シャープ株式会社様
経営の変革期に「人材育成の再始動」を ~シャープの次世代を担う経営幹部・ミドル層の育成ストーリーとアプローチ~
シャープ株式会社 人事総務統轄部 統轄部長 宮川 直之 様
「ひとの願いの、半歩先。」——2025年に新たなコーポレートスローガンを掲げ、変革への歩みを加速させているシャープ株式会社。2024年には沖津雅浩氏が代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)に就任し、人への投資の強化が2025年に公表の中期経営計画の核に据えられました。 その一方で、経営危機に育成投資が滞った影響は大きく、次世代の経営幹部候補者の層は十分とはいえない状況にあります。では同社はいかにして「人材育成の再始動」を図り、未来を担うリーダーを育てようとしているのでしょうか。 シャープ株式会社 人事総務統轄部 統轄部長・宮川直之氏と、次世代経営幹部育成を支援した株式会社マネジメントサービスセンター(以下、MSC)のエグゼクティブコンサルタント・辰口健介が、その取り組みの実像を語り合いました。(以下敬称略) ※取材:2026年2月
経営危機を経て、改めて「人材育成」に向き合う
辰口:まずは、シャープ様の現状についてお聞かせください。2024年に沖津社長が就任されて以来、人材育成に向けた動きが加速していると伺っています。
宮川:2010年代の前半から経営危機に直面し、それ以降、人材育成への投資が停滞していたのは事実です。しかし、沖津が就任してからは「人材育成を再び戦略的に推進したい」という強い意思が示され、リーダー育成を本格的に再開することになりました。
昨年の2025年に策定した中期経営計画においても、次世代経営幹部育成をはじめとする人材育成の取り組みを明確に掲げています。ただし、今はまだ土台づくりの段階というのが率直なところです。

辰口:中期経営計画を拝見すると、「人への投資」が経営の大きな柱として位置づけられていますね。そこに至るプロセスでは、トップの意思が相当強く働いたのではないでしょうか。
宮川:経営陣には、人への投資の注力が弱まっているという共通の課題感がありました。その議論の中で、持続的に会社を成長させていける人材こそが成長のドライバーに欠かせないという結論に至りました。多くの企業が抱える課題だと思いますが、当社も社内の人材構成の歪みが生まれており、特に次を担うミドル層が薄い状況です。
だからこそ、人材の確保と育成の両輪を回していくことが、今後10年・20年を見据えたときに不可欠な取り組みだという経営の強い想いがあり、それを中期経営計画に明記しました。社外に向けてだけでなく、社員への意思表明の意味を込めています。
辰口:ご支援させていただく中で印象的だったのは、10年先を見据えて「シャープらしさ」と「将来に向けた変革」の両立をどう考えるのかという問いに、正面から取り組んでいらっしゃった点です。当時の経営陣とのディスカッションは、まさに言語化の場でしたね。
宮川:まさにその通りです。2025年9月には「ひとの願いの、半歩先。」という新しいコーポレートスローガンを策定しましたが、これは50年以上大切にしてきた経営理念と経営信条をベースに当社の企業姿勢や事業活動を通じてお客様にお届けする「シャープらしい価値」を表現したものです。ただ、コーポレートスローガンを掲げるだけでなく、それを実績として積み上げていくことが大切です。人材育成も同様で実績を積み上げることが大切だと考えています。人材要件を設定するだけでなく、それを充足する人材を実際に育成し、事業を牽引していただくことを、組織として続けていかなければなりません。
ビジネス・ドライバーを起点に、人材要件を定義する
辰口:「シャープらしさ」を体現し、成長し続けるために重要なのが、次世代経営幹部候補のアセスメントと育成です。今回ご活用いただいたのが、MSCの「ビジネス・ドライバー」というアプローチでした。これは、組織の戦略的・文化的優先事項を成功裏に実現するために、経営幹部が解決しなければならない主要なビジネス課題のことです。 MSCではパートナーである米国のDDI社とともに、29のビジネス・ドライバーを設定しており、企業の戦略に応じて3〜4つを選択することで、それに紐づくコンピテンシー(行動特性)が自ずと定まる仕組みです。コンピテンシーに基づく行動が定義されているため、測定・評価もしやすくなります。実際にご活用いただく中での感想を教えてください。

宮川:ビジネス・ドライバーを起点とするアプローチは、次世代経営幹部候補の人物像を言語化する非常によいきっかけになりました。これまでは、役員同士で求める人材像について議論する場がほとんどありませんでした。それをMSC様に支援いただきながら議論を進めたことで、役員それぞれの考えが言語化され、共通認識としてまとまりました。
将来的にはアライアンスやチームイノベーションにつなげていかないと会社の成長はない、という課題認識を全員が持っていることがわかり、それが共通の議論の出発点になりました。これは、社内登用はもちろん、外部から人材を採用する上でも活かされると確信しています。
辰口:ビジネス・ドライバーをもとに人材要件を定義した後、次世代経営幹部候補のアセスメントを実施しました。その効果をどのように実感されていますか?
宮川:育成・登用に活用していくことができる、ということを実感しました。次世代を担うリーダーはいるけれど、いざ今後の育成・登用を検討するとなると何も指標がない状態ではなかなか難しい。そうした状況だったからこそ、アセスメントによって候補者の現状を客観的に把握できたことは大きかったですね。アセスメント結果は経営幹部にも共有し、今後の育成や登用の判断に有効活用しようとしています。
辰口:アセスメントを通じて、経営陣が後継候補の現状を把握できるようになるとともに、対象者本人にとっても成長に向けた内省の機会になりますね。
宮川:そうですね。現在、選抜したメンバーは、本部長など事業を牽引するポジションについています。リーダーシップ研修を受けながら、事業の責任者としてどれだけ新しいことに挑戦し、組織を牽引していけるのかを見極めている段階です。人材育成は一足飛びにはいきませんが、着実に前に進んでいます。
この後、下記のトピックが続きます。
- 「シャープらしさ」を体現し、成長を続けるために重要な2つのアプローチ
- エンゲージメントサーベイから見えてきた組織課題とは?
- 組織のサイロ化を防ぐための打ち手
- データ活用を見据えた、人材育成の展望
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。
対談者プロフィール

シャープ株式会社 人事総務統轄部 統轄部長
宮川 直之 氏
1993年、シャープ株式会社に新卒で入社。以来、30年以上にわたり労務・人事業務に従事。事業本部の人事として、労働環境の改善から人事評価制度をはじめとする社内制度の運用、海外拠点の人事制度改革など幅広く経験。その後、人事総務部長を経て、2019年に本社の人事部長に就任。現在は人事総務統轄部 統轄部長として海外を含むシャープ全社の人事を統括している。

株式会社マネジメントサービスセンター エグゼクティブコンサルタント
辰口 健介
慶應義塾大学環境情報学部卒。Raymond A. Mason School of Business (William & Mary) MBA修了。外資系コンサルティングファーム(マネジャー)、人材サービス会社(人事部長)等を経て現職。専門領域は、サクセッションプランニング、エグゼクティブ層を対象としたアセスメントおよびコーチング。日米のビジネス経験と事業人事の経験を活かして、事業戦略と人事戦略の連動性を高めるコンサルティングを行っている。Hogan Assessment認定資格者。
- 社名
- シャープ株式会社
- 設立
- 1935(昭和10)年5月
- 創業
- 1912(大正元)年 9月15日
- 資本金
- 50億円
- 社員数
- シャープ連結:35,263名
- 事業内容
- 電気通信機器・電気機器及び電子応用機器全般並びに電子部品の製造・販売等