回実施)の3点と、個別のコーチング(数ヵ月開けて2回実施)でしたね。

①経営シミュレーションについて

大澤:経営シミュレーションでは、先生を相手に実際の職場で直面している課題や状況に対応したのが面白かったです。

三村:演習体験ですね。受講者の皆さんには、不慣れな状況の中で経営分析や人材育成・対外交渉などの課題に取り組んでいただきました。あのようなシミュレーション演習は、部長クラスまでの管理職を対象に実施する企業が多く、現役の役員の方に受けていただくことはあまりありません。研修の中では、私もかなり率直にアドバイスをさせていただきましたが、刺激になったでしょうか。

大澤:あれはやったほうがいいですよ。役員や執行役員は、普段、自分が怒られることはあまりありませんから、刺激になります。

三村:他社では、「こんなことを今さら」という反応を示される場合もあります。ところが御社の場合、皆さん、楽しみながら一生懸命課題に取り組んでいただきました。我々も演習効果を事前に想定していましたが、御社のようにシミュレーションを楽しんでいただけると効果も高まりますね。

大澤:先ほど申し上げたように、わくわく、いきいき働くことを目指しているからかもしれません。わくわくするビジネスをつくり出し、いきいきとビジネスライフを送る――そうして初めて、会社が楽しくなり、成長します。シミュレーションに臨む姿勢にも、それが表れたのではないでしょうか。

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②パーソナリティ診断について

大澤:パーソナリティ診断については、質問項目から「欧米人はこういう見方をするんだな」と興味深く感じました。

三村:たしかに、今回実施した「Hoganアセスメント」は、欧米寄りの発想でつくられています。ただ、グローバルな企業では、日本的な感覚を客観的に見ていただく必要もありますので、こうしたアセスメントにもメリットがあります。

大澤:当社はグローバルに活躍できる役員を育てようとしていますし、実際、ビジネス上で海外とのやり取りも多いので、たくさんのヒントが得られました。

③360度評価について

大澤:360度評価は、私自身、20年ぶりに受けました。一定の期間を置いて実施すべきですね。日頃はビジネスに没頭してしまいますから、自分を見つめ直すよい機会になります。

三村:今回の360度評価は、数ヵ月の期間を開け、2回実施していただいてよかったと思います。また、経営シミュレーションと同様、役員を対象に360度評価を実施することは、当初社内でも反発があったのではないですか。

大澤:8割方は嫌なんじゃないですか(笑)。でも、皆、「やはりそうか」という気づきを得ていたので、実施してよかったです。私自身は受けるつもりはなかったのですが、三村先生にやらなきゃダメだと言われました(笑)。

三村:大澤さんが社長として先陣を切られたのは大きいと思います。あれで皆さん、納得して参加してくださいました。

 

何でも言い合える関係を築くことが重要

三村:360度評価で一つ特徴的だったのは、フリーコメントです。他社と比べて、部下や同僚の方が思い切り本音で書かれていました。その理由は二つあって、一つは言いたいことがあるということ。もう一つは、言える雰囲気があるということです。言ったら何か言われるとなると、誰も何も言わなくなります。ところが、あれだけ言葉が出てくるのは、「言っても大丈夫」という心理的安全性があるからだと思います。

大澤:その通りだと思います。例えば、キャリア採用で入社した人に私が必ず言うのは、「うちの会社では、沈黙はダメだよ」ということです。昨日の会議でも、「私があまり言ってはいけないと思うのですが、言っちゃいます」という社員がいたので、「いや、言わなあかん」と注意しました。

三村:過去に若手フロントリーダーの研修をさせていただいたとき、「研修の講師にここまで言うか」と思うようなことをおっしゃる方もいらっしゃいました。でも、そういう発言をする方が、今、御社を支えていらっしゃいます。目立つ方が叩かれてつぶされるのではなく、個性が活かされている。人を育てるには、トップの意識も大事ですが、そうした風土も大切ですね。

大澤:実は今日、新入社員の入社式だったんです。コロナの影響で4月に集まれず、今日になりました。そこで、社長が話をした後、新入社員に「質問をどうぞ」と促すと、「〇〇について、社長はどう思われますか」と次々に手が挙がりました。

三村:それはすごいですね。自由に言える雰囲気を体現していますね。

 

エグゼクティブクラスに必要なのは「先見力」と「決断力」

三村:役員の研修に話を戻しますが、この研修を企画したとき、「こうなってほしい」「こういうことを感じてほしい」という思惑があったと思います。狙い通りにいきましたか。

大澤:このプログラムは「自分で自分を認識しなさい」という内容ですよね。そこが感じられればよいと考えていましたが、皆、それぞれに得るものがあったと思います。

三村:その後、役員・執行役員の皆さんに変化はありましたか。

大澤:相手の立場に立って考えるとか、前は少しとげのある話し方をしていたが、いったん飲み込んでから話すようになるなど、行動変容が見られます。私自身も「気付き」がありました。

三村:大澤さんが役員や執行役員に求める能力・スキルの中で、特に重要と考えるものは何でしょうか。

大澤:先見力と決断力です。今年の利益をしっかり確保しながら、3年後、5年後につなげていかなければなりません。もちろん、交渉力なども必要ですが、特にこの“アフター・コロナ”では、先を見る目と決断する力が欠かせません。決断の中には、我慢して動かさないという場合もあり、そこでは胆力のようなものが含まれると思います。

三村:御社の役員クラスに360度評価をした際には、決断系の項目の評価が比較的高い結果となりました。ただ、一般的に、役員クラスでも「決断力」に欠けている方が目立ちます。どう鍛えればよいでしょうか。

大澤:半分は天性かと思いますが、何度も修羅場を体験させ、それに対してその都度、具体的にアドバイスし一緒に成長していくことだと思います。

決断を支えるのは自社のビジネスへのアイデンティティと社員への思い

三村:経営者の決断力というのは、最後は何が支えになるのでしょうか。

大澤:「我々は何のためにこのビジネスをしているか」という存在価値――当社でいえば、製造業のお客様に対してITの視点からお客様に役立ち社会貢献したいという思いです。今、製造業は大変厳しい状況ですが、それをどう乗り越えるか真剣に考え取り組んでいく、そのアイデンティティだと思います。当然、会社ですから、利益を出し、ステークホルダーに報いていく必要はありますが、最後はそこです。

三村:なるほど。それに加えて、大澤さんがトップとして意思決定していくときに意識されていたことはありますか。

大澤:やはり、社員がいきいき働けているかですね。会社としてわくわくする仕事を提供し、社員がいきいきと仕事に取り組んでいないと良いサービスを提供できません。会社というのは、家族みたいなものだと思います。皆が前向きでハッピーでないと面白くないじゃないですか。

三村:大澤さんの経営の根源には、常に社員の幸せがあり、社員のいきいき感、わくわく感を追い求めていると感じます。私も弊社で役員をやっていたとき、最後は、会社を守ることと、従業員と家族の生活を守ること、その二つに尽きると考えていました。

大澤:サルの群れを見ていると、ボスは、敵が来たらやっつけ、揉め事があると仲裁するんです。決して自分の仲間をどやしたりしない。トップに上り詰めるまでは権力争いもあるでしょうけれど、トップになったら、外敵から守り、群れの中をハッピーにし、エサがなくなれば「次はあっちに行こう」と導く。そういったことが会社にもあると思います。

三村:組織のトップになるとはそういうことですね。生き物の本能かもしれません。
ところで、研修中に受講者の方に伺ったのですが、大澤さんは、普段から社内のあちこちを歩き回り、気さくに社員に声をかけるそうですね。トップと現場との距離感が近いと感じます。

大澤:私はプロジェクトマネジャーの経験が長かったんです。そのときの経験から、現場を見ることを大事にするようになりました。「儲かってる?」などと声をかけながら回っています(笑)。やはり、家族のように一緒にいて、コミュニケーションを取ることが重要だと考えています。

三村:リモートワークの一番の弊害は、五感が鈍くなることかもしれませんね。周りの雰囲気から感じるセンサーが鈍くなる気がします。このことは、先ほど大澤さんがおっしゃった「先見力」に通じると思います。先を読むには、日頃からいろいろなものを感じる必要があると考えます。
最近、「リモートワークで部下の様子がわからないから、評価がつけられない」というご相談を受けることがあります。人事考課の新しいスタイルを考えないといけない面もありますが、そういうご相談がある会社ほど、日頃から部下のことをよく見ていない印象を受けます。だから不安なんですよね。逆にいうと、見えなくても信頼して仕事を任せていく方法を考えていくことが大切でしょうし、会ったときには五感を働かせてコミュニケーションを図っていただきたいと思います。

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「あなたは何をするか」という当事者意識が大事

三村:今後に向けて、大澤さんの考える理想の組織像、リーダー像を教えていただけますか。

大澤:会社を引っ張っていくことは、ダイナミックに考えながらやるしかありません。その中で、今回の“アフター・コロナ”で強まったのは、試行錯誤の必要性です。事業も組織も働き方も、やり出したはいいが思ったようにいかないということがいろいろなところで出てきますので、フレキシブルに変えていく必要があります。

三村:周りの流れについていくとか、あるいは流れをリードしていくという意味ですね。

大澤:そうです。そのためには、まず客観的な流れを見極めるための情報を集めることです。思い込みで決めるのではなく、ファクトとして押さえる。事実を正確につかむことが重要です。そして、それを分析し、何が起きているかを理解して、会社の戦略に結びつけるわけです。

三村:ファクトを基に判断していくことは、経営者はもちろん、すべての層に求められますね。 早くダイナミックに変えていく必要性については、上層部の方はおそらく理解していますが、組織が思うように動かないと悩んでいる経営者は多いと感じます。何かアドバイスをいただけますか。

大澤:ジョン・F・ケネディの有名な言葉に、“ask not what your country can do for you――ask what you can do for your country”(国があなたのために何ができるかを問うのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるかを問うてほしい)というものがあります。基本はそこです。各々が自分を主語にして考え、行動しないと変わりません。

三村:あなたは何をするか、ですね。

大澤:そう。それがその人の存在価値であり、先ほどお話したアイデンティティにつながります。

三村:ありがとうございます。最後に、他社の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。

大澤:会社が変わるのは、やはりトップからです。役員がわいわい、がやがやと、ダイナミックに議論し、経営決断をしていく必要があります。そういう意味で、役員に対する教育は、“アフター・コロナ”の先の見えない環境下において、ますます重要になっています。

三村:役員対象の研修は、ニーズとしては挙がっているのですが、御社のように踏み切っていただくことが必要だと思います。今回の御社でのプログラムは、現役の役員の方とある意味真っ向勝負でしたから、私自身にとっても大変勉強になりました。本日はありがとうございました。

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対談者プロフィール

ビジネスエンジニアリング株式会社 取締役会長
大澤 正典氏
1953年福岡県生まれ。福岡県立京都高等学校卒業。京都大学大学院卒業。1978年、東洋エンジニアリングに入社。発展途上国へのプラント技術導入プロジェクトや製造業向けの生産管理システム導入プロジェクト等を多数担当。1999年に分社化し東洋ビジネスエンジニアリングへ、同社取締役、常務取締役、代表取締役社長を経て、2020年4月、同社取締役会長に就任。 プライベートでは、ブルースシンガー、ブルースハープ(ハーモニカ)奏者として活躍。

株式会社 マネジメント サービス センター 理事・シニアコンサルタント
三村 修司
1963年生まれ。官庁系・金融系システムでSEを経験後、1996年当社に講師として入社。執行役員・取締役を経て、現在は当社理事。年間50社(公共機関を含)近くで、経営者から管理者・若手リーダーまでの各層で人材育成や診断評価に携わる。現場の実態に合わせたカスタマイズと、実践的な能力診断や率直なフィードバックが定評。 クライアントは、金融・メーカー・鉄道・エネルギー・IT・マスコミ・大学・官庁と幅広い。

会社名
ビジネスエンジニアリング株式会社
営業開始
1999年4月1日
資本金
6億9,760万円
社員数
連結:618名 単体:465名(2020年3月31日現在)
事業内容
企業経営および情報通信システムのコンサルティング コンピュータネットワーク