企業が見落としがちなリーダー育成の盲点
一律育成の罠:同じ肩書きでも、育成ニーズはまったく違う
数千人規模の同じ職位のリーダーを分析した結果、彼らは決して同じではなく、次の3つのタイプに分かれていることが明らかになりました。
・新任で手いっぱいなリーダー
・安定しているが停滞しているリーダー
・飛躍の準備はできているが、足止めされているリーダー
重要なのは、それぞれに必要な育成はまったく異なるにもかかわらず、多くの組織は一律のプログラムを提供し、的を外していることです。その結果、71%のリーダーが「負担が大きすぎる」と感じ、組織は重要な役職の49%を充足できないという現状が生じています。
問題はリーダー自身ではありません。育成の方法にあるのです。

リーダーの階層構造に見る現実
肩書きだけでは見えない「真のリーダー像」を探った結果、次の3つのタイプが明らかになりました。
- 新任リーダー:新しい期待や責任に適応し、早期に価値を生み出すことに集中
- 現職で成果を出すリーダー:着実に成果を出しているが、さらに的を絞った能力強化が必要
- 昇進目前のリーダー:適切な支援があれば大きく成長できるハイポテンシャル人材

無視することの代償
例えば、貴社の「上級管理職向けリーダーシップ研修」に3人のディレクターが参加しているとします。
- サラ:先月昇進したばかりで、権限委任の基本を早急に学ぶ必要がある
- マイク:4年間安定した成果を上げているが、高度な影響力を身につければさらに飛躍できる
- チェン:次世代のスター人材で、経営視点を磨く準備ができている
しかし、全員に同じ内容を提供したらどうなるでしょう?
- サラはついていけず、脱落する
- マイクは退屈する
- チェンは成長機会を求めて他社へ去る
これが「画一的な育成」の負のスパイラルです。
- 新任リーダーは、基本が網羅されないため役割を果たせない
- 安定的にパフォーマンスを発揮するリーダーは「すでに知っている」内容に落胆し、意欲を失う
- トップ人材は成長機会を求めて離職する
データも裏付けています。ハイポテンシャル人材は:
- 成長機会を定期的に提供されない場合、翌年退職する確率が3.7倍に跳ね上がる
- 納得のいくペースで昇進できない場合、翌年退職する確率が3.1倍になる
これからの進むべき道
幸い、より良い方法があります。リーダーの置かれている現状に合わせて育成戦略を最適化することで、エンゲージメントを維持し、継続的に成長を促すことができます。
「先見型人事」が質の高いリーダーを33%多く輩出する理由は、ニーズを予測するだけではありません。肩書きに基づく理想像ではなく、実状に合わせて育成を設計するからです。
各ステージに必要なこと
新任リーダー
- アセスメントのニーズ:基礎的なスキルを診断し、コアコンピテンシーのギャップを特定
- 能力開発の焦点:広範な能力ではなく、迅速なコアコンピテンシーの習熟
- 成長機会:上司の支援と早期の成功体験
- 事例:日立エナジーでは、コンピテンシー・アセスメントの結果から新任リーダーに必要な3つのスキル「コミュニケーション」「コーチング」「対立の解消」を特定。これらのスキルに焦点を当てた能力開発により、離職率を80%削減
現職で成果を出すリーダー:
- アセスメントのニーズ:パーソナリティ診断、シミュレーション・アセスメント、360度診断でリーダーとしての成功を阻害する無意識の行動を可視化.
- 能力開発の焦点:次の階層に進むための的を絞った能力に注力
- 成長機会:ストレッチアサイメントやピアラーニング
- 事例:Avnetはアセスメント結果を活用し、「戦略実行力」「人脈構築力」「意思決定力」を強化する上級管理職向けリーダーシップ開発プログラムを実施。その後、能力ギャップを埋めるための個々人のニーズに合わせた育成を提供し、パフォーマンスを飛躍的に向上させた
昇進目前リーダー
- アセスメントのニーズ:昇進前にシミュレーション・アセスメントにより準備度を明確化
- 能力開発の焦点:能力ギャップに焦点を当てた加速型育成
- 成長機会:鋭いフィードバックと成長を促すエグゼクティブ・コーチングと学習者同士の交流・コミュニティ
- 事例:AtkinsRéalisは経営幹部向けシミュレーション・アセスメントで必要な能力を的確に特定し、的を絞った能力開発を行った結果、49%が昇進
この取り組みをうまく実行している組織には共通点があります。それは、効果的に育成するための精密なツールとして「アセスメント」を活用していることです。
実際、データもそれを裏づけています。優れた人材パイプラインを持つ組織では、アセスメントと能力開発を併用している確率が2021年の38%から2024年には49%へと急増しています。この30%の伸びは、優れたリーダーを確保するうえで、アセスメントが不可欠になっていることを示しています。 推測の時代は終わり、これからは「精度」が鍵となります。
精度重視のリーダー育成プレイブック
「リーダーを無理に一律のプログラムに入れる」のはやめましょう。
ここでは、どんな状況からでも始められる、”的確”な育成設計の方法をご紹介します。
まだ何も始めていない場合
- 小さく始める
最も課題が大きいリーダー階層を選び、そこから着手しましょう。 - リーダーの現状を把握する
リーダーがどのステージにいるのかを特定します
- 新任なのか
- 現職で成果を出しているのか
- 昇進目前なのか
上司と連携し、職務経験やパフォーマンスを確認したうえで、アセスメントを使って実際の能力を見極めます。
- パイロットプログラムを実施する
アセスメントデータをもとに、的を絞ったパイロットプログラムを設計します。最小限の実用モデルとして効果を検証し、フィードバックを集め、改善したうえで展開しましょう。
既存の育成プログラムがある場合
- ゼロからやり直さず、精度を高める
プログラム開始時に診断型アセスメントを組み込みます。 - 一律ではなく、成長段階に応じた”個別化された育成コース”を設計する
アセスメントデータを活用し、リーダーを適切なコースに振り分けます。これにより、同じ階層で基礎となる部分は一貫性を保ちながら、個々のリーダーの成長に必要な領域をパーソナライズすることができます。
アセスメントがある場合
- アセスメントから得られた洞察を無駄にしない
選抜だけに使うのは大きな機会損失です。育成プログラムを強化し、リーダーに必要な機会を提供するために活用しましょう。 - データを成長につなげる
アセスメント結果を能力開発計画に直接反映し、未来志向のキャリアパスを構築します。 - 費用対効果を示す
進捗状況を追跡し、プログラムを微調整し、ROIを経営陣に証明します。
なぜアセスメントと能力開発の併用が重要なのか
アセスメントと能力開発を併用している組織は、能力開発だけを実施している組織に比べて優れた人材のパイプラインを持つ確率が2倍になる。
その理由は明確です。アセスメントと能力開発を組み合わせることで、リーダーシップ・スキルが向上する確率が22%高まるからです。

アセスメントは“おまけ”ではありません。
それは、汎用的な研修と、測定可能な成長を分ける決定的な違いです。
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