パフォーマンス・マネジメント
─ 組織と個人の目標を連動させ、双方の継続的な向上・成長を実現! ─
パフォーマンス・マネジメントとは
パフォーマンス・マネジメントとは、企業が従業員の業績向上と離職防止を目的に採用する管理手法です。具体的には、上司と部下の間で頻繁に行われる1on1ミーティングや目標管理、フィードバックを有機的に結びつけることで、継続的なパフォーマンスの評価と改善を図ります。この手法は、従来の年次評価制度とは異なり、リアルタイムでの目標の調整が可能となるため、評価時の認識齟齬を防ぎます。
アメリカの先進企業において、パフォーマンス・マネジメントは広く実践されています。具体的な効果としては、評価プロセスの効率化により組織全体の業績に大きな影響を及ぼすことが確認されています。例えば、Adobe社はパフォーマンス・マネジメントの導入により、離職率の大幅な低減や評価の効率化を実現しています。
【参考】アドビ株式会社「アドビ調査、従業員の人事評価のやり方が時代遅れになっていることを示唆」https://blog.adobe.com/jp/publish/2017/04/05/adobe-performance-review-study
この手法の中核を成すのが「チェックイン」と呼ばれる定期的なコミュニケーションです。「チェックイン」では、上司と部下が週次または月次で目標と期待値をすり合わせることで、双方の認識を一致させ、目標達成に向けた具体的なアクションプランを立てます。このプロセスは、形式的なものではなく、日々の業務に組み込まれた非形式的な対話を重視しています。
パフォーマンス・マネジメントの導入は、企業の文化や風土に根付くまでに時間と努力を要しますが、その効果は計り知れません。離職防止や従業員のエンゲージメント向上に直結するだけでなく、組織全体のパフォーマンスを向上させるための強力なツールとなります。
MSC/DDIでは「パフォーマンス・マネジメント」を「組織と個人の目標を連動させ、双方の継続的な向上・成長を実現させるためのビジネスプロセス」と定義しています。個人が組織方針・戦略・目標・役割を理解し、個人の行動・能力の変革・成長を促し、組織目標の達成確率を上げるというマネジメントのための仕組みであることを理解することが肝要です。
パフォーマンス・マネジメントの導入ポイントと注意点
パフォーマンス・マネジメントを効果的に導入するためには、設計時に能力開発の観点を入れること、そしてその後の運用の質を高めることがポイントです。
「運用の質」を上げるということは「日々の対話の質」を向上させることと同義になります。その対話の質こそが、個人のモチベーションを支え、実行の確率を高め、未来志向の対話姿勢へと導きます。
「運用の質」を上げる設計に際しては、以下のプロセスとなります。
- 「パフォーマンスマネジメント」を導入した目的・制度内容、および組織文化を確認する:導入背景は置かれているビジネス環境によりさまざまであり、どのような制度設計か、組織文化や現在の運用実態を理解します。
- 運用上の課題を特定する:1によるインプットと、MSC のサービス経験や DDI の知見を元に、運用上の課題を特定します。
- 最適なアプローチを提案する:DDIのインタアクション・マネジメント®(IM)シリーズの「戦略の実行」「目標設定と達成状況の振り返り」「最高のパフォーマンスを導くコーチング」などをベースに、対象層を念頭に、貴社のパフォーマンスマネジメントの制度を盛り込んだ具体的かつ最適な展開方法をご提案いたします。
パフォーマンス・マネジメントを導入する際の注意点として、まず評価基準の一貫性と透明性が挙げられます。評価基準が曖昧であったり、一貫性が欠けていたりすると、従業員は不満を抱きやすくなります。評価基準は、全従業員に対して公平に適用されるように設計し、明確に伝えることが求められます。
次に、フィードバックの質と頻度です。フィードバックが遅れると、従業員は自己評価を行うタイミングを失い、改善の機会を逃してしまいます。定期的なフィードバックを行うことで、従業員は自分の業績を客観的に見直し、必要な改善をタイムリーに行うことができます。また、フィードバックは具体的であることが重要です。抽象的なフィードバックでは、従業員はどの部分をどのように改善すべきかが分かりません。具体的な事例やデータを用いてフィードバックを行うことで、従業員はより効果的な改善行動を取ることができます。
さらに、上司と部下のコミュニケーションが円滑に行われる環境の整備も重要です。上司が一方的に評価を伝えるのではなく、従業員の意見や感情を尊重し、双方向のコミュニケーションを図ることが求められます。これにより、従業員は自己の向上に向けた取り組みを主体的に行う意欲を持つことができます。
最後に、パフォーマンス・マネジメントは継続的な改善が求められます。導入当初はうまく機能していても、時間が経つにつれて形骸化してしまうことがあります。定期的に運用プロセスを見直し、必要に応じて改善を行うことで、常に効果的なマネジメントを維持することができます。
パフォーマンス・マネジメントの進め方
パフォーマンス・マネジメントは、従業員の業績向上と離職率低減を目指しています。どのように従業員のモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンス向上を実現するための具体的な3つのステップを説明します。
STEP1:目標設定
従業員一人ひとりの目標は、企業のビジョンやミッションと整合性を持つように設定されます。目標はSMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)に基づいて設定されるべきです。具体的かつ測定可能な目標は、従業員が何を達成すべきかを明確に理解する手助けとなります。
STEP2:1on1ミーティングの実施
上司と部下の間で定期的な1on1ミーティングを行います。1on1ミーティングでは、目標の進捗状況を確認し、問題点や課題を話し合います。また、従業員のキャリア開発や職務満足度についても話し合うことで、個々のモチベーションを高めることができます。このような継続的な対話は、早期に問題を発見し、迅速に対応するために重要です。
STEP3:継続的なフィードバック
パフォーマンス・マネジメントの核心は、フィードバックの頻度と質にあります。従業員は、自身の業績に対するフィードバックをリアルタイムで受けることで、自分の強みと改善点を把握できます。ポジティブなフィードバックはモチベーションを高め、建設的なフィードバックは具体的な改善行動を促します。
パフォーマンス・マネジメントは、従業員の業績を最大限に引き出し、企業の競争力を高めるための重要な手法です。目標設定、1on1ミーティング、継続的なフィードバック、そして評価プロセスを一貫して行うことで、従業員のモチベーションを維持し、企業全体のパフォーマンスを向上させることができます。この手法を効果的に運用することで、組織の強みを最大限に発揮することが期待されます。
パフォーマンス・マネジメントと目標管理制度(MBO)の違い
パフォーマンス・マネジメントと目標管理制度(MBO)は、両方とも企業が従業員の業績を向上させるための手法ですが、そのアプローチや特徴には大きな違いがあります。以下の表で、両者の違いを詳述いたします。
項目 | パフォーマンス・マネジメント | 目標管理制度(MBO) |
---|---|---|
目的 | 従業員の業績向上と離職率低減を図り、組織全体のパフォーマンスを向上させます | 従業員の目標達成を通じて、企業の全体目標を達成することを目的とします |
評価の頻度 | 高頻度のフィードバックと評価が行われます | 通常、年次または半期ごとに評価が行われます |
フィードバック | 継続的かつリアルタイムでフィードバックを提供し、問題の早期発見と迅速な対応を促します | 定期的なフィードバックが少なく、主に評価時に行われます |
コミュニケーション | 上司と部下の1on1ミーティングを重視し、継続的な対話を通じて目標達成をサポートします | 目標設定時と評価時に主にコミュニケーションが行われます |
目標設定 | SMART基準(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限あり)に基づいて目標を設定します | 具体的かつ測定可能な目標を設定し、達成度を評価します |
評価基準 | 公正かつ透明な評価基準を設け、全従業員に対して一貫して適用します | 目標達成度を主な評価基準とし、結果に基づいて評価が行われます |
主なアプローチ | 継続的な改善と柔軟な対応を重視し、組織の状況に応じて適応させます | 固定された目標に基づいて計画的に進め、達成度を測定します |
従業員の関与 | フィードバックや目標設定において、従業員の意見や感情を尊重し、主体的な取り組みを促します | 主に目標設定時に従業員が関与し、フィードバックの機会は少ないです |
適用範囲 | 全従業員を対象にし、個別のパフォーマンス向上を図ります | 個々の従業員や部門ごとの目標達成を図ります |
長所 | 継続的なフィードバックにより、迅速な問題発見とこれからのパフォーマンス改善につながります | 具体的な目標設定により、成果が明確に評価されやすいです |
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