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上級管理職の能力開発に不可欠なパーソナリティに関する洞察

上級管理職としての成功の成否を左右する個人の影響力

マッキンゼーは、ミドル・マネジャー(上級管理職)を「組織の最高経営幹部(Cレベル)のメンバーではなく、一人以上の部下のいる人を管理する人」と定義しています。こうしたリーダーの成否は、パーソナリティ(性格)が左右します。しかし、多くの場合、彼らは自分の個人的な影響力に気づいていません。だからこそ、性格に関する洞察は、彼らの窮地を救うことになるのです。

私は最近、上級管理職を対象とした「EQを高める」コースをオブザーブしました。リーダーは、性格診断を受けた後、自己認識を深めるための分科会で、その結果について話し合いました。

ある年配のディレクターは自分の性格の特徴と、それがどのように自分の助けになるか、あるいは妨げるかを見直しながら、「このレポートは間違っている。これは私ではない」と言いました。彼は自分自身を深く認識できていると信じていました。

同僚は、「そのことについては、また後で話しましょう」と冷静に答え、後日、1on1の話し合いで、彼女は仕事で現れる彼の性格特性について、フィードバックしました。

この知的でベテランのディレクターは、自分自身の盲点を明らかにしましたが、客観的なデータを前にしても、自分の足を引っ張りかねない性格的な阻害要因の意味を理解するのに苦労していました。 幸い、このコースで、性格に関する洞察と、心理的安全性が担保された場で他の受講者からのフィードバックを得ることができました。アセスメントと同僚からのフィードバックがなければ、このディレクターは、自分がリーダーとしての役割において、個人的な影響を与えていることに、十分に気づくことはなかったかもしれません。

上級管理職が自身の性格特性を把握しなければならない理由

  • 組織でリーダーとしての階層が上位になるにつれて、その個人的な影響力は増大します。初級・中級管理職は自分のチームに大きな影響を与えますが、上級管理職は自分の直属の部下だけでなく、そのリーダーの配下にいる部下にも影響を与え、その影響が連鎖的に波及していきます。
  • あらゆるリーダーにとって、自己認識を深めることは有益ですが、上級管理職やリーダーの上司は、自分の性格特性に関する洞察が必要です。その理由は、
  • 上級管理職は、戦略と実行を結びつける過程で、組織の複雑さやチーム間の不整合に直面することがよくあります。このような課題によって引き起こされるストレスは、特に上級管理職が自覚していない場合、コントロールするのが難しい感情のトリガーを引き起こす可能性があります。
  • 上級管理職は将来の経営幹部です。現在、そして将来の役割で成功するためには、経営幹部としての存在感を高め、個人の影響力をコントロールする必要があります。

すべての性格診断が同じように作られているわけではない

多くの組織が上級管理職に対し、性格診断を実施していますが、より優れたリーダーを育成するために行っている性格診断が、効果的でない可能性があります。以下は、組織が性格診断で採りがちな誤った方法です。

  1. 性格タイプにこだわる。 実際のところ、一つの性格タイプに完全に当てはまる人はいません。大半の人は、どちらかといえば各タイプの中間に位置しています。特定のタイプやカテゴリーを重視しすぎると、個々の特性やその人独自の特徴の組み合わせから得られる重要な洞察を見落とす可能性があります。

  2. 確実に実証されている診断を使っていない。 市場には多数の性格診断がありますが、そのすべてが科学的根拠に基づいているわけではありません。

  3. リーダーシップに関することではない。 リーダーにとって、自分のことを知ることは素晴らしいことですが、その特性や傾向をリーダーとしての在り方にうまく活かせなければ、必ずしも役立つとは限りません。自分の性格がリーダーとしてどのような影響を与えるのか、より良いリーダーになるためにはどうすればいいのかを、簡単かつ明確に理解する必要があります。SNSのクイズでは、抽象的な結果でも構いませんが、性格診断から得られる洞察は、リーダーの行動や働きと密接に結びついて初めて職場で実を結ぶのです。

  4. 性格特性は特定のスキルと結びついているわけではない。性格(あまり変化しない)と行動(変化しうるし、変化する)の間には複雑な相互作用があります。この分野での専門知識がなければ、リーダーが自分自身でこれらを結びつけることはできません。リーダーがそのギャップを埋めるのに役立つ性格診断を模索してください。

  5. 単体のツールとして扱う。リーダーは、アセスメントを受けるだけで、その結果を振り返ったり、同僚と議論したりする機会を得られないことがよくあります。性格診断では、データをどのように活用するかが最も重要です。性格診断から得られる洞察は、個々人のニーズに合った能力開発の策定に役立ち、「ハッ!」とする瞬間や、能力開発をより適切で有意義なものにする意欲を促すことができます。

上級管理職が個人の影響力を把握するためのベストプラクティス

1: 性格は良い、悪い、高い、低いといったものではないことを理解する
性格診断を受けるということは、学校のテストを受けるというようなものではありません。また、性格特性を100%把握することを目的としているものでもありません。リーダーは自分の性格がもつ意味を理解することで、関連する行動をコントロールできるようになります。

2: 行動に焦点を当てる
性格特性は傾向や初期衝動を表していますが、性格特性がその人の行動を決定づけるわけではありません、しかし、関連する傾向が理解できれば、行動をコントロールしやすくなります。

3: 全体的な視点を保つ
人は誰しも多面的な性格をもっています。ストレスのあるときや、特定のスキルとの関連において、性格の側面がどのように現れるかを全体的に見てみましょう。

4: 有効な話し合いに注力する
リーダーは、自分の性格について、他の人と気軽に話せるようになる必要があります。リーダーが、自分の性格の特徴、その特徴がもつ意味、行動、そして深い学びを促進するためにそれらがどのように相互に関連しているのかについて、話し合う時間と場所を確保しましょう。

5: 能力開発に性格診断を組み込む。
性格に関する情報を考慮しなければ、組織の成果を大きく向上させることはできません。自分の性格が組織の重要な行動や成果にどのような影響を与えるかを、上級管理職が理解できるようにしましょう。

6: 組織の成果に結びつける
リーダーが、自分の影響力と、達成しようとしているビジネス目標との関連性を理解していることを確認しましょう。こうしたつながりが、上級管理職の成功の鍵となります。

執筆者:DDI シニア プロダクト マネジャー ベッツィ・ブライテンバッハ 氏

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