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採用プロセスにおける暗黙のバイアスを克服する方法

採用プロセスにおける暗黙のバイアスを克服する方法

採用は、限られた情報に基づいて人を素早く判断する、非常に主観的なプロセスです。しかし、採用時に発生する暗黙のバイアスは軽減させることができます。このコラムでは、採用プロセスにおける暗黙のバイアスを克服する方法と、それを減らすことにより得られるメリットをご紹介します。

 

採用時の暗黙のバイアスとは

暗黙の、あるいは無意識のバイアスは、脳が人や状況を素早く判断したり評価したりするときに起こります。そして、良い意味でも悪い意味でも、私たちの態度や行動に、日々影響を与えています。人種、性別、性的指向、宗教、障害などに関連したバイアスに加えて、見えにくいバイアスもあります。例えば、生まれた場所と現在住んでいる場所を比較して人を判断することです。

 

暗黙のバイアスが最も頻繁に発生する場面の一つが、採用プロセスです。認知心理学者のダニエル・カーネマンは、著書『ファスト&スロー ―あなたの意思はどのように決まるか?』(原著 Daniel Kahneman. Thinking Fast and Slow)の中で、人間の性質上、意思決定には隠れたバイアスが入り込みやすいと指摘しています。例えば、履歴書を見るとき、私たちは、熟慮・熟考(遅い思考=スロー)で判断する要素もありますが、何百もの要素を直感的な思考(速い思考=ファスト)で、多くの場合無意識のうちに判断しています。そのため、差別を避けるべく熟考しようとしても直感的思考が作用し、差別が容易に入り込んでしまうのです。そして、直感的思考は、私たちが生まれたときからの経験や環境によって形づくられた、何千もの先入観や固定観念が基になっています。

つまり、候補者の業務遂行能力とは関係のない要因で、日々、採用・不採用が決まっているのです。最近、経営幹部の採用を検討していたある中堅企業では、「優良」企業出身者から応募があり、盛り上がりました。しかし、彼を採用した理由はすべて間違っていました。そして、3週間後には彼を解雇しなければなりませんでした。これは、「パズルのピースを間違った場所にはめ込んだときのように、間違った場所に人材を配置してしまった」と言うべき例です。

 

採用の判断に影響を与える5つのバイアス

採用の判断に影響を与える可能性のある暗黙のバイアスには、5つの種類があります。

 

1. 親近感バイアス(親和性バイアス)

親近感バイアスとは、例えば同じ大学の出身者や同じ町で育った候補者など、自分と似たような人を好意的に見るという無意識の傾向のことです。また、自分に似ている候補者や、自分が好きな人に似ている候補者と意気投合するのもその一例です。

 

2. 確証バイアス

確証バイアスとは、自分の信念や価値観を肯定するのに都合の良い情報を好む傾向のことです。今日、特定の人種や性別の人が組織で最も多く採用されているのは、特定の背景や条件を持つグループが他のグループよりも有能であるという確信が存在するからと言えます。

 

3. ハロー効果

ハロー効果とは、一つの際立った業績が成功の印象を与え、それに引きずられて他の劣っている行動が覆い隠されてしまうことを意味します。また、その逆も起こり得ます。例えば、面接官が面接中に候補者のコンピテンシーに弱点を見つけると、それによって他の重要な強みが見えなくなってしまうことがあるのです。「説得力のあるコミュニケーション」は、ハロー効果が起こりやすいMSC/DDIコンピテンシーの一つです。面接官は往々にして、コミュニケーション・スキルが高いと他の分野でも優れていると勘違いします。

一方、業務に関連する分野に強みがあるにもかかわらず、コミュニケーション・スキルが月並みな候補者に対して、面接官は全体的に否定的な印象を抱いてしまうことがあります。このような例は、候補者が母国語以外の言語で面接を受ける場合にも該当します。

 

4. 認知バイアス

認知バイアスとは、特定のグループに対する固定観念や思い込みが強くなり、そのグループの構成員について客観的な判断ができなくなることです。先ほどの例では、候補者が優良企業の出身でした。そのため、面接官は「この候補者は優秀に違いない!」と思い込み、その人を採用してしまいました。

 

5. 集団思考(集団浅慮)

採用プロセスにおける集団思考とは、強いリーダーや最も発言力のある人が「最適」だと思う候補者を選んだときに、本来採用すべき他の適切な候補者が見落とされてしまうことです。個々の面接官が自分の意見を言わなかったり、反対意見が排除されたりして、そのリーダーの意のままに採用者が決められてしまいます。

 

面接時のバイアスを回避するには?

暗黙のバイアスや個人的なバイアスは私たち人間の性であることを考えると、それを軽減するような選考プロセス作りが重要となります。MSC/DDIの行動面接システムである「ターゲット・セレクション®」は、まさにそのために設計されています。採用プロセスにおける暗黙のバイアスを抑制する「ターゲット・セレクション®」は以下のように構成されています。

 

1. サクセス・プロフィール

このシステムは、特定の職務や役割で成功するための要件を定義するように設計されています。構成要素には、職務や役割での成功に必要な知識、経験、コンピテンシー、個人特性が含まれます。これをMSC/DDIでは「サクセス・プロフィール」と呼んでいます。このような情報があれば、候補者から提供された情報と成功のための要件とを比較し、より効果的なスクリーニングを行うことができます。

これにより面接官は、その職務での成功に必要なものを理解した上で面接に臨むことができます。これは、買い物リストを持ってスーパーに行くようなものです。このサクセス・プロフィールを持つことで、効率的かつ効果的な面接が可能になり、候補者全員を客観的に評価できます。さらに、面接官は候補者同士を比較するのではなく、「テンプレート」に照らし合わせて各候補者を評価することができます。

職務を成功させるために必要な要素を定義する利点の一つは、面接官が、その職務にどのような能力が求められているかを把握できることです。また、そのコンピテンシーを発揮するのに必要なキーアクション、つまり具体的な行動も理解できます。例えばコーチングのようなコンピテンシーの場合、キーアクションを知ることで、面接官は組織や特定の職務において、どのようなコーチングの行動が求められているかを把握できるのです。これは、組織がコーチング文化の醸成に取り組んでいる場合などに有効です。

 

2. インタビューガイド

サクセス・プロフィールに関する情報があれば、各コンピテンシーや個人特性に対する想定質問を盛り込んだインタビューガイドを作成できます。面接官は想定される行動に関する質問をし、メモを取り、追加の質問をして、完全な行動例を収集します。MSC/DDIでは、この完全な行動例を「STAR」と呼んでいます。

インタビューガイドを使用することで、面接官はどのような質問をすればよいかを考える必要がなくなります。その結果、より一貫性のある面接プロセスが実現できます。インタビューガイドは、「手錠ではなく手すり」と捉えて活用するのが最も有用です。

 

3.ヒューマンニーズ(心理的ニーズ)に対応する

あらゆる面接において、面接官は候補者のヒューマンニーズを満たすことが大切です。そのためには、ラポールを築くことが重要です。候補者とのラポールは、自尊心を大切にすることで築かれます。また、候補者が自分の事例を話しているときに、共感的に聴き、反応することでも構築されます(人との関わりの中でヒューマンニーズやタスクニーズ(実用的なニーズ)を満たす方法については、過去のコラム「危機的状況において、基本原則は不可欠!」をご覧ください)。

候補者が非常に誇りに感じている実績を語ったときには、それを認める必要があります。しかし、期待に応えられなかった結果や状況を述べているときは、さらに重要です。面接官が共感的に聴き、反応することで、その場が面接官と候補者の双方にとってより良い経験となり、候補者が行動例を話し続けてくれるようになります。

 

突き詰めていくと、適切なトレーニングを受けた面接官による体系的な採用面接が行われていれば、すべての候補者が公平かつ平等に扱われる確率が高くなることが明らかになっています。また、最適な候補者が選ばれる確率も高くなります。

 

採用担当者が面接時に暗黙のバイアスをコントロールするには?

採用プロセスにおける暗黙のバイアスをコントロールするもう一つの方法は、チームで採用を行うことです。私たちは1人の候補者に対し、少なくとも2〜3人の面接官による1対1の面接を推奨しています。また、組織によってはパネルインタビュー(1人の候補者に対して複数の面接官が同時に面接するスクリーニングの手法)を好むところもあります。どちらのアプローチでも、暗黙のバイアスの影響を抑えることができます。

1対1のインタビューを複数回行うメリットは、それぞれの面接官が異なる質問をできるという点です。また、他の面接官がどのような情報を得ているかが分からないというメリットもあります。さらに1対1の面接では、面接官と候補者との間で信頼関係を築きやすくなります。

もう一つの利点は、1回1時間の面接を3回行えば、採用チームは面接終了時に3倍の情報を得られるということです。この方法は、複数の面接官が1時間かけて同じ回答を聞くパネルインタビューよりも多くの情報を得ることができます。つまりパネルインタビューの場合、候補者は1時間分の情報しか提供しないのです。このような複数の担当者による面接と、次に紹介するチームによる体系化された評価セッションを行えば、集団思考を抑制することが可能となります。

 

面接後に採用チームが暗黙のバイアスをコントロールするには?

面接が終わったら、面接官はすべてのメモを見直し、収集した候補者に関する情報を評価する必要があります。このプロセスでは、面接官は各行動例を確認し、それぞれのコンピテンシーと個人特性に評価を振り分けます。

こうすることで、面接官はデータ統合会議の準備ができます。これは、面接中に収集した行動の証拠(STAR)を用いて面接官全員が候補者の評価を共有し、裏付けを行うための会議です。

特定のコンピテンシーの発揮度を示す方法は多数存在する場合があるため、このように候補者の行動と結果を評価する客観的なアプローチが重要となります。行動には良い例もあれば悪い例もあります。行動例の重要度合いも大切な検討事項です。昨日の例は去年の例よりも重要かもしれませんし、その影響の大きさも考慮する必要があるのです。

 

この体系化されたプロセスは、面接官同士がセッション中に面接スキルを切磋琢磨することを促すフレームワークでもあります。これにより、正しい文脈の中で真実かつ関連性のある行動のみが評価されることになります。さらに、採用担当者が候補者について早合点してしまうのを防ぐことができます。

評価セッションでは、採用チームは収集したすべてのデータについてオープンに議論し、サクセス・プロフィールに含まれる各コンピテンシーと個人特性に対してチームで合意の取れた評点を導き出します。最後に、コンセンサス・レーティング(合意の取れた評点)に基づいて、各候補者の合否を決定します。

採用のバイアスを減らす最善の方法の一つは、トレー二ングを受けた面接官チームが、的確な選考システムを用いて、すべての採用と昇進の決定を行うことです。

 

 

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執筆者:

 DDI社 リーダーシップ戦略担当コンサルタント ブルース・コート

 

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