ビジネス経済メディア THAIBIZ 特別取材 前編
いま必要な、本社経営戦略に紐づく人材戦略とは(前編)
~「集まらない・定着しない」の原因
このたび、弊社取締役福田俊夫が、タイの最新のビジネス・経済ニュースを発信しているビジネス経済メディア「THAIBIZ」から在タイ日本企業が抱える人事課題とその背景に関するインタビューを受けました。以下、掲載記事をご紹介します。
「人材が集まらない」「採用できても定着しない」「優秀な人から辞めていく」近年、タイの人材市場で人気が低迷していると言われる日本企業には、このような悩みが尽きない。一方でグローバル競争は激化しており、人事経験があまりない駐在員にも海外拠点の人事改革の着手が求められるケースが多い。では、効果的な打ち手はあるのか。「本社の経営戦略と海外拠点の人材要件のミスマッチが根本的な問題だ」と指摘するのは、本社との繋がりを強みに持つ、株式会社マネジメントサービスセンター(以下、MSC)の取締役 福田俊夫氏だ。在タイ日本企業が抱える人事課題とその背景について、同氏に話を聞いた。
海外拠点で人的資本の情報開示が求められる理由
株式会社マネジメントサービスセンター(以下、MSC)は「マネジメントの効率化とスキルの普及」をミッションに掲げ、1966年に日本で設立。経営戦略に基づいたリーダーシップ開発を専門とし、法人向けの人材アセスメントとスキルトレーニングの提供を通じ顧客企業のリーダー発掘・育成を支援している。同社は1973年に米国のDDI社(Development Dimensions International)とパートナーシップを結び、米国の人材アセスメント手法を初めて国内に取り入れ展開させた。約50年間にわたり世界90ヵ国以上に、様々な人材開発プログラムを多言語展開している。日本での取引実績は年間700社に上り、アセスメントは延べ約80万人、リーダーシップ・トレーニングは延べ約150万人に提供している。
リーダーシップ開発のプロフェッショナルである福田氏は、日本企業が直面している課題について、「日本では2023年に、人的資本の情報開示が義務化された。投資家が経営戦略の実現可能性を判断するために、社員の能力を可視化し開示する必要がある。経営戦略に適った人選がなされているかを示すために、特に役員の選定における外部の客観的視点が重要視される一方で、それがまだ実現できていない企業が多い」と解説する。
「日本の人口減少も大きな課題となっている」と同氏は続ける。総務省統計局によれば2020年から2030年にかけて、日本の人口は7.7%減少すると見込まれており、さらに、この10年間で活躍人材と言われる35~44歳の人口は23%以上も減少するとの調査結果がある。福田氏は「この年齢層の全員がマネジャーにならないと組織が成り立たない程、切迫した状況だ」と警笛を鳴らす。さらに、人口の減少に伴い国内マーケットが縮小傾向にあることで、海外展開に踏み切る企業が増加しており、海外拠点での売上が国内売上を上回るケースも珍しくないという。同氏は、「そうすると必然的に、本社だけでなく海外拠点の社員についても人的資本の情報開示が要求されることになる。売上の多くを生み出している海外拠点に、本社が掲げる経営戦略を実現できる人材が配置されているのか。この点に投資家が関心を持つのは当然の流れだと言える」と、人材能力の可視化はもはや本社だけの問題ではないことを強調する。
この後、下記のトピックが続きます。
・採用難と人材流出に悩むタイ日本企業
・本社の経営戦略と海外拠点の人材要件のミスマッチ