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燃え尽き症候群文化を理解する

~リーダーが職場のストレスを軽減するための10の方法~

過労は職場の知られたくない事実です。誰もが経験していることですが、それについて誰も話したがりません。ここでは職場に蔓延する燃え尽き症候群文化を減らすための10の方法について、解説します。

職場のストレスが多いほど、燃え尽き症候群文化を生み出すリスクのある企業は増えます。そして、現在、ストレスレベルは最大に達しています。新型コロナウイルス感染症の大流行により、多くの企業がビジネスモデルの抜本的な変革を余儀なくされ、より少ない労働力で業務を行っているうえに、政治、育児問題、家庭教育、リモートワークによる孤立などが不安の原因となり、多くの人が仕事以外の個人的なストレスを抱えています。

その結果、米国Eagle Hill Consultingの調査において、従業員の58%が燃え尽き症候群に直面していると回答しています。では、職場における過労の蔓延を防ぐと同時に、自分自身を守るために、リーダーは何をすればよいのでしょうか?

最初のステップとして、燃え尽き症候群は、“個人がストレスに上手く対処できないことによる反応ではない”ということを認識することです。燃え尽き症候群に関する研究の第一人者であるクリスティーナ・マスラク氏は、まず、過労が組織的な現象になり得ることを観察しました。

2019年5月、世界保健機関(WHO)は、燃え尽き症候群を“適切に管理されていない職場での慢性的なストレスから生じる職業上の現象”と解釈される症候群として再定義しました。WHOは、燃え尽き症候群はあくまで仕事に関連した現象を指す言葉であり、「仕事以外の人生における体験に関しては適用すべきではない」と具体的に言及しています。

このことは、燃え尽き症候群を回避する責任の一端を従業員個人だけでなく、リーダーにも負わせることになります。そこで、Burnout During Organizational Change Model (B-DOC)(組織変革モデルにおける燃え尽き症候群)の研究に基づき、リーダーが職場のストレスを改善するための10の方法をご紹介します

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1. 積極的にフィードバックを促すことで、従業員のコミットメントを得る

変化の激しい時期には、すべての従業員が組織の将来のビジョンと方向性を理解する必要があります。先行きの見えない未来は、従業員の不安な気持ちを助長させ、起こり得る(あるいは起こらないかもしれない)結果を想像したり、予測したりする要因になります。

そして、従業員の仕事に対する考えは、これらの恐れに支配されるようになります。しかし、リーダーが新しい目標や戦略についてフィードバックをするように促すと、彼らは安堵します。また、自分の考えが認められていると感じ、新しい目標の達成に全力を注ぐ可能性が高くなります。

2. 倫理的違反に対するゼロ・トレランス方針(不適切な行為などを一切容認しない方針)を維持する

まず始めに、自社に最新の倫理規定があることを確認してください。それは、従業員の行動指針だけでなく、どのように行動するかにも影響を与える随時更新文書でなければなりません。ストレスや要求が増えると、従業員が目標達成のために倫理的でない手段をとる可能性が高くなるからです。

例えば、職場でのいじめは、ストレスがかかると悪化することがあります。従業員が報復を恐れずにいじめを報告できる安全な場所を作る必要があります。その後、リーダーは不適切な行動に迅速かつ直接的に対処することで、フォローアップを行うべきです

3. 部門や拠点を超えて一貫した双方向の対話を確立する

経営陣のメッセージを掲載したメールマガジンやタウンホールミーティングは対話ではありません。対話とは、発信されたメッセージが実際に相手に届く双方向の伝達手段です。

従業員に自分の考えや懸念を伝えることができると感じてもらえると、リーダーは従業員の創造性と問題解決の可能性を引き出せたことになります。そして、彼らと話すときは、相手の話に耳を傾け、質問をして相手の理解を促しましょう

4. 管理しやすい業務量とスケジュールを提供する

The American Institute of Stressの調査にによると、週に60時間以上の長時間労働を続けると燃え尽き症候群になることが示されています。コロナ禍の在宅勤務において、多くの従業員が仕事とプライベートの責任を切り離してバランスをとるのに苦労しています。

これは簡単な方針変更で、劇的な効果を得られることがあります。例えば、会議の回数を制限したり、リーダーが率先して時間外のメールやテキストメッセージの送信を控え、手本を示したりすることもできます。また、従業員にプロジェクトを割り当てる前に、プロジェクトリストの各タスクに必要な時間を見積もる必要があります。これらの変更は、業務の過度な負荷を軽減するのに役立ちます

5. ビジネス状況を考慮したバランスのとれた指標で業績管理をする

一般的に、効果的な業績管理には、リーダーと従業員の双方が合意した具体的な目標が必要です。しかし、コロナ禍では「これまでの通常業務」が根底から覆されてしまいました。このまったく異なる労働環境の中で、人々は自分の仕事を成し遂げるための最適な方法を見出す試みを委ねられています。

業績に関する従業員の置かれた状況を考慮することで、リーダーは部下が何をしているかだけでなく、どのようにして遂行しているかについても、より全体的な見方をすることができます

6. 従業員が成功するために必要なリソースを提供する

従業員は、自分自身が最高のパフォーマンスを発揮するために必要な技術的、財務的、人的なリソースを把握しています。

また、在宅勤務が増えるにつれ、自宅で集中できる部屋を確保できない従業員も出てくるかもしれません。従業員が自分で解決することを期待せず、彼らがうまく調整できるように支援とベストプラクティスを提供してください

7. あらゆる階層において、誠実、公正、公平な文化を醸成する

社内の政治的駆け引きは、過度なストレスになります。そして、対面での会話をせずにリモートで仕事をしていると、さらに悪化することがあります。

問題のある社内政治は、組織の倫理規定に違反し、法的問題を引き起こす可能性もあります。すべての従業員を誠実、公平、そして公平に扱う方針と実践ができるように努めましょう

8. アクティブリスニングを実践し、チームの協力体制に影響を及ぼす前に、従業員の懸念事項を特定する

不満をもった従業員は、しばしばお互いに話をします。そして、これが抵抗感と業績不振のサブカルチャーを生み出すことがあります。

しかし、すべての部下が自分の問題をリーダーに話したがるわけではありません。リーダーは部下の不満に積極的かつ思いやりをもって耳を傾けることで、チームの協力体制に影響を及ぼす前に潜在的な問題を特定することができます

9. 思いやりとバルネラビリティで対話する

人間は感情的な生き物です。私たちは感謝されている、大切にされていると感じたいということが遺伝子に組み込まれています。そのため、リーダーは自分たちが心から大切に思っていることをチームに示すために、一貫した行動をとらなければなりません。

信頼は、透明性とバルネラビリティによって構築されます。バルネラビリティとはコンピュータ用語でシステムの脆弱性のことを表しますが、心理学用語では「自分の心の弱さを人に見せること」、「自分の弱さを認められること」を意味します。そして、信頼の文化は、より大きなエンゲージメント、コミットメント、イノベーションをもたらします。コロナの蔓延が続く中で、多くの人が安定した雇用の確保、財政、健康にストレスを感じ続けています。相手に対する思いやりと感謝のちょっとした行為が、大いに役立ちます

10. サーバントリーダーであることによって信頼と自律性を構築する

独裁的なやり方やマイクロマネジメントは、時代遅れで効果的ではありません。また、これらは今日のストレスの多い不確実な職場環境においては害となり、逆効果です。

サーバントリーダー(まず相手に奉仕し、その後相手を導くという考えのもとに生まれた「支援型リーダーシップ」)であることは、個々の従業員特有のニーズを受け入れて、組織の目標を達成することに焦点を当てたコミュニティを築きます

燃え尽き症候群文化はきまりの悪い事実

燃え尽き症候群の文化は、あまりにも多くの組織で知られたくない「きまりの悪い事実」であり続けています。誰もがそれを感じていますが、誰もそれについて触れたがりません。

リーダーは厳しい立場にあります。彼らは自分自身も過労を感じており、燃え尽き症候群の文化を後押ししてしまっているかもしれません。多くの場合、リーダーは自分の弱みを見せることを恐れて、自分の葛藤を認めようとはしません。その結果、チームも自分たちの気持ちを認めたくなくなります。

これが燃え尽き症候群のスパイラルを生み出します。そして、離職者が増えると、燃え尽き症候群の文化が加速します。

幸いなことに、リーダーは自分自身とチームの両方に「新たな日常」を作り出す力をもっています。リーダーは全員のストレスを最小限に抑える職場環境を醸成することができます。その結果、誰もが尊重され、受け入れられ、創造性を発揮して価値ある目標を追求することができる、Win-Winの協力的な環境が実現します

 

原文はこちらをご参照ください。