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株式会社 日立ソリューションズ 様

株式会社 日立ソリューションズ 様

人財こそが会社の財産 本気のコミュニケーション戦略を展開

常務執行役員
人事総務本部 本部長
石川 浩(いしかわ ひろし)様


ダイバーシティは、総合的な施策の一つ

伊東:御社は、「ダイバーシティ経営企業100選」など数多くの賞を受賞されているほか、経営トップが「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」にも参加されていらっしゃいますね。ダイバーシティの面で先進的なお取り組みをされている印象があります。本日は、多くの人事の方々の参考になるお話を伺えるのではないかと、楽しみにしてまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。

石川:

当社が最も重視しているのは、「社員が明るく楽しく元気に働けること」です。それを実現するには、一つの施策では不十分であり、健康経営、働き方改革など、複合的・総合的に取り組む必要があります。ダイバーシティも、そうした総合的な施策の一つと位置付けています。

伊東:ダイバーシティ経営自体を柱と捉えるのではなく、「社員が明るく元気に働く」ということを中心に据えていらっしゃるのですね。

石川:そうです。社員の幸せ(健康、働きがいなど)を高めていくことが、結果的に会社の成長につながるという考え方です。我々の業界では、人が唯一最大の資源ですから、社員がどれだけやりがいを持って働ける環境をつくるかに尽きます。 

伊東:社員を明るく元気にする経営には、早くから取り組まれてこられたのですか。

石川:当社は2010年に二つの会社が合併して誕生しましたが、そのうち一つの会社が2005年に大赤字を出しました。そのときに社員の士気が下がり、そこから立て直すために取り組んだのが始まりです。合併をしたことも社員にとっては不安要因ですし、2015年には、日立製作所との再編により、合併して1万人になった会社が、また半分の規模になりました。社員が不安になる出来事が続く中、どうやって全員のベクトルを合わせ、やる気を出させるかと取り組んできました。

伊東:この取り組みは、ビジネスにどのようなインパクトを及ぼしましたか。

石川:はい。2011年度からの5年間で、営業利益は1.9倍になりました。残業時間も減少し、特に月100時間以上の超長時間残業の社員が大幅に減りました。この業界で問題になりがちなメンタルヘルス罹病率も低下しています。日立グループ全体で行っているエンゲージメントサーベイを見ても、再編の際にはやはりスコアが落ちましたが、それ以降は右肩上がりです。社員が自信を付けてきていることが分かります。

伊東:ビジネスの結果につながっていることは、すばらしいですね。掛け声をかけて取り組んでも、数字に表れないとモチベーションを持続していくことは難しくなりますから、ビジネスインパクトがゴールになっていることはとても重要ですね。

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経営トップの強いコミットメント

伊東:大きな観点からの取り組みということですが、具体的には、どのような施策を打ってこられたのですか。

石川:先ほど申し上げたように、単一の施策ではなく、総合的に取り組むことを意識しています。方針や目指す姿を明確に発信するとともに、組織風土・マネジメント改革や働きやすい環境整備を進め、同時に、組織・コミュニケーションの活性化にも力を入れています。人事施策のあらゆるものに切り込んでいかないと、組織を変えることはできません。

伊東:あらゆる施策に総合的に取り組むことができるのは、トップのコミットメントがあるからだと思いますが、トップからのメッセージの発信はどのようにされているのですか。

石川:それがないと絶対に進みません。歴代のトップに、「当社にとっては人が唯一の財産であり、社員のやる気を高めるためにあらゆる施策をやっていく」というメッセージを出してもらっています。
最近のトピックとして、社員の家族に社長名で手紙を出しました。当社は、2016年9月から、「カエルキャンペーンmotto!(もっと)」という働き方改革運動を進めていますが、その考え方と進捗状況をご家族にお知らせし、家族の人たちのご理解とご協力をお願いしました。こういうことをためらう経営者もいると思いますが、当社の社長は喜んで協力してくれます。社長の家はどうするか尋ねたところ、「おれのうちにも出してよ」と言われました(笑)。

すべての施策の根底はコミュニケーション

伊東:経営も本気でコミットしている、組織全体でのコミュニケーション戦略ですね。

石川:すべての施策の根底は、コミュニケーションだと考えています。コミュニケーションには、お金も時間もかけています。
特徴的な施策に、10年以上続く「段々飛び懇談会」があります。直属の上司ではなく上の上、主任であれば、課長、部長を飛ばした本部長との懇談会です。午後4時ごろから7~8人でテーマを決めてディスカッションをし、その後、本社の食堂でお酒を飲みながら懇親を深めます。2つ飛ばした上の人とは視点が違いますので多くの学びが得られますし、会社の考え方を伝えるうえでも有効です。早く帰らなければならない人のために、お昼に実施してもよいことにしました。組織変更やローテーションがあると必ず行います。1人当たり3000円の補助を出しており、総額は年間で3000万円にもなります。

伊東:この施策が定着されたのは、社員の側も価値を感じているからでしょうね。どの企業もコミュニケーションが大事と言いますが、こうしたことを着実に実行していらっしゃることが、ビジネスの結果にも表れているのだと思います。

石川:

2015年から、「幹部塾」という取り組みも始めました。副社長や事業部長が、「お客さまとどう対応するか」「トラブルを発生させないためには」といったテーマで、自社の失敗事例を交えて若手を教育します。これも午後4時前くらいから始め、終わったら懇親会をします。最初は課長以上に行い、次の年は主任で、今は再び課長を対象に行っています。主任は人数が多いので、100回近くになります。

伊東:経営層がコミュニケーションと教育に時間を割いているのですね。他社では、役員クラスが、若い層にどんな人財がいるかが見えていないことがありますが、そういう意味でも経営層自らが若手を直に知るというメリットがありますね。

石川:段々飛び懇談会は事業部内の縦のラインですが、幹部塾は、いろいろな事業部長が登壇するので、他の事業部のことを知ることもできます。

伊東:自分の事業以外のことを知り、ネットワークが広がりますので、これもある意味でダイバーシティですね。
 ほかにも、御社ならではのコミュニケーション施策について聞かせてください。

石川:「SOLmate(ソルメイト)」という社員が褒め合う仕組みがあります。感謝の気持ちをポイントとして付与できる制度です。2015年に会社が再編して社員のモチベーションが低下したときに議論し、若手から出たアイデアを形にしました。

伊東:若手の提案ですか! 社員の声を吸い上げて実現していくスピードも速いのですね。

石川:はい。ワーキンググループをつくって提案させて、いいなとなったら、すぐにやろうという風土があります。

伊東:こうした提案が挙がってくるのも、コミュニケーション戦略の成果ですね。

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育成する意識を持ち、候補者を共有

伊東:リーダーを育てるための育成計画についてもお聞かせいただけますか。

石川:一定レベル以上の人財の育成を話し合う「人財委員会」を最低年1回行っています。社長も出席し、各事業部長が、「自分の事業部で、今後、役員にできそうなのはこの人」と顔写真付きで候補者を共有し、そのためにどんな育成や配置を行うかを議論します。部課長クラスについては、事業部内で同様の議論をします。育成する意識を持って共有することが重要です。
また、それとは別に、主任級以上の女性の名簿を共有し、誰をどう育てていくか、いつどのようなローテーションをさせるかを話し合います。2013年ごろから行っていますが、女性は特にしっかりと見ておかなければならないと捉えています。

伊東:こういう仕組みがあると、組織全体に人財育成の意識が高まりますね。本来は男女とも見てあげるべきですが、女性は特に見ておかなければとお考えなのは、どうしてですか。人数が少ないので、バイアスがあるのでしょうか。

石川:そうです。もともと男性が圧倒的に多い組織で、今でも女性比率は12%です。特に40代以上の男性には、いわゆる“粘土層”がまだまだ大勢います。
2006年から女性採用比率を30%に増やしましたが、その層が32~33歳になり、結婚、出産という男性より影響を受けやすいライフイベントを迎えています。古い考え方の人は、「子どものいる女性は、課長への登用をやめておこう」「妊娠中は無理だ」と考えがちですが、そうではないということを訴え、女性にも気にするなと言っています。実際、育児短時間勤務中に課長に引き上げた女性もいます。全員の意識を変えることは容易ではありませんが、言い続けるしかありません。言い続ければ変わります。

 

資質があれば、年齢・性別にかかわらず登用

伊東:

女性の活躍を進めるうえで、どんなところに難しさをお感じですか。

石川:一つは母数です。国の言う「202030」は、どうやっても足りません。そこで当社では、実現可能な目標として、2020年までに、女性管理職比率を全体で10%、45歳以下で20%、40歳以下で30%とするという目標を掲げています。これも簡単に実現できる目標ではありませんが、女性採用比率を増やした世代が、主任まで育ってきています。そこの比率は、入社時と同じく3割が女性です。これがこのまま課長に上がっていけばと考えています。

伊東:主任になっても比率が変わらないということは、女性の定着率もよいのですね。主任から課長にするうえでは、何か課題はありますか。

石川:男女の資質に差はなく、ライフイベントの問題だけだと思います。早いと34歳くらいで課長に昇進しますが、そのタイミングでライフイベントと重なる方がいます。ただ、資質のある人を上げていく方針を徹底していけば、それなりに数字は上がっていくと考えています。

伊東:先ほどからお話を伺っていると、能力のある人は登用しようというメッセージを強く感じます。男女問わず、力のある人は上げていく仕組みになっているのですか。

石川:はい。年次の影響は極めて少なく、部下が年上というケースはいくらでもあります。お客さまと切ったはったのやり取りができる能力というのは、学歴や年齢とは関係ありません。海外の人財も登用しており、一番若くして部長にしたトルコ人は登用時37歳です。

伊東:人事制度がそういう仕組みだと、ジェンダーのダイバーシティも推進しやすいですね。

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「女性の健康管理」も重要なテーマ

伊東:先ほど男性の意識の話がありましたが、女性の意識改革もされていますか。

石川:当社には、富永という女性の常務がいますが、彼女には、「女性も意識を変えなければならない」という考えがあります。女性の中にも、「子どもができたら課長になるのは遠慮する」という人がいますが、そうではないと、機会がある度に話しています。女性の管理職を集めた交流会を年1回行っており、そこで私も女性管理職に期待することを話し、富永も、経験を踏まえ、厳しいことも含めて話をします。
富永は、ロールモデルとしてすごいので、「あの人のようになりたい」とあこがれる女性社員も大勢います。そうでない人もいますが、それは人それぞれで構いません。それぞれの立場に応じたパフォーマンスを出してくれればよいのです。ただ、変な誤解でチャレンジしないのはもったいないので、そういうことのないように繰り返し話をしています。

伊東:男性と女性にリーダーとしての能力に差はありませんが、世界的に見ても、女性は自分から手を挙げない傾向があります。御社ではいかがですか。

石川:当社は、女性のほうが積極的な気がします。最近は、営業職の採用の半分は女性です。面接をしていくと残るのは女性が多く、入社後もいい注文を取ってきてくれて、頼もしく感じます。今年同期のトップで課長になったのも女性です。

伊東:それはいいですね。ほかの会社では、「営業部門で、女性リーダーをつくりたいが、なかなか育たない」という話がありますので。 

石川:最近は、「女性の健康管理」というテーマに力を入れ始めています。女性は結婚、出産などのライフイベントの影響を強く受けますが、健康についても、男性とは違った視点で考えていく必要があります。男性と女性では病気になる時期や原因が違い、早い段階からそれを想定した意識醸成、対応を検討していかなければなりません。
女性は、40代前半から、ホルモンなどとの関係からか婦人科系の病気を発症する方がかなりの確率でいらっしゃいます。また、50代になると更年期障害の確率も高まります。いずれの病気も個人差が大きく、また、原因もはっきりしていません。非常にデリケートな内容であるため、周りに打ち明けられずに苦しんでいるケースもあります。そこで、若いうちから女性本人に女性特有の病気について知ってもらい、健康に気を付けてもらう。また。周りの男性陣にもそのことを知ってもらうために、講演会などを企画しています。結婚や出産だけでない女性固有のライフイベントについて皆で意識を共有し、向かい合っていくことで、明るく、元気な会社づくりを進めていきます。

まずはやってみるという姿勢が大事

石川:働き方改革も、ダイバーシティの推進に大きく影響します。「タイム&ロケーションフリーワーク」と呼ぶテレワークを導入し、柔軟な働き方を推進しています。その結果、短時間勤務者75人のうち11人が勤務時間を延長しました。

伊東:マネジメント側が戸惑うようなことはありませんか。

石川:制度の施行前に行ったアンケートでは、利用者、利用者の上司・部下のどちらも、コミュニケーションが取りづらくなることを不安視していました。しかし、実施後は、多くの人が、「特に不安なし」と回答しました。やってみたら、意外と大丈夫という結果です。
ただ、依然として利用者の20%は不安に感じていますので、それを解消するために何ができるか検討しているところです。例えば、テレワーク利用者の不安の一つに、「さぼっていると思われるのではないか」というものがあります。そこで、働いている場面を撮影して可視化するツールを開発しました。当社にとってはビジネスにも結び付きますので、思い付いたことには積極的に取り組み、社内で試行します。やってみてダメだったら見直せばよいのですから。
ほかにも、今年度からさまざまな取り組みを始めました。
「プレミアムフライデー」は、当社では月2回行っており、年休取得推奨日に設定しています。労働組合に「まず上が見本を見せてください」と言われており、役員と事業部長は取得実績を公表しています。
「ワークスタイル・インセンティブ制度」というものもあります。残業時間や年休取得率などの実績をゴールド、シルバー、ブロンズの3ランクで評価し、ランクに応じたインセンティブを付与します。これも意識付けの一環です。
こうした取り組みの根っこにあるのが、「ムダ取りワーキンググループ」という活動です。ただ休めというばかりでは、負荷が増えて、下手をすると隠れ残業が発生しかねません。仕事の無駄を見つけ、思い切ってやめるものをつくることも必要です。発表会をしましたが、いろいろなアイデアが出ています。

伊東:かなり抜本的なところまでメスを入れながら進めていらっしゃるのですね。かといって、ぎゅうぎゅう締め付けるのではなく、ワクワク生き生きと取り組まれているのが印象的です。御社のビジネスにとっては「人が唯一の財産」という強い信条に基づき、社員とのコミュニケーションを重視してこられたところから、信頼が生まれているのだと思います。
お話を伺って、「まずはやってみる」という姿勢が大事だと思いました。うまくいかないことを心配して実行しないより、やってみて、結果を見て、ダメなら改める。そうやって進めていかないと、変化は進んでいきません。御社は、意思決定も速いですし、やってみるのも速いですね。そして、新しいことをするならば、捨てることも必要というお話がとても印象に残りました。組織の抜本的な課題を見つけて、そこにチャレンジをしていく経営の強いコミットメントがあるからこそ、働き方改革がかけ声で終わらずに、企業のパワーになるのだと、改めて考える場になりました。今日はダイバーシティのお話を伺おうと思ってまいりましたが、それだけにとどまらないいろいろなお話が聞けて、刺激になりました。本日はありがとうございました。

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会社名
株式会社 日立ソリューションズ
設立年月日
1970年(昭和45年)9月21日
資本金
200億円
従業員数
4,725名(単独)/ 11,572名(連結) /2017年3月31日現在
主な事業内容
ソフトウェア・サービス事業/情報処理機器販売事業