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株式会社セブン‐イレブン・ジャパン様

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン様

自分から動いて価値を生み出す。立ち止まらずに新しいことをやり続ける

取締役 常務執行役員
人事本部 ダイバーシティ推進部長
藤本圭子(ふじもと けいこ)様


トップのコミットメントの下、女性の登用を推進

伊東:御社はダイバーシティ推進に積極的に取り組まれていらっしゃって、いろいろなメディアでも、女性が活躍できる企業として注目されています。「日経WOMAN女性が活躍する会社ベスト100」では、2013年には100位圏外でしたが、2014年にはベスト10に入り、女性が活躍できる企業としてリストアップされました。その躍進をリードしてきたのが、藤本さんでいらっしゃると思います。経営陣とともに、藤本さんがどのようにリーダーシップを発揮し、どんな取り組みをされてこられたのか、お聞かせいただけますでしょうか。

藤本:名誉顧問の鈴木は、昔から女性の能力を認め、

女性の積極登用を推進してきました。1993年には、すでにセブン‐イレブン・ジャパンとイトーヨーカ堂にそれぞれ取締役が誕生しており、その2人の活躍する姿を見て、私たち女性社員は頑張ってきました。
では、1993年から順調に女性管理職が増えていったかというと、そうではありません。そこで、2006年に鈴木が「女性管理職を2割5分にする」と社内外に発信し、私自身を含め、グループ内に何人かの女性執行役員を誕生させました。各事業会社の社長にも、「女性の活躍を進めなければならない」という意識は芽生えましたが、総論賛成各論反対で、なかなかうまく進みませんでした。
そのため、2012年に鈴木があらためて女性の積極登用を図っていくと宣言し、それを受けて、2012年にグループとして、翌2013年にセブン‐イレブン・ジャパンとしてダイバーシティ推進プロジェクトを立ち上げました。そこから各社の社長や役員の本気度も高まり、少しずつ変わってきたという経緯があります。

伊東:2006年時点で総論賛成各論反対になってしまった要因は、何だったのかを教えてください。どのような難しさがあったのでしょうか。

藤本:当時の経営はトップダウンの傾向がありましたし、各事業会社の社長も、男女に能力の差がないことは理解していました。だから、総論賛成なのです。ただ、それまで段階を踏んで女性を育ててこなかったため、組織を見渡したときに、まだそこまでの人材がいないので、もう少し役職登用は待ってほしいという意見でした。しかし、鈴木には、「自然発生的には生まれない」という強い信念がありました。

伊東:女性リーダーは、待っていても自然発生的には生まれないというのは、そのとおりだと思います。自然発生を待っていると、皆さん、いつまで経っても「まだ早いです」という反応になります。

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女性は責務を全うしようという意識が強い

伊東:鈴木様の強い信念があったとはいえ、総論賛成各論反対の中、女性リーダーたちに仕事のやりづらさがありましたか。

藤本:やりやすいとかやりにくいとかではなく、責務を全うしようという気持ちが強かったと思います。男性からの妬みはあったかもしれませんが、面と向かって言う人はいませんし、そんなことを気にしていてはできません。

伊東:責務を全うしようと思うのは、よく分かります。男性の場合、「ポストが来たから」という意識で役職に就く人も多いですが、女性は違います。
女性は、責務を全うしようという気持ちが強い分、そこで悩んでしまう傾向があります。ある会社の方とお話ししたときも、「本来、男女ともメンターが必要だが、責務を全うしようとする気持ちが強い分、女性のほうがメンターは大事かもしれない」という話になりました。藤本さんは、ご自身のご経験から、この問題については、どのようにお考えですか。

藤本:おそらく男性の場合は、自分に近しいマネジメントスタイルの人などロールモデルがたくさんいて、相談する人も多い。女性の場合はなかなかいないので、メンターがいた方がよいのかなと思います。ただ、今、当社で役職に就いている女性は、メンターが必要のない人だと思います(笑)。メンターがいなくてもやれないと、男社会の中では生きていけないところはありました。

 

3つの課題、5つの目標

伊東:2012年に再度、鈴木様がメッセージを出されるまでの間に、何か施策を打たれましたか。

藤本:

役員をつくるには、その手前の部長職クラスを育てなければなりません。この間に、各事業会社で部長職への登用が進みました。特別なサポートをしたわけではなく、男女関係なく能力のある人を引き上げた結果です。

伊東:2012年から、グループ横断のダイバーシティ推進プロジェクトでは、どのような取り組みをされたのですか。

藤本:当初は、セブン&アイ・ホールディングス、セブンイレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、そごう西武の4社のダイバーシティ推進担当者が、週1回、ミーティングをして施策を検討してきました。同時に、赤ちゃん本舗、ヨークベニマルなど他のグループ会社の担当者とも、四半期に一度、推進連絡会を実施しました。プロジェクトリーダーは私で、CSR統括部の中のプロジェクトという位置づけです。男性や子供のいない人を含め、さまざまなメンバーが参加しました。
プロジェクトでは、大きく、「女性の意識改革」「男性管理職の意識改革」「制度設計の見直し」の3つを課題と捉え、「女性管理職を20%にする」「男性の育児・家事参加の促進」「介護離職ゼロ」「社員の満足度向上」「社外評価の向上」の5つを当時目標として掲げました。

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意識改革に向け、地道に取り組む

伊東:ダイバーシティを推進するうえでは、意識改革が一番難しいと思います。女性の意識の問題も男性の意識の問題もありますが、具体的にどのようなことをされたのですか。

藤本:一つはコミュニティ活動です。まず、仕事と育児を両立している女性社員を集め、「ママ‘コミュニティ」をつくり、悩みや不安を共有しました。また、男性も交えてキャリアアップや両立の悩みを語り合う場も提供しました。ここに参加している男性社員は将来の管理職候補でもありますので、「女性はこういう考えや不安を持っていたのか」と気づき、今後のマネジメントに活かせます。
「イクメン推進プログラム」というパパのコミュニティもつくりました。これまで進めていたママ‘コミュニティは、パパもママも一緒に取り組む「子育てコミュニティ」に進化させて、現在も活動を継続しています。当初は隔月で実施していましたが、今は四半期に1回のペースで、「小1の壁や小4の壁では、こうするとよい」といったうまく両立するためのコツをシェアしたり、「育児や家事をママに任せっきりにしてはダメ」といった意識を植え付けたりと、工夫して取り組んでいます。参加者は、多いときは40~50人にもなります。自ら参加する人だけでなく、こちらからお声がけしながら 、活動を広げています。意識は急には変わりませんので、継続して地道に取り組むしかないと捉えています。
「ウイメンズマネジメントコミュニティ」という女性管理職のコミュニティも設けました。課長以上を対象にしたグループ横断のコミュニティで、四半期に一度、先輩役員や外部講師に話をしてもらったり、グループ会社の役員が教育をしたりしています。

伊東:このコミュニティを立ち上げた理由は何でしょうか。

藤本:自分たちがロールモデルとなって後進を導く意識を植え付けるためです。役職者になると、自分一人の力でなったと勘違いしがちですが、本当は引き上げてくれた人がいます。彼女たちにも、その役目を担ってほしいのです。コミュニティの参加者は平均すると50 ~60人で、多いときは300人にもなります。
今年からは、その下のリーダー・係長級を対象に、「なでしこアカデミー」というセミナーを始めました。身近な先輩に話をしてもらい、「私も目指せる」と思ってもらえるように意識の醸成を図っています。今後は、社外の講師を招いて講演をしてもらうことも検討しています。

伊東:層を厚くしていくお考えなのですね。

藤本:そうです。グループに女性役員も生まれ、部長級も育ってきています。さらに増やしていくには、その下の課長、係長を増やさなければなりません。

女性にも異動経験が必要

伊東:「女性」

とひとくくりするのも適切でないとは思いますが、ダイバーシティのプロジェクトを率いてこられたご経験から、どういうところが女性の強みだと思われますか。

藤本:共感力ではないでしょうか。男性はやはり縦社会で生きていて、その中で政治力を使って組織を引っ張っていくのがうまいと思います。一方、女性は、政治力に関心がない代わりに、横のつながりを大事にする共感力や協調力がある方が多いように思います 。
ただし、それで組織を率いていけるかというと、ときには政治力も必要です。それを身に付けるには、女性も男性と同じように、いろいろな職種に就いたり、異動を経験する必要があります。それによってネットワークもできます。

伊東:異動によって経験を積むことは重要ですね。逆に、男性の共感力、協調力はどうでしょうか。

藤本:人にもよりますが、男性は人の話を聞くよりも、相手を論破しようとする傾向がある様に私自身は感じています。

伊東:ダイバーシティを推進するうえでは、男性にも、部下の話を聴ける能力が重要です。

藤本:実際、そういうことができる人が上に上がっています。

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伊東:男性の意識改革の面では、ミドル管理職の意識が問題になっている企業もあります。その点はいかがですか。

藤本:外部講師に依頼し、四半期に一度、「ダイバーシティマネジメントセミナー」という管理職向けセミナーを開催しています。任意参加で、管理職でなくても出席できます。これも毎回200~300人、多いときは450人が参加します。

伊東:ミドル管理職の皆さん、悩みや課題があるのですね。

藤本:特に女性社員をどうマネジメントするかが分からないという悩みが多いです。

伊東:成果は表れていますか。

藤本:はい。参加した役員には、「彼女は力があるから、前倒しで登用するか」「意識を持って指導していこう」といった意識が芽生えています。特に営業部門は、なかなか女性の役職者が増えなかったのですが、消費者との接点が近い部署は、女性を入れないと生活者視点が生まれません。最近は、女性を商品開発に積極的に登用しており、部長職が3人誕生しました。

伊東:商品開発部門は、御社のビジネスの本流ですよね。本社の間接部門では女性の登用が進んでいても、本流の部署に女性管理職がいないという悩みを持つ企業は、少なくありません。

藤本:商品開発部門の女性の商品開発担当者の比率は、プロジェクト発足前は12%でしたが、2016年末は26%と、順調に増えています。登用された女性たちが頑張って売れる商品をつくってくれており、それを見ている下の層のモチベーションも上がり、よいサイクルができています。

伊東:それはいいですね。なぜ女性の登用を進めるかというと、女性の活躍を促すこと自体が目的ではなく、本当はビジネスのためです。女性活躍推進が経営戦略の一環であるといったメッセージは、発信されているのですか。

藤本:「組織の主流に女性や外国人がいることで、いろいろな化学反応が起こり、イノベーションが起こる」ということを、機会があるたびにメッセージとして発信しています。

今後、介護離職も重要な課題に

伊東:目標の一つに掲げている「介護離職ゼロ」は、これからの時代、重要性が高まってくると考えられます。どのような取り組みをされていらっしゃいますか。

藤本:年2回、介護とは何か、自分が直面したときにどうするかといった基本的な情報を提供するセミナーを実施しています。参加者はさまざまで、男性も女性もいますし、実際に介護をされている人もいれば、これからするであろう人、参加時点では視野に入っていない人もいます。

伊東:これをダイバーシティ推進プロジェクトの施策の一環に入れているのは、この問題が、女性が仕事を続けていくうえで重要だからですか。

藤本:女性のためだけではありません。介護を担う年代は一般的には50代が多いと言われており、また男性が担うケースも多くなります。 介護で会社を辞めてしまうと、その人の生活が成り立たなくなりますので、何とか食い止めたいと考えています。しかし、まだ会社として、介護のために辞める人の数がつかみきれていません。なぜかというと、「介護をしているから時短にしてほしい」と言うと評価に影響するのではないかと考えて、介護をしていると言わない人がいるためです。その点も含めて教育しています。今後、介護や病気との両立など、時間制約のある社員が増えていきますので、そうした中でどう対応すべきか、投げ掛けていきます。

 

自分が能動的に選んだ働き方ができるようにする

伊東:藤本さんがダイバーシティ推進プロジェクトを率いてきて、5年ですね。リーダーとして、ご自身のゴール設定、そして、目標達成に向けてのチャレンジをどう乗り越えてこられたのですか。

 藤本:ゴール設定として、KPIを掲げるようにしています。「2020年までに女性管理職を3割にする」「介護離職ゼロ」といった目標を掲げ、自分の責任として取り組んでいます。当社では、「数値目標のないところに仕事はありえない」という考え方が根付いています。

伊東:当社のパートナーであるアメリカのDDI社でも、「測定評価できないものは管理できない」ということを掲げています。結果を出すためには、数値目標を掲げるだけでなく、進捗管理指標を明確にし、それをクリアしていくという考えです。私も、藤本さんがおっしゃるとおり、成果を出す上で、本当に重要なことだと思います。
ダイバーシティ推進のリーダーとして、さらに将来に向けて、こんなことをしたいというビジョンを聞かせてください。

藤本:もっと働き方改革を進めていく必要があると考えています。自分が能動的に選んだ働き方ができるような仕組み、体制が必要です。2017年7月、 トライアルで2週間、時差出勤を行いました。8時、9時、10時の3パターンに振り分けて行ったところ、9割の人から賛同を得られました。これまでは会社が決めた時間で働いていましたが、自分で選べるようになると、自分で責任を取る意識が生まれます。「自分で選んだのだから、なんとしてもこの時間内にやらなければ」と考えるようになります。「早く来ても、だらだらする人がいるのではないか」と思われるかもしれませんが、その点は、人事本部長が「絶対に帰るように」と徹底的に周知しました。

伊東:トップや運用するリーダーが、コミットして必ず実行させることは大事ですね。
自分が主体的に選んだ働き方ができるようにするというのは、私も賛成です。時間の面以外でも、個人が自ら能動的に選べる仕掛けをお考えですか。

藤本:働く場所についても、在宅勤務にチャレンジしたいと 考えています。そうすれば、介護をされている方も働きやすくなります。

伊東:キャリアパスの面でも働き方を選ぶことはできますか。例えば、全員がリーダーを目指すのではなく、専門職を目指してもよいというように。

藤本:特に営業部門では、緻密なキャリアパスを作っています。また、年に2回、「この部署に行きたい」と、上司を通さずに立候補できる機会があります。自己評価 をして上司との面談ですり合わせをする仕組みもあります。

伊東:自分が主体的に選んだら、自己責任につながりますね。

藤本:自分から動かないと何も生まれないという組織風土が根付いているのだと思います。始終上司に新しい企画を求められていますから。 

伊東:御社の、人材の定着率についても教えてください。定着率は高ければよいというものではありませんが、主体的に動ける人が増えると、違う世界に行こうとする自立的な人材も増えると思います。リテンション対策については、どうされているのでしょうか。

藤本:離職率は、現在5%くらいでしょうか。当社の場合、優秀な人ほどセブン‐イレブンが好きな人が多く、特に役職者は、会社に対するロイヤルティが高いです。

伊東:役職に就いている人がそういう精神で仕事をすることは大事ですね。それが企業風土となり、脈々と伝承され、現在の御社の強さになっているのですね。女性活躍推進を中心となって進めていらっしゃった藤本さん自身が、男性社会の中にあって、政治的な動きを見につけながらも、自分らしくリーダーシップを発揮されている、Woman in Leadershipは、御社の中での素晴らしいロールモデルだと、お話を伺いながら感じました。そして、女性活躍推進を経営課題につなげ、常に先を見ながら、新しい目標を設定し、一つひとつ結果に結びつけていく取り組みが、変化もスピードも早い御社のビジネスモデルの中にあって、現在の成功につながっているということを強く感じました。本日は、とても参考になるお話をありがとうございました。

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会社名
株式会社セブン-イレブン・ジャパン
設立
昭和48年11月20日
資本金
172億円
従業員数
8,562人(平成29年2月末現在)
売上高
4兆5,156億5百万円(国内チェーン全店)
店舗数
19,422店(国内)