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アストラゼネカ株式会社 様

アストラゼネカ株式会社 様

アセスメントは育成面の効果も大きい。今後は “自律的に考えて行動する人材” を育成

人事本部 HRシニアビジネスパートナー 田村千草(たむら ちぐさ)様〔画面右〕
HRビジネスパートナー 新井昌子(あらい まさこ)様〔画面左〕



「サイエンスの限界に挑戦し患者さんの人生を変える医薬品を届ける」をミッションとするイノベーション志向のグローバル製薬企業、アストラゼネカ株式会社は、営業部門のマネジメント強化を目的に、2017年からディストリクトマネジャー(地区拠点長。以下、DM)候補のMR(医薬情報担当者)と支店長候補のDMに対して、弊社のヒューマン・アセスメント(HA)とトレーニングを実施している。2020年には、新型コロナウイルス感染症対策として、いち早くリモートでの実施に切り替えた。同社の田村様と新井様に、弊社のアセスメントを採用した理由、オンライン化の経緯、今後の能力開発の方向性などについて、コンサルタントの大川徹が伺った。(文中敬称略)


客観性を重視し、昇格判定などに外部のアセスメントを再導入

大川:御社は、以前にも弊社のアセスメントを導入し、2017年に再開していただきましたが、当時、どのような課題感をお持ちだったのですか。

新井:以前も支店長候補やDM候補などのアセスメントをお願いしていましたが、その後、昇格のアセスメントを内製化していました。ただ、2017年10月に営業部門の組織を大きく変え、3事業部体制にした際に、まとまった数の管理職登用を行う必要が生じました。一定の人数を昇格させるうえでは、客観的な指標で判断が必要であることと、将来的に事業本部間での配置転換も想定していましたので、どの事業本部も同じ基準を満たした人を登用するため、外部の客観的アセスメントを導入することにしました。

大川:アセスメントの対象とされている職位はDM候補ですか。

新井:そうです。それとは別に、支店長候補にも実施しています。

カルチャーやニーズに合わせたカスタマイズが決め手

大川:アセスメントを提供する会社はたくさんありますが、当社をお選びいただいた一番の理由は何ですか。

田村:内製で実施していたときは、いわゆるビジネススキルを測るものでした。しかし、現場に出ると、いろいろな環境要因があり、本質的なスキルやナレッジが身に付いていないと応用が利きません。そういう部分をしっかりアセスメントしていただきたいと考えました。

大川:表面的な知識やスキルではなく、根幹の部分ですね。

田村:はい。同時に、当社のカルチャー、バリューに即した形でアセスメントを提供していただけることも求めていました。

新井:3社ほどにお話をお聞きしましたが、当時定めていた弊社独自の「リーダーシップコンピテンシー」とアセスメントをリンクさせたいと考えており、カスタマイズ可能なMSCさんにご依頼したという経緯があります。加えて、繰り返し実施してデータを蓄積できると見たいものが変わってくるはずとも考えたためカスタマイズができることは重要なポイントの一つでもありました。

大川:弊社は、お客様に合わせてカスタマイズするのが持ち味の一つですが、見方を変えると、「リーダーシップはこうあるべき」という打ち出しは弱いかもしれません。その点に物足りなさはありませんか。

田村:リーダーシップ論は世の中にたくさんありますよね。ただ、「これが正解」というものは存在せず、環境によって変化してしかるべきだと思います。また、その会社ごとの色が強く出ます。私たちも「当社におけるリーダー像」をバリューに織り込んでいます。それに対して「あるべき姿」を問われた場合、そこに1ミリでもズレがあると、参加者に違和感が残ります。ですから、色が出過ぎず、でもしっかりと診断していただけるのは、我々のニーズに合っていました。そして、アセスメントを受けながら、マネジャーとして必要なスキルや行動、リーダーシップを学べるのがベストだと考えました。

大川:なるほど。アセスメントを受けながら、あるべきリーダー像を浸透させていくことも狙っていたのですね。

新井:それと、御社はトップカンパニーのデータを豊富に蓄積されていますよね。当初、外部のアセスメントをあまり信頼していなかった人もいましたが、一定のクオリティでトップカンパニーのアセスメントをされてきた統一基準で実施いただけることも説得材料になりました。

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選抜の基準としてだけでなく、育成面の相乗効果も

大川:そうしたご期待をもって導入いただき、実際に実施してみていかがでしたか。

新井:導入してよかったです。というのは、客観的にアセスメントをするだけではなく、参加した本人の課題意識や強みの理解が深まったのです。育成の面で最適なプログラムをご提供いただきました。本来であれば、上司が部下に対してそういうフィードバックをできるのが望ましいですが、皆が完璧にできるわけではありません。2日間、さまざまな演習に取り組み、能力開発の課題が明確になるのはとても有意義です。

大川:選抜という目的ではなく、育成面での効果を重視されているわけですね。

新井:はい。参加者にも、「育成目的で実施しています」とはっきり伝えています。

田村:上司は、優秀なMRを育てることには日々全精力を注いでおり、一定の効果が出ています。けれども、優秀なDMを育てることについては、自らがDMの立場のなかで、正解がどこにあるか認識にバラツキがあることは否めません。アセスメント結果をフィードバックしていただくと、部下の改善ポイントが上司として明確になります。フィードバックは上司にとっても宝物です。

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人事が積極的に関与し、現場の理解を促しながら運用

大川:育成効果があるのは、人事から現場へのフィードバックが手厚いことも大きいと思います。アセスメントを受けさせてレポートを本人に渡して終了という会社も少なくないですが、お二人は非常にきめ細かい現場フォローを実践されています。

田村:そう言っていただけると有難いです。

新井:今は受け止めてくれていますが、最初の頃は現場に受け入れてもらうことが難しいと感じることもありました。

田村:現場の管理職は、優秀なMRを選出しているので、結果が期待通りにならなかった際に反発を受けることもありました。

大川:今は変わってきましたか。

新井:MSCの講師の皆さまから頂いたフィードバックや、私たちHRBPが観察した行動などを上長にフィードバックすることを繰り返すことで、結果の信頼性を高める努力をしてきました。そういった試行錯誤を繰り返すことでアセスメントへの信頼が徐々に高まってきました。

田村:現場の管理職は、「初めから完璧な人はいない。多少欠けるところがあっても周りが補い、独り立ちさせる」と言います。アセスメント結果と営業統括部長の面接を組み合わせ、最終的に昇格を決定しています。

大川:上司の支援が重要ですね。

田村:ええ。実際、現場では、新任マネジャーに対して手厚く面倒を見てくれています。

大川:そうやって現場の方々に動いてもらうことは簡単ではありませんが、どんなアプローチをされてこられたのですか。

新井:現場の方はよく、「人事は何もしてくれない」とおっしゃいますが、育成の責任はラインにあるというのがアストラゼネカの考え方です。それをことあるごとに伝えてきました。

大川:粘り強く伝え続けたのですね。御社はお二人がご尽力されて、HRBP(HRビジネスパートナー)の仕組みがうまく機能していると思います。

新井:ありがとうございます。今回のアセスメントでも、私たちがすべての演習を見学させていただき、受講者の発言や行動を支店長の皆さんに伝えることができました。

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指示待ちではなく、自律的に考えて行動する人材を育成

大川:現場に対するお二人の懸命の働きかけで、ここまで来られましたが、一方で課題はありますか。

新井:どうフォローアップに関わっていけるかという点は課題感を持っています。
この3年間のアセスメントの蓄積を見ると、当社の特徴が出ていると思います。アクションは早いけれども、一方で考えることに課題がある。上司が考えさせるように働きかける必要がありますが、上司も優秀な営業として活躍してきた方が多いため、「考えさせる」を意識して部下と対峙することが求められます。

田村:昔は量とスピードがあれば成果が出る時代だったかもしれませんが、コロナ禍のような激しい環境変化に晒されるようになり、これまでの経験が通用しなくなり、考え抜かなければ成果が出にくい時代になりました。今後さらに、会社の指示で動く人ではなく、自分たちで考えて動く人が求められると考えています。

大川:御社は2021年4月を目途に支店・営業所の閉鎖を予定されています。営業所の全員がリモートワークになると、上司は目的・目標と求めるアウトプットを明確に伝えなければならなくなります。こまめに作業指示を出し、軌道修正をかけることができませんので。逆に部下は、自分で考えて動かなければならない。コンセプチュアルスキルの強化がより一層重要になりますね。

新井:オンコロジー事業本部では、御社に影響力、分析力、計画・組織力の強化をお願いしています。私と田村の事業本部では、他のビジネススクールのクリティカルシンキングの3ヵ月コースで思考力の強化を図っています。

大川:まずは基礎体力をつけていらっしゃるのですね。

田村:体系立てて認識できていないと、応用が利きません。一朝一夕に身に付くものではないので、地道に続けていきます。

大川:進めていくうちに共通言語になり、組織に浸透していくと思います。

新井:支店長候補のアセスメント後に、コンセプチュアルスキル強化のためのフォローアップ研修をしていただいたのですが、その際に、「皆、バリューが大事だと語るが、自社のバリューが腹落ちしていないのではないか。バリューを日常の言葉として語れているか」という問いかけがありました。これは大きな問題だと思います。日々、上司たちがバリューに即して行動したり、問いかけを行ったりしていれば、部下も変わってくるはずです。経営陣はバリューに即して語るのに、その下の層になるとそれが薄れている。MRの育成だけでなく、その上の層の強化が必要です。

田村:営業のマネジャーがビジョンを語るとき、「営業」の世界に考えがとどまってしまい、全社視点が抜けてしまう傾向が見られます。自分たちで枠を狭めてしまっているように感じます。アストラゼネカのマネジメントとしての意識転換を図るよう働きかけしっかりと浸透させていく必要があります。

大川:そもそも支店長や部長として、バリューに基づいて何を成し遂げたいかが大事ですよね。それがないのにスキル云々と言っても話になりません。私も他社で部長候補のトレーニングやパーソナルコーチングなどに従事していますが、「そもそも方針って何ですか?」などと聞かれることもあり、ビジョンや方針を打ち出すことに戸惑いを感じる管理職も多いと感じています。

新井:弊社の事例で言うと、営業のマネジャーに方針を立ててもらっても、「トップシェアを取る」といった方針が出てくることが多いです。

大川:トップシェアを取ってどうしたいか、取ることを通してどんな組織にしたいかが大事なんですけどね。今回の支店・営業所の閉鎖は、考え方を変える良いきっかけになる気がします。

新井:新しい働き方を模索する良いタイミングだと思います。

田村:時代が変わり、いろいろなことを変えていかなければなりません。当社でも、現代は「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)」だと言われていますが、本当に腹落ちして「変わらなければならない」と言えている人は多くありません。でも、こういう環境になると、行動や考え方を変えざるを得ませんし、違う行動や考え方を受け入れざるを得ません。

 

オンライン化にはメリットも多い

大川:そういう意味では、御社は、このコロナ禍において、アセスメントやトレーニングのオンライン化をいち早くご決断いただきました。「スピード」や「チャレンジ」は御社を表すキーワードですね。

田村:当社はヘルスケアカンパニーです。人の命を助けるために働く会社の社会的責任として、一気にシフトチェンジしました。また、当社では毎年、グローバルのトップマネジメントや各ファンクションのリーダーたちが世界中から集まる機会がありますが、昨年あたりから「リモートでよいのでは?」となりつつあり、そのためのインフラ整備も進めていました。

大川:今の状況を見越していたかのような動きですね。

新井:アセスメント参加者の柔軟性も高く、適応力を感じました。オンラインにして良かったのが、子どもを持つ女性など事情を抱える人が参加しやすくなったことです。フォローアップのマネジャー向け研修でも、移動がなくて楽だという声がありました。チャットを使うことで参画意識も持てます。オンラインにも良い面があると思いました。

田村:集合研修では後ろのほうの席の人は物理的な距離がありますが、オンラインだと目の前に講師がいて常に自分に語りかけてくれますので、参加モチベーションも集中力も高まる印象を受けました。

大川:オンラインのほうが議論が盛り上がる傾向もありましたね。ツールも日々進化しています。人事担当がアセスメントの様子をしっかり見られるのも、オンラインの良さかもしれません。対面だと、人事の方々がドアを開けて部屋に入ってきた瞬間、参加者に緊張が走ります。

一方で、オンラインで実施するうえで苦労した点やオンラインだと実現しづらいことはありますか。

新井:慣れるまでは資料の準備が少し手間でした。ただ、想定以上にうまくいきました。今は、実際の上司・部下の面談もオンラインになっていますので、リアルさがあってむしろよいと思います。

田村:人事としては、休み時間のちょっとした会話から拾えるものが結構あるんです。対面の場合、そうした機会に受講者の理解度や納得性を確認して講師にフィードバックできますが、オンラインではそれが難しい。ただ、本人たちの参画意欲は高く、負の側面ばかりではありません。当初は「対面でないと表情が読み取れない」という話もありましたが、だんだん皆さん、それが当たり前の日常になってきて、十分読み取れるようになりました。

一つあるとしたら、懇親会ができないことです。皆さん、そこだけは不満を言っていました。

大川:オンラインでもガス抜きやリフレッシュの機会はあってよいかもしれません。終了後に2時間くらいオープンにしておいて、オンライン飲み会をしている会社もあります。

御社としては、集合研修が可能になってもオンラインで継続されるお考えですか。

新井:オンラインでよいのではないかと思います。本当に集合でやるべき研修というのは、おそらくそんなにありません。

田村:グローバルの研修もバーチャルになってきていて、そこで身に付けられないものはないというくらいの感覚です。

上司が部下を確実に育成できるようにサポートしていく

大川:今後、当社にどのようなことをご期待いただけますか。

新井:蓄積した結果を分析し、データを基に、トレーニングのプランや傾向分析などの示唆をいただけるとありがたいです。

田村:それによって我々が次に何をしていくべきかが明確にできると、もっとHRの質を上げられます。

大川:傾向を踏まえ、「個々人のニーズに合ったトレーニング」を、より的確にお示しできるといいですね。

新井:どのマネジャーも部下を確実に育成できる環境を整えたいと思っています。長い旅になりそうですが、アセスメントをきっかけに、マネジャーの部下育成の引き出しを増やしていきたいです。今年、評価制度を変えますので、それも踏まえながら取り組んでいきます。

田村:まだまだ上司に対してマネジャーとしての能力開発のツールを提供しきれていないと考えています。皆さん、アセスメントのフィードバックを踏まえて部下をフォローいただいていますが、どう育成すればよいか正解が見えないなかで苦労しています。コロナ禍を経て、部下のマネジメントスタイルも変化が求められると思います。マネジャーの皆さんに様々なツールを提供することで、新しい服を身に着けさせたいですね。

大川:そこはぜひ、当社にも尽力させてください。新しい服を少しでも仕立てられるよう頑張ります。本日はありがとうございました。

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(聞き手:コンサルタント統括本部 チーフコンサルタント 大川 徹)


対談者プロフィール

アストラゼネカ株式会社 人事本部 HRシニアビジネスパートナー
田村 千草氏
大学卒業後、国際交流団体等を経て、1999年より外資系企業にて人事のキャリアをスタート。2015年8月にアストラゼネカ株式会社にHRシニアビジネスパートナーとして入社し現在に至る。

アストラゼネカ株式会社 人事本部 HRビジネスパートナー
新井 昌子氏
大学卒業後、MR(医薬情報担当者)としてアストラゼネカ株式会社に入社。2007年9月に社内公募を経て、人事総務本部の採用担当として異動。その後、ダイバーシティ推進室、人材開発に従事し、現職のHRビジネスパートナーに至る。

株式会社 マネジメント サービス センター チーフコンサルタント
大川 徹
神戸大学発達科学部(現国際人間科学部)卒。メーカー系システムインテグレーター、総合人材サービス企業、大手私鉄を経て2013年にマネジメントサービスセンターに入社。アセスメントを通じたリーダーの能力診断をはじめとし、各種トレーニングや経営幹部向けのパーソナルコーチング、組織開発など様々な手法を組み合わせて組織・人材開発ソリューションを展開。クライアントの実情に合わせたリアリティのある提言に定評がある。

会社名
アストラゼネカ株式会社
発足
2000年1月1日発足(設立1975年4月11日)
資本金
20億円
社員数
約3,000名
事業内容
医療用医薬品の開発、製造および販売