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EQを活用したリーダーシップが、いかにエンゲージメントを高めるか

EQを活用してリーダーシップを発揮することの重要性

気持ちが高ぶると、リーダーはチームに対し、感情を横において目の前の仕事に集中してほしいと思うことがあるかもしれません。しかし、感情のない職場を作ろうとしても、決して解決にはなりません。感情知性(心の知能指数=EQ)を活用してリーダーシップを発揮することが、短期的にも長期的にも良い結果をもたらします。

リーダーが冷淡であるかどうかが問題なのではありません。むしろ、リーダー自身はプレッシャーを感じており、自らのストレスをコントロールしようとしているのです。彼らは会社やチームを動かすという途方もない任務を担い、チームのために勇敢な顔を見せ、業務をこなし続けなければならないという重荷を背負っています。やるべきことが山積している時に感情に注力するのは逆効果に思えるかもしれません。

しかし、チームの感情に配慮しないでいると、エンゲージメントが低下する可能性が高まります。従業員は最低限の努力すら難しいと感じるようになるかもしれません。パフォーマンスの高い従業員が燃え尽き、退職してしまうリスクも高まります。さらに、業績が悪化するだけでなく、従業員には身体的にも精神的にも大きな負担がかかる可能性があります。

だからこそ、EQを使って人を率いることが重要なのです。

EQを活用したリーダーシップとは

作家で国際的なリーダーシップ・コンサルタントであるアデル・リン氏は、「EQとは自分の意図したとおりに生きるために、自分の感情と他者との関係を管理する能力である」と定義しています。

この定義は、リーダーが思いやりのない人であるつもりはないということを裏付けています。リーダーは、現実的になすべきことだけに集中し、他者の心理的ニーズ(ヒューマンニーズ)をおろそかにしてしまうことがよくあります。そして、ここからメンバーとの意思疎通が途切れてしまう場合もあります。感情の結びつきがなければ、チームが持続的に質の高いパフォーマンスを発揮するのは難しくなります。その結果、リーダーは意図した結果が得られないと苛立ち、困惑するのです。

多くのリーダーが「EQを活用して人を率いるとはどういうことなのか」を模索する中で、私たちは以下のような疑問をよく耳にします。

  • 「共感を示す」とはどういうことなのか?
  • 混乱している時や困難に直面した時に、どのように共感を示せばよいのか?
  • 単に利益を追求するだけでなく、共感を得るにはどうしたらよいか?
  • 一貫して思いやりのある文化を醸成するにはどうしたらよいか?

EQを活用して周囲をけん引するリーダーを育てるのは容易ではないかもしれませんが、その努力に見合う成果を得ることができます。リーダーが共感力に優れている組織では、従業員のエンゲージメントと定着率、生産性が向上し、燃え尽き症候群になる割合が低くなっています。そしてこれにより、組織全体の目標を達成する確率が大幅に高まります。 EQを活用して人を率いるリーダーを支援するには、3つのステップがあります。

ステップ1:個々人の阻害要因を認識する

航空会社には昔から「他の乗客を助ける前に自分に酸素マスクをつけなさい」という助言があります。私たちは、リーダーシップにも同様のアプローチを推奨しています。リーダーが自分自身のストレスに対処できなければ、他者を支援するのに苦労します。その結果、「阻害要因」と呼ばれるネガティブな個人特性が、ストレス下で現れ始めます。

阻害要因とは、性格の「負の側面」のことであり、誰もが抱えているものです。ストレスがかかると口論になったり、支配的になったり、衝動的になったりするような性格がこれにあたります。自分の性格を変えることはできませんが、ストレス下での反応や対応をコントロールすることはできます。

阻害要因をコントロールする4つの方法

  1. これから起こるストレスフルな状況を予測した上で、「自分が本当に望む結果は何か?」と自問します。そして、その状況になりストレスを感じ始めたら、一呼吸おいて、10数えます(少なくとも5数えます)。反応する前に少し時間を取ることで、自分の意図した対応ができるようになります。
  2. 自身の阻害要因を認めるのは良いことですが、それを正当化してはなりません。もし何かに過剰に反応したのなら、謝ることもできます。しかし、謝罪は時間がたつと薄れるものです。ただし、「申し訳ございません。でも、私は衝動的な人間なので、どうしても言いたかったのです」というように、自分の過剰な反応を正当化する理由としては使わないでください。
  3. 自分自身をベストな精神状態に保てるように、心身の健康管理をしましょう。
  4. 練習あるのみ!

コーチングを提供する人事担当者や上司は、リーダーが自身の感情をコントロールできるよう支援することが可能です。最もストレスにさらされているリーダーを特定し、感情の引き金を制御する方法について話し合うこともできます。また、「今後どのような状況が最も懸念されるか」「どのような結果が重要か」などの質問をすることで、リーダーが一呼吸おいて考えるための支援をすることも可能です。

このようにして、リーダーはEQを活用してリーダーシップを発揮しながら、自分自身の感情をコントロールするという課題に対処する計画を立て始められるようになります。

ステップ2:その場の雰囲気を察知する

リーダーは他者の感情を汲み取る努力をする必要があります。言い換えれば、共感を発揮する必要があるということです。しかし、共感と同感を混同しているリーダーもいます。共感とは、他者の視点や考えを理解する能力で、同感とは、他者の不運や不幸に対して同情や悲しみを感じることです。

多くのリーダーが共感を示すのに苦労しています。それは、共感を示すことが、例えば、「あなたがひどくストレスを感じているようで申し訳なく思います。なぜ報告書を書き上げられなかったのか、よく分かります」といったように、相手に申し訳ないと思わなければならないことだと考えたり、自分が同じような体験をしていなければ反応できないと思ってしまったりするからです。

しかし、共感を示すには必ずしも相手の意見や行動に同意する必要はありません。単に、相手がどう感じているのか、なぜそう感じているのかを理解しようと、気持ちに寄り添うことが大切なのです。

例えば、リーダーは以下のような分かりやすい公式を使って共感を示すことができます。

「______________だから/の件で______________なのですね」  
(事実)       (感情)

実際の会話では、「あなたが話してくれたことを考えると、今は多くの優先事項が相反しているため、押しつぶされそうになっているようですね。」のようになります。

また、共感を示すのに、リーダーが答えをもっている必要はありません。 リーダーはしばしば、部下のために状況を「修復」しようとしがちになりますが、事実や感情を正確に把握し、相手の気持ちを理解していることを示すまでは、実践的な次のステップには進めません。不確実さやストレス、業績へのプレッシャーといった感情を認識することで、部下は理解されていると感じられるようになります。その結果、彼らはより積極的に取り組み、解決策の一端を担おうとする意欲が高まります。

ステップ3:解決策の一端を担う

最後のステップは、結果を導く要素です。リーダーが自分自身の感情とチームの感情をうまくコントロールできるようになれば、目標達成に向けて人々を動員し始めることが可能となります。

リーダーは以下の3つを追求することで、チームを動かすことができます。

  1. 異なる視点を求める:「変化による最大の影響は何だと思いますか?」
  2. 支援を求める:「どの優先事項が最も相反していると思いますか?」
  3. アイデアを求める:「何が優先されるかを真に理解してもらうために、もっと良い伝え方はないでしょうか?」

そして、ここからが難しいところです。リーダーはチームのフィードバックに耳を傾け、対応する必要があります。これは、常にチームの提案通りにするという意味ではありませんが、彼らの意見を認め、最終的な解決策に取り入れる方法を見つけなければなりません。チームのアイデアではうまくいかない場合でも、リーダーは彼らの提案が採用されない理由や根拠を共有することで、信頼を構築できます。

上記のステップは、リーダーが直面する複雑な課題を解決するための特効薬ではありません。しかし、リーダーが場当たり的な反応を抑え、チームメンバーが抱えている問題を認識し、彼らを解決策の検討に巻き込むことで、リーダーはチームの燃え尽きを防ぎ、より迅速に前進するための一歩を踏み出せるようになります。

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従業員エンゲージメントと定着のための実践ガイド

執筆者:DDI社 プロダクト・マネジメント バイスプレジデント ヴェリティ・クリーディ
               DDI社 USオペレーション シニア・コンサルティング・マネジャー スコット・ウルフ

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