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2023年の3つの重要なリーダーシップ・トレンド

2023年に予想される重要なリーダーシップのトレンドとは

 

ここ数年、組織がさまざまな危機や変化に直面する中で、リーダーの仕事はこれまで以上に難しくなっています。リーダーには、先を見通す力、決断力、そして激変の状況下で明確なビジョンをもって他者を率いる力が求められています。初級管理職であっても、より戦略的な役割を担う必要があります。同時に、リーダーには、チームメンバーのエンゲージメントを維持し、彼らのウェルビーイングを向上させることが求められます。さらに、部下が仕事に追われ、やる気をなくしているときでも、彼らが仕事にやりがいや意義を見出せるように支援する責任があります。このようなことから、2023年のリーダーシップの主要なトレンドが浮かび上がってきました。

MSC/DDIの最新の大規模調査、グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2023では、業界を問わず、リーダーの果たすべき役割の変化が明らかになりました。そして、人を惹きつけるリーダーシップの役割もまた変化しています。ここでは、2023年に予想される3つの重要なリーダーシップのトレンドと、先んじてとるべき行動をご紹介します。 

 

 

 

トレンド1:燃え尽き症候群に先手を打つ

 

燃え尽きキャプチャ.JPG燃え尽き症候群は、多くの組織においてその影響を測りかねているものの、今日の従業員が直面する最大の問題のひとつです。燃え尽き症候群はパンデミックの発生から増加し、2020年5月にそのピークを迎えましたが、現在も増加傾向にあります。

MSC/DDIの最新調査、グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2023によると、燃え尽き症候群の割合は依然として高く、「気力を使い果たしたと強く感じている」と回答したリーダーは、2020年と比較して10%近く多くなっています。また、リーダーは自分自身の疲労に加えて、チームの燃え尽き症候群を懸念しています。彼らは、部下の燃え尽き症候群への対応が最もできていないと報告しており、その準備ができていると回答したリーダーは、わずか15%でした。このことは、リーダーが支援を必要としていることを示唆しています。

 

 

組織が燃え尽き症候群を予測・防止する方法

組織が燃え尽き症候群にうまく対処できるかは、リーダーにより大きく左右されます。特に初級管理職は、共感力を発揮し、コーチングを提供し、チームを支援する方法を知っておかなければなりません。ここでは、リーダーが準備を整えるための支援方法を紹介します。


 

 

01_01_focus-on-empathy.png1. 共感力を開発し、強化する

燃え尽き症候群に対処する方法の一つは、リーダーと部下の間でいつでも率直なコミュニケーションがとれるようにしておくことです。自分の立場が危うくなることを恐れて、疲れ果てていることを話したがらない人が多いため、このタブーの芽を摘んでおくことが重要です。

共感を活用すると、リーダーと部下との間で双方向のコミュニケーションが円滑になり、互いを尊重し合える関係と信頼が構築されるため、共感は部下の燃え尽き症候群を防ぐ上で非常に重要です。共感力のあるリーダーは、事実と感情に思慮深く対応し、否定的な感情を和らげ、ポジティブな感情を認めることができます。

従業員の燃え尽き症候群を軽減するための準備が整っている組織では、共感力が、リーダーシップ・スキルの上位として挙げられています。リーダーがチームと人間的な側面でつながっていれば、燃え尽き症候群やその他のウェルビーイングに対するリスクを特定できる可能性が高くなります。だからこそ、リーダーシップ開発トレーニングの一環として、共感力を開発することが非常に重要なのです。


 

 

01_02_own-wellbeing.png2. リーダー自身のウェルビーイングへの対応を支援する

幸いなことに、組織全体の燃え尽き症候群は、適切なスキルと戦略を実行することにより、防止または減少させることができます。しかし、リーダーが燃え尽き症候群のまん延に対処する一方で、彼ら自身にも燃え尽き症候群のリスクがあることを認識する必要があります。

リーダーが直面する変化と危機の度合いが進み続ける中で、リーダーは職場のストレスを軽減し、自身の疲労を管理することに目を向けなければなりません。人事部門は、職場に安全で協力的な環境を確保するための措置を講じることで、リーダーのウェルビーイングを支援する重要な役割を果たす必要があります。例えば、メンタルヘルスに対する意識を高めるためのプログラムを推進したり、従業員支援プログラムを充実させたりすることができます。


 

 

01_03_prioritize-work.png3. 優先順位をつけ、仕事を管理するスキルを開発する

コーチングと権限委譲は、チームが成長の機会を得て、バランスのとれた仕事量を保ち、燃え尽きることなく目標を達成するためのリソースを、リーダーが確保するために有用な戦術です。リーダーは権限委譲を効果的に行うことで、部下が興味をもち、良い学習経験となるような施策を立案し、管理できるようになり、全体的なエンゲージメントを向上させることができます。さらに、仕事の優先順位づけや技術の習得、対人関係の構築など、部下が仕事をうまく進めるために不可欠なスキルの向上に役立つコーチングを行うこともできます。

燃え尽き症候群は、組織が対応しなければならない大きな課題ですが、それを軽減するための重要な戦略は、効果的なリーダーシップです。リーダーは、共感力を発揮し、変化をもたらし、コーチングを提供し、仕事を任せることで、チームの士気と効率を高めることができます。

 

 

 

 

トレンド2: 信頼の危機に立ち向かう

 

信頼キャプチャ.JPG優れたリーダーシップは、信頼から始まります。しかし、グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2023調査によると、直属の上司が正しいことを行っていると信頼しているリーダーは46%にすぎませんでした。さらに悪いことに、自社の経営幹部を信頼していると回答したリーダーは、わずか32%でした。

この結果は、エデルマン社の最新の信頼指数の調査結果と一致しており、特に政府やメディアに対する信頼が急落していることを示しています。しかし、経営幹部や上級管理職が、従業員の信頼と信用度合いを高めるために、更なる努力をする必要があることは明白です。また、信頼できるリーダーであれば、従業員を惹きつけ、育成し、維持するために尽力している人材を、より定着させることができます。

信頼は健全な組織文化を築くために不可欠であり、あらゆる人間関係の基礎となるものです。信頼は、従業員が同僚や上司とつながりを築くのに役立ち、さらには私たちが働く組織に対する認識にも影響を与えることができます。だからこそ、信頼はリーダーがチームと築くべき重要なものなのです。分散型やハイブリッド型、遠隔地で働くチームのリーダーは、強いつながりを構築する有機的な機会が少なくなりがちであるため、信頼関係の構築には特に気を配る必要があります。

 

 

 

リーダーが信頼関係を構築するためには

リーダーが意図的に信頼関係を築こうとしなければ、多くの弊害が生じます。信頼がなければ、人々は優れたアイデアを出しにくくなり、イノベーションの妨げとなり、組織の成果達成に限界が生じます。

ここでは、リーダーがチームと信頼関係を築くための方法をいくつか紹介します。


 

 

02_01_importance-of-building.png1. 信頼関係構築の重要性を再認識する

リーダーは、ポジティブな組織文化を醸成するためには信頼が不可欠であることを理解する必要があります。そして、信頼関係を構築することの重要性を理解するためには、職場での実例が必要かもしれません。従業員エンゲージメント調査に、信頼に関する質問項目を盛り込み、自社がどのような状態にあるのかを把握することも有効でしょう。


 

 

02_02_develop-trust.png2. 意図的に信頼関係を構築する

他の重要なリーダーシップ・スキルと同様に、信頼関係の構築には努力が必要です。自社のリーダーには効果的に信頼関係を構築するスキルがあると考えがたいため、信頼関係の構築をリーダーシップ開発における最優先事項とする必要があります。信頼は壊れやすいものですが、壊れた信頼を再び築き上げるのは非常に困難です。

 

 

02_02_top-down.png3. トップダウンによる信頼のモデル化

組織の上層部ほど、信頼関係の構築が重要となるところはありません。経営幹部や上級管理職は、従業員と直接信頼関係を築く機会が少ないため、あらゆる機会を最大限に活用することが重要です。


 

 

 

 

 

トレンド3: バーチャルチームやリモートで働くチームを効果的に率いる

 

ハイブリッドキャプチャ.JPGグローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2023調査では、世界中のほとんどのリーダーがリモートワーク、またはハイブリッド型勤務をしていることが明らかになりました。米国では、リモートワークの傾向が強く、22%のリーダーがリモートワーク、41%がハイブリッド型勤務で、合わせて63%のリーダーが定期的に自宅で仕事をしています。このことは、リーダーにとって、特にチームとどのようにつながりをもつかという点で、新たな課題となっています。

残念ながら、ほとんどのリーダーは、ハイブリッド型やリモートで働く従業員の管理に自信がないようです。これはリーダーが評価するスキルの中で最も低く、ハイブリッド/バーチャルで働くチームを率いるスキルに非常に優れていると回答したリーダーはわずか27%でした。しかし、ここ数年、より多くのリーダーがリモートワークを経験するようになり、改善が見られます。2020年以降、ハイブリッド/バーチャルで働くチームを率いるのに優れていると回答したリーダーは約7%増えています。

入社してくる新しい世代は、より柔軟な勤務形態を期待しているため、バーチャル・リーダーシップのニーズは今後も高まり続けるでしょう。このスキルは、リーダー自身の努力だけで開発することはできません。リーダーには、バーチャル・リーダーシップのスキルを開発し、向上させるための支援と能力開発ツールが必要です。リーダーを支援する方法として、次のようなことが挙げられます。


 

 

03_01_virtual-workplace.png1. バーチャルな職場におけるリーダーの役割を「可視化」する

バーチャル、またはハイブリッドな環境で働く際の最大の課題は、「可視性」です。リーダーに見えているものと同じものがチームメンバーに見えているわけではありません。均等な機会の提供と公平性を促すために、リーダーは可視性を高める必要があります。リーダーのスキルを評価し、組織文化を高める行動を強化することで、バーチャルな環境において公正かつインクルーシブな職場を築く上でのリーダーの役割を理解させる支援をしましょう。


 

 

03_02_leaders-together.png2. リーダーを共に育成する

リーダーは、より有意義で公式な学習や能力開発、そして同世代の仲間とつながる経験を求めています。 特に、分散した職場やバーチャルな職場では、仲間とのつながりが希薄になりがちです。特に、同じような問題に直面している同僚と共に学び合うことは、リーダーにとって大きな利益となります。


 

 

 

 03_03_engaging-virtual.png3. よりインクルーシブで魅力的なバーチャルな職場の実現

優れたリーダーは、バーチャルやハイブリッドで働くチームにおいて、仕事とのつながりを意識させるという重要な役割を担っています。在宅勤務の従業員には、職場の文化に触れたり、同僚とコミュニケーションをとったりする方法がわからず、孤立を感じることがあります。リーダーは、従業員が職場や他の同僚と強いつながりをもつことを支援する立場にあります。リーダーがチームを巻き込み、参画させるための基礎的なスキルを身につければ、組織全体のエンゲージメントとイノベーションの向上が期待できます。


 

 

 

 

成功の秘訣キャプチャ.JPG


 

 

執筆者:DDI 行動研究分析センター(CABER)ディレクター ステファニー・ニール


 

 

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