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初級・中級管理職に不可欠なコンピテンシーを特定する方法

初級・中級管理職に不可欠なコンピテンシーを特定する方法

良い上司になるためには何が必要でしょうか?これは、自社の文化やビジネス状況において「優れたリーダーシップとは何か」を定義しようとしているお客様からよく聞かれる質問です。彼らは初級・中級管理職に不可欠なコンピテンシーを定義しようとしますが、自社のリーダーに求められる資質は非常に多く、これは想像以上に難しいと気づくのです。では、リーダーに求められる最も重要な資質を行動レベルにまで落とし込むには、どうすればよいのでしょうか?

ここでは、初級・中級管理職に不可欠なコンピテンシーを特定する方法について解説します。また、初級・中級管理職向けのリーダーシップ開発プログラムから最大限の効果を得るために、コンピテンシーをどのように活用するかについてもご説明します。

 

コンピテンシーに基づくリーダーシップ開発をすべき理由

コンピテンシーの話をする前に、なぜリーダーシップ開発をコンピテンシーに基づいて行う必要があるのか、その理由から解説します。はじめに、コンピテンシーとは、特定の職務や役割で成功するためにリーダーが発揮すべき具体的な行動特性のことです。

組織の中には、リーダーの能力開発にコンピテンシーを使用したり体系化したりせずに、リーダーシップに関するテーマを学習するところもあります。しかし、そのような方法では、雑然としたリーダーシップ環境が生まれてしまいます。各リーダーが異なる行動をしているとしたら、自社のリーダーシップ文化をどのように定義するのでしょうか?また、リーダーの成功をどのように評価し、進捗を測定するのでしょうか?


91_percdent図.png人材開発担当者が時間をかけて「成功に必要なコンピテンシー」を定義すると、大きな成果が得られます。DDIの「Job/Role Competency Practices Survey Report」によると、コンピテンシーが人事施策の基盤となっている組織の91%が「自社の能力開発はより効果的である」と報告しています。

 

しかし、注意すべき点は、自社に必要なコンピテンシーの検討に時間をかけすぎてはならないということです。RedThread Research社の「Skills and Competencies Report 2021」では、次のような警告を発しています。「求められる行動と優先事項を特定することは、人材開発における最大の難関の一つです。ただし、組織がスキルギャップを理解し、能力開発プログラムを展開できるようになる頃には、そのスキルは重要ではなくなっている可能性が高いのです。」要するに、早く着手すべきであるということです。

初級・中級管理職向けの優れたコンピテンシーモデルの基準

初級・中級管理職向けのコンピテンシーを設定することは重要ですが、すべて同じように設定できるわけではありません。では、優れたコンピテンシーモデルとそうでないものを見分けるにはどうすればよいのでしょうか。

このテーマだけでも多くを語れますが、初級・中級管理職向けのコンピテンシーモデルを構築する際に重要な3つの基準について簡単に触れておきます。

 

  • ビジネスの戦略的優先事項と整合させる 人事戦略が事業戦略から切り離されていることは多々あります。例えば、組織の戦略が「イノベーションの推進」と「新市場への拡大」にもかかわらず、コンピテンシーモデルが「プロセスの効率化」に関連する行動に主眼を置いている場合、必要なビジネス目標を達成することはできません。
  • リーダー階層に合わせたレベルを設定する 多くの組織は、特定のスキルを見るために一つのコンピテンシーを使用しようとしますが、求められるスキルが表出する行動は階層ごとに異なります。例えば、初級・中級管理職層における効果的なコミュニケーションは、主に対話やパフォーマンス・マネジメント、プレゼンテーションなどの行動に表れます。一方、経営幹部層としての優れたコミュニケーションは、全く異なるものになります。そのため、初級・中級管理職のコンピテンシーモデルを作成する際には、彼らの行動に特化したコンピテンシーであるかを確認する必要があります。
  • 観察可能な行動に焦点を当てる これは難題です。コンピテンシーの定義が不明瞭な場合、行動ではなく結果に焦点が当たり、解釈の仕方にばらつきが生じます。そのため、コンピテンシーは、明確で観察可能な行動に焦点を当てる必要があります。MSC/DDIではこれをキーアクションと呼んでいます。コンピテンシーをうまく発揮するためにはどのようなことが必要なのかを、正確に理解しなければなりません。

 

コンピテンシーに焦点を当てたリーダーシップ開発の5つのステップ

では、初級・中級管理職向けの優れたコンピテンシーモデルを理解した上で、コンピテンシーに焦点を当てたリーダーシップ開発プログラムを設計するには、どのようなステップが必要でしょうか。

ここでは5つのステップをご紹介します。

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1. ビジネス・ドライバーを特定する

問うべきこと:全体像は何か?

ビジネス・ドライバーとは、経営幹部が組織の将来の成功に最も重要であると考える上位3~4の課題を指しています。これは、イノベーションの推進、ハイ・パフォーマンスの組織風土の促進、顧客重視風土の醸成といった、高いレベルのビジネス目標などです。「当社はこれらすべてのことに取り組んでいます」と言う組織は多いですが、ここでは上位3~4の最も重要な課題に絞ることが大切です。

 

2. 初級・中級管理職に不可欠なコンピテンシーを特定する

問うべきこと:リーダーシップを成功に導くものは何か?

ビジネス・ドライバーを特定すると、それを実現するために必要なコンピテンシーが紐づきます。例えば、ビジネス・ドライバーの一つが「ハイ・パフォーマンスの組織風土の促進」である場合、関連する初級・中級管理職のコンピテンシーは、やる気の鼓舞、コーチング、優れたチームの構築になります。

このようなビジネスに特化したコンピテンシーに加えて、あらゆるリーダーにとって重要となる基本的なコンピテンシーと、時代やトレンドに合わせたコンピテンシーを設定するとよいでしょう。詳細は次をご覧ください。

 

3. コンピテンシーの強みと弱みを診断する

問うべきこと:現在の強みと能力開発領域は何か?

ビジネス・ドライバーと関連するコンピテンシーを特定したら、次に、対象者の現在の強みと能力開発が必要な領域を評価します。可能であれば、アセスメントデータを利用するようにしましょう。アセスメントデータがない場合は、業績評価や組織文化調査など、組織からのフィードバックを参考にするとよいでしょう。これらのデータがあれば、組織の最優先事項である成果を達成するためにどの強みを活用し、どの弱みを強化すべきかを選択することができます。

 

4. 的を絞った能力開発目標と能力開発計画

問うべきこと:どのような行動が最善の成果をもたらすか?

リーダーが、コンピテンシーに基づく能力開発目標と能力開発計画を作成するのを、支援してください。リーダーのスキルを高めるために、トレーニングやコーチング、オンライン学習、職場実践の機会を提供することも有効です。リーダーの学習意欲やモチベーションを高め、持続させるために、定期的に活用できる学習プラットフォームや調査リソース、コーチングサービスなどを提供するのもよいでしょう。

 

5. 支援体制を構築する

問うべきこと:能力開発に対する意欲をどのように維持するか?

リーダーが能力開発についてどのように感じているかを確認します。能力開発を定着させるはどうすればよいか?リーダーは学習の機会を得たりツールにアクセスしたりするのに苦労しているのか、あるいは重要なスキルを実践するのに苦労しているのかといった課題を理解し、リーダーが直面している可能性のある能力開発への障壁を取り除く努力をしてください。そして、プログラムが軌道に乗っても、継続的に改善を重ねましょう。何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかをリーダーに尋ね、そのフィードバックを改善につなげてください。

 

初級・中級管理職に重要なコンピテンシーを特定する

では、自社で求められる初級・中級管理職のコンピテンシーを特定する方法について、もう少し掘り下げてみます。前のセクションでは、事業戦略に沿った独自のコンピテンシーの特定について解説しました。

それに加えて、あらゆる企業の初級・中級管理職に共通して求められる基本的なコンピテンシーを取り入れるとよいでしょう。ここでは、代表的なものをいくつか紹介します。

 

  • コミュニケーション
  • パートナーシップの構築
  • コーチング
  • 意思決定
  • 変革推進
  • 戦略実行

 

ただし、職場の状況やリーダーにかかるストレス要因は大きく変化しています(今後も変化し続けるでしょう)。そして、それにより、各領域における独自のコンピテンシーの重要性が増しているのです。MSC/DDIの「グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2021」調査(GLF)では、重要なリーダーシップの傾向や見解を提示しています。

 

本調査によると、危機の時代に成功するリーダーは、新しいスキルを迅速に身につけ、変化や不確実性を受け入れることができる人です。このようなスキルに長けたリーダーを有する組織は、直面するビジネス上の課題に対応する準備が整っていました。

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  • リモート環境においてチームを率いる
  • コーチング
  • 権限委譲
  • 共感(EQ)

 

しかし、リーダーが最も支援を必要としているコンピテンシーについては、新しいニーズに迅速に対応するために不可欠なスキルを習得できるよう、人事が注力しなければなりません。

 

  • 変化に対応する
  • 影響力
  • パートナーシップの構築

 

コンピテンシーに基づく能力開発により、リーダー各自がすべきことにピンポイントで焦点を当てる

最終的に、初級・中級管理職のコンピテンシーは組織で成功するための指針となります。また、明確な能力開発計画の作成にも役立ちます。そして、リーダーが優れたパフォーマンスを発揮し、次のレベルに進むために何をすべきかが明らかになります。その結果、離職率の低下、優れた人材の獲得、パフォーマンスの向上といったメリットも得られるようになります。

そしてこれは、自社のより良い未来への鍵となる、優れたリーダーを輩出する体制の構築にもつながります。自社のリーダーシップ・カルチャーを定義し、初級・中級管理職が各自の役割に応じて成長していくのを支援できれば、彼らが次のレベルに進む準備は整うでしょう。

これこそが、究極の競争力だと考えます。

原文はこちらをご覧ください。

 

執筆者

 DDI シニアコンサルタント

 Ruth Moskowitz, Ph.D,