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大塚ホールディングス株式会社 様

大塚ホールディングス株式会社 様

若くても、経験不足でも、やらせてみる風土
自社のカルチャーを理解した人材をリーダーに登用

常務執行役員
総務部人材企画室長 笠 章子(りゅう あきこ)様(画面左)
広報部長 迫 久見子(さこ くみこ)様(画面右)


トップのコミットが重要

伊東:御社では、女性リーダーの輩出に向けてどのような取り組みを進めていますか。

迫:大塚グループでは、弊社が大事にしている「創造性の喚起」や、社会からの要請に対応できる体制を強化していきたいと、早くから女性社員の活躍推進に力を入れてきました。ダイバーシティという言葉がまだ一般的でなかった1990年から「女性フォーラム(現ダイバーシティフォーラム)」を開催しています。

伊東:27年前からですか! かなり時代を先読みしていたのですね。

笠:会社を成長させるためには、よい人材が必要です。しかし、当時はまだ会社の規模も小さく、製薬会社の中では歴史も浅かったため、なかなかいい人材が採れませんでした。一方、海外を見ると、女性が活躍している。そこで当時の社長が、「だったら、他社が目を付けていない優秀な女性にもっと入っていただこう」と、女性の採用を強化しました。
しかし、ただ入ってもらっただけでは、辞められてしまいます。そこで、男性目線の仕組みを改めるために、女性が働き続けるために何が必要かを経営陣が聴く場所として、女性フォーラムがスタートしました。大学の先生とのパネルディスカッションなどを行い、女性のキャリア意識も高めてきました。

伊東:やはりトップのコミットが重要ですね。経営が本気だと、男性もその気にさせやすいと思います。

笠:フォーラムをつくったことで、トップの本気度がリーダーたちに伝わりました。大きかったのが、会社の成長戦略に組み込んだことです。イノベーション、グローバライゼーションと共にダイバーシティを含め3点を明確に掲げました。
当社が女性を積極的に登用するのは、商品購入の7割以上を女性が決めているからです。ただ「女性管理職が少ないから」というだけでは、男性は、「俺たちはマジョリティだし、今までうまくいってきたのだからこのままでいい」と思ってしまいます。こうした理由付けも必要です。

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“質”を伴った制度構築と役員登用

伊東:27年間にわたる取り組みの中で、どういうことが変わってきましたか。

笠:当時も、女性役員こそいなかったものの、すでに女性部長はいました。女性の力は、80年代から見出されていました。
ただ、働き続けるための制度がありませんでした。92年に育児介護休業法が施行される前ですので、本当に何も整備されていませんでした。1991年に国より1年早く育児休職制度をつくり、私が初めて育児休業を取得させていただきました。無給でもありがたい時代でした。それがなければ、辞めるしか選択肢がありませんでしたから。 

迫:当時と大きく変わったのは、出産・育児をサポートする制度が充実したことです。今では、国内3か所(徳島、大阪、筑波)に事業所内保育所があります。徳島は150名での定員では足りず、現在、約200名への増員計画が進行中です。ゼロ歳児から預けることができ、孫も受け入れ可能なこと、保育運営が自前で安心なこと。“施策の質”が重要と捉えています。育児休職も、ただ制度を設けるだけではなく、取得できる環境を整え、大塚製薬では取得率100%を実現しています。
グループ各社でも、育児と仕事の両立を意識した制度を充実させています。キャリアを継続できないことが女性リーダーの誕生を妨げますので、働き続けられることを重視しています。

笠:サポート体制ができてきたことで、女性役員も増えてきました。グループ全体(注1)では、執行役員以上の9.3%が女性です。グループ会社には女性社長もいます。
当社の場合、単に社外取締役を女性にするとか、外部からポンと採ってくるのではなく、自社で育った人間が役員になっています。その中には、MR(医薬情報担当者)出身者もいます。プロセスを重視した登用になっているところがよいと思います。
(注1)主要事業会社(大塚製薬、大塚製薬工場、大鵬薬品工業、大塚倉庫、大塚化学、大塚メディカルデバイス)

女性に若いうちに成功体験を

伊東:女性に対する役割の与え方は、どのように行っているのですか。

笠:かつて大塚では、「男性は大器晩成型だが、女性は若いうちに成功体験がないと、後の伸びしろができない」と言われることがあり、弊社では、比較的早くから、やる気のある女性を見出し、若いうちにチャンスを与え、登用してきたように思います。
私は、30歳でポカリスエットのプロダクトマネジャーになりました。当時の会社の売り上げの約3分の1を占める事業です。それまでの担当は、支店長経験者で40代後半の男性です。それを若い30代の女性に変えましたので、社内では、不安の声が上がりました。

伊東:経営の英断は素晴らしいですね。

笠:今までどおり、40代以降の支店長経験のある男性に任せていたほうが、よっぽど枕を高くして寝られたと思います。それを任せてくれて、失敗も含めていろいろな経験させて頂きました。経営者の勇気ですね。
常務執行役員の櫻井という女性は、秘書からのスタートでしたが、一つ一つの仕事が認められ、30代で執行役員に登用されました。彼女がまず行ったことは、赤字だったスキンケア部門の立て直しです。当時の当社は、美容部員を抱えて百貨店ビジネスをしていましたが、業績が低迷していました。それでも、男性リーダーには思い切った転換を図ることは難しかったのです。それを彼女が百貨店ビジネスをeコマースに完全に切り替え、黒字化しました。
こうして、登用された女性たちが実績を出してきたことで、女性登用に異議を唱える人が殆どいなくなったのではないかと思います。

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能力と可能性があれば、やらせてみる 

伊東:最近は、女性リーダーに対する役割の与え方はさらに変わってきているのですか。

迫:チャンスの与え方は、これまで以上に枠にとらわれなくなっています。経験のない若手にも新しいことを任せる革新的人事が行われています。
私はもともと医薬品のMRでしたが、現場のマネジメントなどを経験した後、グループ全体の広報に登用されました。これだけのグローバル企業の広報ですから、財務的なことを含め知識も経験もある人が就くべきポストですが、「逆に、そういった物事にとらわれないチャレンジをしてほしい」と言っていただきました。重責を感じながらも、面白いチャレンジをさせてくれる会社に感謝しています。 

伊東:御社は女性の活躍推進に取り組むのが早かった分、女性の積極的な登用が、ビジネスの成功の一因になっているという印象を受けます。

笠:女性が参画することにより、様々な価値観が混じるダイバーシティが促進され、化学反応が起き、イノベーションが生まれています。ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井さんが提唱している「ウーマノミクス」のように、女性のパワーが事業を加速化する力にもなってきています。

伊東:創業家のお考えが今でも脈々と組織には流れていて、女性には早いタイミングでチャンスを与えていらっしゃるのですか。

迫:男女関係なく、「任せてみようか」という風土があります。女性だからというのが先に立ってしまうと、男性も嫌でしょう。やる気と能力、何より可能性を感じる人にチャレンジさせます。

カルチャーにするには周囲の慣れが必要

伊東:迫さんは、それまで男性が就いていたポストに女性でしかも若くして就いて、ご苦労されませんでしたか。

迫:私はMRを経験した後、本社で医薬の製品担当を経て営業所長になりましたが、当初は、社内外問わず女性の所長が珍しかった為、部下と一緒にお客さまを訪問しても、上司と見てもらえず、「担当者の交代ですか?」と言われる事もよくありました。所長では無く後任の担当者が来たと思われた様です。社内も社外も、女性がキャリアを積むことに対する男性の慣れが必要なのかもしれません。

笠:当社は執行役員以上の9.3%が女性だと言いましたが、裏を返せば90.7%は男性なわけです。時間をかけてやっとここまで来た。これは、日本全体の問題だと思います。

伊東:長く取り組んできたことで、徐々にカルチャーとして浸透してきたのですね。

笠:おっしゃるとおりです。カルチャーは、トップのマインドだけでなく、周りの慣れも必要です。女性と一緒に働く、女性の部下を持つ、女性の上司を持つ――そうしたことにお互いに慣れる期間が必要です。男の人は、女性を叱れない傾向がありますよね。男性の部下には言いやすいが、女性の部下には、「泣かれたら困る」と思って厳しいことを言えない。それが、女性の成長過程に影響している要因の一つだと。

伊東:ほかの会社でも、「男性は、頭では分かっていても心が付いていかない」という話を聞きます。

笠:私たちの共通の上司は、「俺は、目の前にいるものは、男でも女でも猫でも使う」と言います。「猫はいらないのではないの?」と言っていますが(笑)、それこそが究極のダイバーシティですよね。男性上司が女性を戦力と捉えられなければ、ダイバーシティは実現しません。

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”レコグニション”の場で、人材を見出す

伊東:能力と可能性のある人材にストレッチを与えることは重要です。どのようにタレントを選ぶのですか。

笠:上司の評価だけでなく、複数のレコグニション(認識)の場があります。大小さまざまな会議や研修の場で発表の機会があり、そこでトップが「こいつはいい意見を出すな」といった具合に人材を見出します。

迫:経営トップが自ら2日ほど体を空けて行う研修が年7~8回あります。30代では1年間、40代では2年間にわたる選抜型研修を行っています。

伊東:レコグニションの場があるのはいいですね。グローバルに出ていったときによく日本人が弱いと言われるのは、「意見を言わない」「質問をしない」ということです。グローバルの場では、「必ず質問しなさい。何も言わないなら、いないほうがいい」と言われます。

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自社のカルチャーを重視

伊東:選抜型研修の中では、どういうことをみなさんは学ぶのですか。

迫:一番の肝は大塚の文化です。創業からの歴史と当社が大事にしていること、これから先どうしていきたいかというコアの部分を社長が直接、研修生に伝えます。研修を受けて一番心に響いたのは、創業家の想いと歴史の重み、そしてそういった大切なものを、私たち一人一人がしっかりと受け継いでいかなければならないのだ、ということです。

笠:当社はカルチャーを重視します。能力がすごく高くてカルチャーを理解していない人と、現時点の能力はそれほどでなくてもカルチャーが分かっている人がいたら、後者を選んで鍛えるのが当社のやり方です。社長は、「そこまで話していいの?」と思うほど、社長でないと語れない話をしてくれます。

伊東:研修の参加者同士の相乗効果についても教えてください。

迫:グループ各社から、職種も立場もバックグラウンドも様々な十数人が集まりますので、多くの気づきがありますし、貴重な人脈構築の場にもなっています。

伊東:この研修もある意味、ダイバーシティですね。

伊東:御社は男女関係なく、個を見て、個を活かす印象を強く受けました。そうした中、どんなリーダーが必要とお考えですか。

迫:まず、弊社が大事にしている「創造性」。常識にとらわれない発想をあらゆる場面で発揮できることが重要です。また、せっかく素晴らしい発想を持ったとしても、それが形にならなければ意味がありません。当社では、「実証」と言いますが、結果を出すためにやり抜く力ですね。この二つを兼ね備えていることが必要と考えています。

伊東:常識にとらわれない創造性を発揮するのは簡単ではありませんが、迫さんご自身は、どうやってその能力を磨いていらっしゃいますか。

迫:最近弊社でよく使う言葉ですが、「アイサイトとインサイト」。まず、目に見える状況と物事を理解し、そのうえで、本質に何があるかを考え抜くことを心掛けています。

伊東:もう一つのやり抜く力も大事ですね。リーダーというのは、さまざまなメンバーがいる中でやり抜くことが求められます。抵抗勢力もあるでしょう。

迫:抵抗勢力とまでは言いませんが、いろいろな摩擦はあります。そこで大事なのは、自分がどう考え、何をしていきたいかを周りの人に理解してもらう努力をすること。自分の思いを分かってもらえてこそ、一緒に動いてもらえますから。

伊東:先ほどの抑圧されてきた人はチャンスをもらうと爆発的に力を発揮するというお話は、本当にそのとおりだと納得しました。御社には、女性の方たちが活躍できるカルチャーがあるのだと、お話を聴いてよくわかりました。

ここまで御社がグローバル企業として大きく成長された背景には、女性の活躍をどこよりも早く進めてきたこと。そして、「実証」すること。リーダーは、男女問わず結果を出すこと。若くて可能性のある女性の皆さんが、大きなチャレンジを会社から付与され、新しい物の見方でイノベーションや変化を起こし、確実に結果を出してきたことが、今の御社のカルチャーを創り上げているのだということを知りました。
お二人のますますのご活躍をお祈りします。今日は、ありがとうございました。

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会社名
大塚ホールディングス株式会社
設立年月日
2008年7月8日
資本金
816億90百万円
事業内容
持株会社
グループ会社
子会社152社、関連会社30社