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学校法人 早稲田大学 様

職員の力が大学を支える──現場起点の人材育成と挑戦

 

学校法人 早稲田大学 人事部長 大坪恭子様

  


2032年に創立150周年を迎える早稲田大学では、その先の未来を見据えた教育・研究の基盤づくりが進められている。使命は「世界人類に貢献する大学」であり続けること。その実現に向けて、研究・教育・貢献それぞれの柱を担う三つのグローバルセンターを整備し、現代社会が直面する「答えのない問題」に立ち向かう総合知を備えた人材の育成を進めている。こうした改革を支えるために、大学職員に求められることとは何か。そして、どう育成していくべきか。人事部長の大坪恭子氏に、弊社理事・シニアコンサルタントの三村修司が伺った。(文中敬称略)


 

  

大学の改革に資する、「変革力」と「協働力」を備えた職員を育成

三村:弊社がご提供する「ヒューマン・アセスメント」を中心に、御学とは30年以上のお付き合いをさせていただいています。少子化やAIの進展など、大学を取り巻く環境は近年大きく変わってきたと思いますが、まずは、大坪さんの考えるこれからの大学における理想の職員像について、お聞かせいただけますか。

大坪:大学職員は、「ルーティンワーク中心の事務作業を淡々と行っている」というイメージを持たれることもありますが、実際には単に業務を回すだけではなく、改善や改革を積み重ねながら大学の価値を高めていく役割も期待されています。そうした力を採用と育成の両面から伸ばしていきたいと考えています。

私どもでは2012年に、創立150周年に向けた20年計画「Waseda Vision 150」を策定しました。当時としては先駆的な取り組みだったと思います。「いま生まれた子が20歳になる頃、どのような教育が必要か」「大学はどのような研究をして、どう社会に貢献しているべきか」を思い描きながら中長期ビジョンを策定し、大学全体の組織目標と13の核心戦略を定めました。この核心戦略を実現するために、教員と職員が一体となってプロジェクトを推進しています。

三村:なるほど、大学の将来展開を見据えたビジョンをしっかりと掲げ、組織のベクトルを合わせて取り組もうとされているところですね。その中で、職員の方に求められることはどのようなことでしょうか。

大坪:大学が大きく変革していくなか、私たち職員も、そこにコミットしていく力が必要です。特に専任職員は一般企業でいう総合職にあたりますので、いわゆるディメンション(アセスメントの評価項目となる能力やスキル)については、一般企業の総合職に求められる力と同等レベルを目指す、というのが基本的な考え方です。

特に重要だと感じているのが、変革する力と協働する力です。田中愛治総長が学生に対して「たくましい知性」「しなやかな感性」「ひびきあう理性」によって答えのない問題を解決できる人材を育てると述べていますが、私たち職員側も同様に、そうした姿勢や力がなければ大学を変えることはできません。そうした考え方をベースに研修プログラムを設計しています。

三村:このところ一般企業でもリーダーに求めるスキルとして、「変革を推進する」「相互に協働する」スキルは強く訴えられています。しかし、これらのスキルを向上させることに苦慮する組織も多いように感じます。御学ではどのように育成を図っているのでしょうか。

大坪:最近では、育成を人事任せにせず、各部門が主体となり、自部門に必要な専門性とスキルを整理したうえで、部門単位でプロフェッショナルな人材を育成する取り組みを推進しています。

三村:どのような組織でも、各職場の方が当事者意識を持って育成に取り組んでいく仕掛けは重要ですね。

大坪:5万人規模の学生を抱え、学部や研究科の数も多いので、各々の職員が勝手に動いてしまうとエネルギーが分散してしまいます。大学は特に、「自分がやりたいことを追求したい」という傾向が出やすい組織でもあります。そのこと自体はとても重要で、教員は、それぞれの専門分野を深く掘り下げ、熱意を持って研究教育に取り組んでいます。職員も教員と協働する中で、研究教育への理解が深まることはとても大切だと思っています。一方で、教員と職員では役割が異なります。職員として担うべき役割については、折に触れ確認しておきたいところです。私は、職員は大学組織において“横糸”のように、部門をつなぎながら前に進める役割が大きいと考えています。

三村:他の大学や教育機関では「教職員」という言い方をされることが多いですが、おっしゃるとおり、「教員」と「職員」とでは立場やミッションが違いますよね。学内では相互の役割を理解し合いながら協働姿勢を示すことが重要ですね。

現場の課題を解決することが人事部の役割

三村:ここまでは、理想の職員の姿について伺いましたが、大坪さんの目から見て、現在の職員の方にもっとこうあってほしいとお感じになることはありますか。

大坪:おかげさまで優秀な人材も採用できています。ただ、最近の傾向なのか以前からなのか分かりませんが、無難にまとめようとして、難しい課題への挑戦に踏み出すことに慎重になる場面が時折見られます。

三村:恐らくそれは、業種・業態に関わらず最近の傾向かもしれません。そのようなとき、大坪さんはどのように対応されているのですか?

大坪:最近、私が特に意識しているのは、現場を第一に考える姿勢です。人事部のメンバーには、制度をつくって「これで運用してください」と言うだけではなく、現場で何が起きていて、何が課題になっているのかを理解したうえで、解決に向けて伴走しよう、と繰り返し伝えています。例えば、相談が来たときに、「制度上できません」で終わらせず、解決を目指して代案を一緒に考える。自分たちだけで難しければ、関係部署とも連携する。そうした姿勢が、結果的に信頼につながると思っています。

三村:今のお話は、一般企業においても人事部の窓口対応としては非常に重要なポイントですね。部長のお立場で、あるべき姿をしっかりと提示し、部下と向き合いながら自覚を促している姿が窺えますね。

大坪:組織規模が大きくなると、人事部が華々しく「新しい制度を導入しました」と発信しても、「現場は変わらないよね」といった興ざめ感が生じがちだと伺います。そうならないよう、気をつけたいと思っています。

三村:おっしゃるとおりですね。コストセンターとプロフィットセンターは、もっとお互いにリスペクトし合うべきだと考えます。ところが、「人事は現場のことを知らない」という現場サイドと、「規定に沿ってちゃんとやってください」という人事部サイドが、お互いに理解を示さないままギクシャクしている組織は少なくないと思います。

大坪:本当にそうですね。人事は、「自分は現場経験がないから分からない」で終わらせず、現場を分かろうとしてほしい。現場も、「人事には分からないよね」と突き放すのではなく、伝えることを諦めないでほしいと思います。

ミドルマネージャーの学び合いを促す「育成会議」を設置

三村:さて、実際の組織活動においては、どのようなことに注力されていますか。

大坪:肝になるのはミドルマネージャーだと考え、育成に力を入れています。メディアなどでも「管理職の負担が大きい」と言われることもありますが、最近は、若い人が管理職になることを敬遠する傾向もありますね。

三村:御学もそうですか。これは多くの企業でも同じような状況ですね。

大坪:はい、本学でもそうした声が聞こえてくることがあります。「自分にはできない」とか、「ワークライフバランスが崩れてしまうのではないか」と感じる不安を解消する必要があると思っています。ワークライフバランスについては、育児と介護は男女問わず誰にでも起こりうることですから、管理職であってもそれを犠牲にせず、両立できるようにする環境づくりを進めていくことが課題です。

三村:研修でお会いする受講者の方を拝見すると、組織的な支援は他の組織よりも進んでいる印象ですが、それでも課題は尽きないということですかね。

大坪:もうひとつは、管理職が一人で判断を抱え込みがちになることです。これを和らげる効果も期待して、2024年に、部門内で人事考課を共有する「育成会議」という取り組みを始めました。

三村:それはいいですね、現場レベルでの人事考課のすり合わせを行っているのですね。

大坪:はい。部門長の下、管理職同士で人事考課の目線合わせをしたり、評価スキルの学び合いをします。例えば、「なぜこの方はこのような評価なのですか?」「実はこういう背景があって…」「それなら評価を見直したほうがよいですね」「フィードバックが大事です」といったことを、部門長だけでなく、管理職同士で伝え合います。また、「自分の部下でこういう苦労している」といった悩みや課題も共有してもらいます。こうした対話が増えれば、「このメンバーはこういうスキルがあり、こういうキャリアを希望している」「では、次は〇〇課で育成するといいね」というように、部門内のジョブローテーションが進み、本人のキャリア形成や部門の強化につながると思っています。

三村:ご紹介いただいた現場での話し合いでは、人事考課の目線合わせができるだけでなく、部下のキャリア形成にまで繋げているところが素晴らしいと思います。同じような取り組みを「やってください」とお願いしてもなかなか実行できない組織が多いのが実態ですが、メリットは大きいと思います。

大坪:確かに工数が増え、管理職に負担がかかるので不安もありましたが、皆さん、前向きに取り組んでいただいています。

三村:大坪さんがおっしゃるとおり、管理職は一人で判断を求められる場面も多く、孤独になりがちです。しかも、さまざまな責任を負う立場になりますので、御学に限らず、若手が管理職になりたがらないのも理解はできます。背景には、管理職になることのステータスが昔ほど高くないことに加え、管理職の大変さばかりが目に付くこともあると思います。他の企業でも管理職研修に伺った際には、受講者に対して「管理職は大変だけど、やりがいもあるというところをぜひ見せてあげてください」とお願いしています。

大坪:達成感をどこで感じるかというところですね。一つは、部下の成長を見守り、支えることに喜びを感じられるようになると一人前だと思います。プレーヤーとして優秀な方が管理職になると、そこで迷うことがあるようです。自分でやったほうが速いからと仕事を抱えてしまいがちですが、特に新任管理職には、役割が変わるというところから丁寧に伝える必要があります。

三村:加えて最近は、管理職にも「失敗したくない」、「成果が出ていないと思われたくない」という意識が強くなっていることもあると思います。

大坪:失敗があっても、そこから立て直していく力が大切で、むしろ、リカバリーする力も能力になると捉えてほしいですね。

三村:おっしゃる通りですね。「失敗してもいいよ」と伝えながらチャンスを与えていくことが大事です。上司が何でも自分でやってしまう環境では、部下が育ちにくいという教訓もあります。

大坪:上司が我慢して待てるか、手を出したくなるのをこらえて見守れるかが問われると思っています。

育成目的で、若手層にアセスメントを実施

三村:先ほど触れた通り、御学では職員の方を対象に、弊社のアセスメントを30年以上ご活用いただいています。以前は、管理職登用前の方に実施されていましたが、現在では、入職7年目と12年目相当の方を中心に、比較的若い段階で受講いただいています。私も10年ほどメイン講師を担当させていただいていますが、毎回、個性豊かな方にお会いできるので楽しみにしています。(笑)。

他の組織と比較して早稲田大学は、個々人の持ち味を大事にされているように感じます。「個性豊か」というのは、いい意味です。

大坪:それは嬉しいですね。

三村:ただし、その分研修も一筋縄ではいきません(笑)。一般企業では、講師が「これは~です」と言うと、あまり質問が出ることはありませんが、御学では、遠慮なく「ちょっといいですか」「これは納得がいきません」という反応が返ってきます。担当講師としては何が出るかとワクワクしますが、それが楽しみでもあり、いい刺激を受けています。

大坪:その苦労は、私たちマネージャーも普段から感じています。私どもでは、アセスメントを育成目的で実施しており、さまざまな方に参加してもらっています。ですから、先生が「苦労しました」とおっしゃると、私たちとしては「やはりそうでしたか」と思うこともあります(笑)。他企業様とは活用方法が少し違うかもしれませんね。

三村:そうですか、想定内でしたか・・(笑)。ただ職員の皆さんは、やみくもに主張するのではなく、ロジックの裏付けがあってご自分の意見を率直に披露していきますね。皆さんの思考レベルは全般的に高いと感じます。

実際にアセスメント研修の効果については、いかがですか。

大坪:一番のメリットは、気づきが得られる点です。上司から普段言われていることとは違う観点でご指摘を受けますし、同世代と切磋琢磨するハードな研修なので、刺激になります。本人にとってのベンチマークにもなり、他者のよい点や反面教師になる点を学び取って戻るので、非常に意義があると思っています。私は、教育の基本はOJTであり、その中に効果的にOFF-JTが入るのが理想だと考えています。その意味で、アセスメントはとても助かっています。

三村:ありがとうございます。おっしゃるとおり、人材育成の基本はOJT・現場ですよね。OFF-JTとしてのアセスメントは、普段の現場と異なる環境下で能力のストレッチをしていただくことが大きな特長と言えます。

大坪:また、御社に作成していただく個人別のフィードバックレポートは、管理職を通じて本人に渡しますので、管理職もその内容を把握します。それを用いて1on1の面談も行い、「この点を課題にしようか」などと、上司と部下のコミュニケーションにも活用しています。そうした情報提供が、本人の育成支援や目標達成に向けたきっかけづくりになればと思います。

「決断力」とは、自分の意思を持つこと

大坪:三村先生から見て、まだ課題だと思われるのはどのような点ですか。

三村:実は1点気になることがあって、ディメンションで言うと「決断力」です。もっと職員の皆さんは、自らの意思を明快に述べてもいいと思うことがあります。皆さんの意識の中には、教員が意思決定を担い、職員がそれを支えるという役割分担があるような気がします。

大坪:大学業界全体の課題かもしれませんね。多くの大学では、役員のほとんどが教員なので、実際にはそうでなくとも、「意思決定は教員、職員は実務を担う」という構図として受け止められがちです。決断が苦手というのは、全世代共通の課題とも感じます。決断力を身に付けるには、どうしたらよいのでしょうか。

三村:決断力というのは、権限があるかどうかが問題ではなく、表明するか否かは別にして、自分の意思を持つということです。たとえ組織運営上、上司の指示に従うことはあっても、「自分ならこうする」という意思を持ち、自分なりの裏付けや根拠を積み上げ将来展開を予測する訓練をしていくとよいと思います。

大坪:上層部の決定にただ従うだけではなく、日ごろから自分で考えるということですね。

三村:そうです。私はコンサルタントになって30年、多くのリーダーや管理職の方を見てきましたが、課長や部長にスムーズに昇格していく方と、苦労する方とに分かれます。すんなり昇格される方は何が違うかというと、日ごろから自分の上司を観察し、「自分だったらこうする」と意思決定のシミュレーションを行っているようです。そうすることにより、アセスメントで疑似体験を行う際にも、自らの判断で物事を決定し意見を言い切れるのだと思います。メンバーを惑わせず、意図する方向に他者を導き成果を挙げる。そうした習慣が「決断力」の醸成に繋がると考えます。

大坪:なるほど、とても参考になります。

現場評価とアセスメントの評価の違いを認識する

三村:毎年御学に、アセスメントの報告に伺う中で感心することがあります。それは、人事の皆さんが、現場評価とアセスメントの評価が食い違うとき、なぜなのかを話し合っていらっしゃることです。実は、アセスメントの評価と現場評価は、どのような組織でも3割程度は食い違うものです。現場では、本人の経験値が上がれば自然と成果が上がり、評価も上がる場合が多いと思います。一方、アセスメントは、全く未知の環境におけるシミュレーションで能力の再現性を見ています。すなわち、影響力、分析力、判断力などの普遍的な能力を診断していきます。人事の皆さんは、それらのことを踏まえながら「彼には違った側面がある」「有効な活躍の場は・・」と議論されていることが、とてもいいなと感じています。

大坪:アセスメントの評価を疑っているわけではなく、どちらを否定しているわけでもありません。研修に強いタイプもいれば、アセスメントで測定するディメンションが得意な方もいますし、日ごろの業務では能力を発揮しづらい立場の方もいます。ですから、だからこそ、なぜ差が生じるのかを丁寧に話し合っています。そこから新しい発見につながることもあります。

三村:現場評価とギャップが発生するからこそ、三者評価であるアセスメントには価値があると考えていただくとよいと思います。メンバーをご覧になるとき、日ごろの仕事ぶりだけでは、実は一面しか見えていないのかもしれません。密かに隠れた才能があったり、いろいろな事情でパフォーマンスを発揮できない場合もあるでしょう。アセスメントによって違った側面からスポットライトを当てることで、初めてその方の全体像が見えるのです。

大坪:たしかにその通りですね。

敬意と思いやりを持って育てていくことが人材育成のベース

三村:大坪さんご自身の教育論や、人材育成に関する考え方、モットーとされていることなどがあれば、お聞かせいただけますか。

大坪:少し人事らしくないかもしれませんが、最終的には、人への敬意や思いやりが土台になると思っています。厳しいことを伝えるときも、「この人に成長して欲しい」という気持ちを持って向き合うことが、育成の出発点だと考えています。そうした思いをもって、必要な時にはいうべきことを言う。ただ、言い方ひとつで受け取り方は変わりますので、伝えっぱなしにせず、フォローまで含めて対話することを大切にしています。私自身も努力を継続していく立場ですが、管理職一人ひとりがそうした関わり方を身に付けていければ、組織全体の力も上がりますし、そうして育てられた方が次の世代に同じようにつないでいく、そうした循環がつくれたらと思っています。

三村:まさに核心部分ですね。上司がしっかりと愛情を持って部下を育てていくこと、理想を語り、時には厳しいことも言うというのは、重要なことですね。

大坪:特に年次が上がると、誰も指摘してくれなくなるのですよね。管理職の方から「部下に言うべきか迷っている」という相談を受けることがありますが、私は「言ってあげられるのは、あなたしかいないですよね」とお伝えしています。「上司である自分の役目」として言うべきことは言う意識を持っていただけるよう背中を押すようにしています。

三村:最近は、ハラスメントを恐れて言いたいことが言えない管理職が多いようですが、大坪さんがおっしゃるように、日ごろから愛情を持って親身に接していれば、いざというときに多少厳しい言い方をしても、ハラスメントになる可能性は低いと思います。

人にしかできない仕事を考え、そのために必要な力を鍛える

大坪:今お話ししたのは管理職側の話ですが、もう一つ、三村先生もおっしゃったとおり、職員には自分で考えて行動する力も大事だと思っています。特に今は生成AIが発展していますので、若手にはよく「これからの時代に、職員にしかできない仕事は何だと思う?」と問いかけています。AIを取り入れたほうがよい部分はどんどん変えていくべきで、DX推進の一環として生成AIの活用も進めていますが、その一方で、人にしかできない仕事を考え、そのために必要なものを身に付けていくことが重要です。

三村:おっしゃるとおりですね。AIは、これからもさらに発展します。自分で考え、自分で行動する「自律性」を人間が失ってしまうと、AIに置き換えられてしまいます。

大坪:大学というのは、教員、学生、そして職員がいて成り立つ場所ですから、人と人との関わりがなくなることはありません。そのコミュニケーションの中で生まれるプラスもマイナスも含めて、私たち職員は携わっていくことになるのだと思います。そこで最後に残るものの一つは、理性だけでなく感性を備えた交渉力や調整力を含むコミュニケーション力など、機械やAIには代替することが難しい部分だと思います。だからこそ、一人ひとりが自分で考えて、自律的に行動できることが大切です。先ほどの話にもありました通り、言われたからやるのではなく、自分で考え目的を持って行動できる人材に一人ひとりがなることが重要ですよね。

150年のその先へ――理想を高く掲げながら取り組んでいく

三村:御学でのビジョンへの取り組みは、現在、「Waseda Vision 150 and Beyond」に進化されていますよね。

大坪:はい。「2040年には日本で、2050年にはアジアで最も学ぶ価値のある大学になる」という宣言をしました。

三村:実に大きな目標ですね。御学のビジョンには、グローバルな視点があり、スケール感が違いますね。

大坪:ビジョン実現のためには、視野を広げ、アンテナを高くして、外に目を向けていくことが大事だと思っています。理想を掲げつつも、現場での積み重ねを大切にしながら、一歩ずつ進めていきたいと考えています。

三村:毎回、研修の場で職員の方を拝見していても、近年は多様性を強く感じます。学生さんもそうでしょうし、卒業生の方もグローバルに活躍されていますよね。

大坪:英語で行う授業だけで卒業・修了できる英語学位プログラムを持つ学部が6、研究科が15ありますので、留学生はかなり増えています。キャンパスを歩いていても日本語以外がよく聞こえてきて、10~20年前とはだいぶ変わったと感じます。教員も、日本語と英語の両方、または英語のみで授業を実施できる方も広く採用していますので、私たち職員も、それに対応していく必要があります。

三村:大坪さんのお話を伺って、御学は、大きな目標に向けて組織を変革し、個々の強みが活かされる土壌を作り出されていると感じました。今後も引き続き人材育成の面でお手伝いさせていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。


対談者プロフィール

学校法人 早稲田大学 人事部長
大坪 恭子 氏
1992年に早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、同大学に勤務。社会人入学した東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策コース修士課程を2009年に修了。人事部調査役、総長室渉外局調査企画担当課長、総長室募金課長、総長室秘書課長、総長室副室長、政治経済学術院事務長等を経て、2022年より現職。

株式会社マネジメントサービスセンター 理事コンサルタント
三村 修司
官庁系・金融系システムでSEを経験後、1996年当社に講師として入社。執行役員・取締役を経て、現在は当社理事。多分野にわたる数多くの企業(公共機関を含む)で、経営者から管理者、若手リーダーまでの各層で人材育成や診断評価に携わる。現場の実態に合わせたカスタマイズと、実践的な能力診断や率直なフィードバックが定評。 担当クライアントは、金融・メーカー・鉄道・エネルギー・IT・マスコミ・大学・官公庁と多岐に渡る。