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ファイザー株式会社 様

ファイザー株式会社 様

精度が高く成長にも資する昇格アセスメントに変革、ビジネスニーズに応えるため早期にオンライン化

取締役 執行役員 人事・総務部門長 相原修様
人事オペレーショングループ 担当部長 長谷部ゆり様
人事オペレーショングループ 蛭間公平様



世界をリードする研究開発型製薬企業であるファイザー株式会社は、管理職候補の昇格アセスメントの精度を高めると共に、本人の今後の成長を促すものとするため、2019年に筆記試験のみで行っていた昇格アセスメントを見直し、弊社のヒューマン・アセスメントを採用した。さらに、2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、アセスメントの全プロセスをオンライン化。必要な人材をスピーディに登用し、適材適所を実現していくというビジネス側のニーズに応えるため、早期にリモートでのアセスメントに移行した。この取り組みを推進してきた同社の相原様、長谷部様、蛭間様に弊社コンサルタントの田上あやのがお話を伺った。(文中敬称略)


単なる合否判定ではなく、今後の自律的成長につながるアセスメントを導入

田上:御社は今回、いち早くリモート型のアセスメントを昇格プロセスの一環として実施されました。お話を伺うのをとても楽しみにしていました。どうぞよろしくお願いいたします。
早速ですが、まず、昨年、2019年に弊社のアセスメントを採用していただいた経緯についてお聞かせください。

長谷部:以前は別の会社のアセスメントを実施していましたが、それは筆記のみでした。弊社のビジョンやミッションに合致する内容ではありましたが、問題数にも限りがあり、受講者が試験勉強をしてくる傾向も見られるようになり、本当に管理職たり得るコンピテンシーを評価できているのか、また、筆記試験だけで十分なのかという疑問がありました。
加えて、今後の成長の道しるべとしてマネジャーや本人の助けになるアセスメントにしたいという思いがありました。「このレベルに達している」というだけではなく、その後の自律的な成長を促す、単なる合否判定ではないアセスメントを模索していました。

相原:背景として、リーダーの重要性が急速に高まっていることがあります。時代の動きが速く、リーダー自体の役割が大きく変化しています。特にこれからのリーダーには、チームを鼓舞する、活力を与える、支援するといったことが求められます。そうしたポテンシャリティを見るために、インバスケット演習だけでなく、グループ討議や面接などを含めて幅広く見るアセスメントを行い、リーダー候補の精度を高めたいと考えました。
それから、長谷部が言うように、せっかく時間をかけてアセスメントをするのだから、昇格のアセスメントだけで終わらせてはもったいない。いろいろ持ち帰って自分の成長に活かしてほしい。そのためにフィードバックを充実させたいというねらいもありました。

田上:単なる昇格のためではなく、その先の長い育成も考えて見直され、アセスメントに求めるものも以前とは変わってきたという経緯があったのですね。

働き方のリモート化をポジティブに推進

田上:そうした背景があって弊社のヒューマン・アセスメントを導入され、さらに今年、対面型からリモートに切り替えていただきました。3月に対面で実施する予定だったのを延期し、6月にリモートで実施されたのは、やはり環境変化によるところが大きかったのでしょうか。

相原:はい。直接的にはコロナの影響です。当社はかなり厳格に感染防止を徹底していて、2月末から原則在宅勤務になりました。その環境下において対面で実施することはあり得ません。一方、この状況がかなり長引きそうでしたので、MSCさんにご相談させていただきました。

田上:アセスメントだけでなく、全社的にオンライン化を進めてこられたのですね。

相原:そうです。内勤者は今も原則在宅勤務です。必要性が高い場合は各部門最大20%まで出社を許可しますが、実際は5%前後しか出社していません。MRは、医療機関に感染させるようなことがあってはいけませんので、緊急事態宣言中は完全に医師への訪問を禁止しましたし、今でもかなり制約を設けています。工場はラインが動いていますので、感染防止策を徹底しながら出勤してもらっています。

田上:おそらく抵抗もあったと思いますが、どのように乗り越えてこられたのですか。

相原:当社は以前から在宅勤務を推奨していましたので、インフラや環境はそれなりに整っていました。それから、製薬メーカーですので安全に対する意識が高く、社員は言えば理解してくれる。その点はやりやすかったです。
難しかったのがMRです。彼らには、「先生のところに行かないと責任を果たせない」という思いがありますから。もう一つは住宅事情ですね。日本では、毎日自宅で仕事をするのは家族がいて厳しいということがあります。
そうした点については、社員の声を聞き、できる限り手を打ってきました。コンピュータ関連機器の購入費用補助を行ったり、ファミリーサポート休暇の条件を緩和したり。特に意識したのが、経営からのコミュニケーションです。グローバル全体やメディカル部門のトップ、日本の社長などがビデオメッセージを中心にメッセージを発信し続けてくれました。また、この状況を逆手にとって楽しもうと、人事主導で「エンジョイ・ニュー・ノーマル」という取り組みを始めました。大きく三つあり、一つはコミュニケーションの強化。リモート環境では仕事以外のコミュニケーションが減るので、ライン長向けに、「部下とのコミュニケーションの取り方」などテーマを決めてセッションをしました。二つ目は健康対策。家にいて動かなくなるので、フィットネスの会社と提携して運動プログラムを配信しました。三つ目は自己啓発の機会。研修会社の無料キャンペーンをトライアルで実施したところ、かなりニーズがありましたので、一部自己負担で好きなことを学べるオンラインコースを設けました。こうしてさまざまな取り組みを行ってきたのが効いたのだと思います。

長谷部:従業員サーベイを実施したところ、リモート環境での業務のしやすさについては、社内は概ね問題ありませんでした。ただ、社外のステークホルダーの方とどうコンタクトを取るかは難しく、徐々にwebでの講演会や面談に取り組んでいるところです。ツールやワーキングスペース、コミュニケーションなどの面で支障があるという方もいますので、皆さんが生き生き働けるよう、HRがイニシアティブを取ってアクションを打っています。

蛭間:同期のMRに話を聞くと、「医療機関を訪問できず、今までと同じ仕事ができない」とストレスがたまっている面がありました。一方で、「自己研鑽に時間を充てられる」「自分の働き方を見直して効率化する機会になる」という前向きな声も多く、よい機会になったと思います。

田上:社員の生の声を聞き、ポジティブな形で推進されてきたのですね。

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環境に合わせたアセスメントとしてオンライン化を推進

田上:アセスメントに話を戻しますと、アセスメントをリモート化されるうえでどのような課題がありましたか。

蛭間:一番はネット環境です。弊社は全社員にカメラ付きノートPCとWi-Fiルータを貸与していますし、回線スピードも事前にテストしました。ところが、全国津々浦々で受検すると、曜日なのか時間帯なのか場所なのか、原因を特定するのは難しいですが、回線が本番当日に乱れた方がいらっしゃいました。それと、今回利用したシステムを使ううえでストレスがあったという声がありました。
また、本社の内勤職はPC作業に慣れていますが、営業職の年齢の高い方で、ブラウザを立ち上げたり、ウィンドウを縮小したりといった基本操作にも支援が必要な方がいらっしゃいました。

田上:実施されてみて、アセスメントの効果や受講者の反応はいかがでしたか。

蛭間:冒頭、相原や長谷部がお伝えしたように、御社のアセスメントに切り替えた大きな理由として、本人の今後の成長をドライブするものにしたいということがありました。この点については、事後サーベイで、96%が「気付きや成長を得る経験になった」とポジティブな回答をしています。
一方、3割くらいの方がITの面で不都合が生じたと回答しました。ITリテラシーの低さが原因の方もいれば、通信環境の問題もあると思いますが、今後の課題と捉えています。ただ、コンテンツ一つひとつに対しては、「面談やグループ討議はフェース・トゥー・フェースがよいのでは」という声もあるものの、「オンラインで不都合はない」という意見も多く、トータルで見ると、オンラインでの実施に問題はないと考えています。

長谷部:始める前に、御社から、「一部のコンピテンシーについては幾分把握しづらい面があり、対面のアセスメントを行った場合と少しギャップが出るかもしれません」というお話をいただいていました。リモートでは、身振り手振りが把握しづらい面がありますし、アセッサーが対面のような緊張感の中での反応を見るのも難しいためです。しかし、アセッサーの方も工夫されて、必要なコンピテンシーを把握することができました。
また、“ニュー・ノーマル”といわれる中、会議などもオンラインがほとんどですので、そうした環境でどう自分の意見を発言できるか、他の人の考えを確認できるかといったスキルを見ることができたのはよかったと思います。

相原:全体感でいうと、アセスメント自体はかなり機能していて、リモートで大分できるというのが実感です。あとは、もう少し慣れてきて、よりよいやり方を2~3年模索すれば、さらによくなっていくと思います。一方で、そうはいっても、グループ討議や面接のようにフェース・トゥー・フェースが望ましい部分もあるので、対面で実施できる状況になった場合は、組み合わせて行うのがよいかと考えています。

田上:今の環境にマッチしたアセスメントのあり方をご実感いただけたのかなという印象を受けました。

リモートならではのメリット・デメリットを体感

田上:改めて振り返って、リモートでアセスメントを実施するメリット・デメリットはどのような点でしょうか。まず、メリットから教えてください。

長谷部:早期にアセスメントを実施し、ビジネス側のニーズにより早く応えられたのが一番のメリットだと思います。
また、今回は、全国各地の社員が大勢参加されました。昨年までは東京に集まってもらっていましたので、交通手段や宿泊の手配も必要でしたし、移動の時間もかかっていました。遠い方だと、当日だけでなく、前日や翌日のスケジュールも確保する必要がありました。今回は、フレキシビリティをもって参加いただけたと思います。

蛭間:コスト面では、かなりメリットがありました。会議室を押さえたり会場を借りたりといったオペレーションも減りました。また、家庭の事情を抱えている社員にとっても、受けやすい環境になったこともよかったです。

田上:デメリットについてはいかがですか。

長谷部:小さいお子さんなどご家族が常にご自宅にいらっしゃるとか、十分なスペースがないなど、自宅がアセスメントを受ける環境にない方もいらっしゃいます。通常業務は何とかやっていても、集中してアセスメントを受けるのが難しいという方がいました。通信環境以外にそういう課題もあることが、実施してみてわかりました。

蛭間:集中できる環境がない場合はホテルなどを確保してよいと伝えてはいますが、完全に平等な環境で受けられなかったことで、受検者から「やりきれない気持ちもある」という声がありました。ただ、インバスケット演習だけでなく、面談やグループ討議もあり、かなり詳細なレポートをいただきましたので、その結果に納得がいかないという声は挙がっていません。

田上:リモートならではのメリット・デメリットが見えたわけですね。

今後の能力開発は、対面型とのハイブリッドに

田上:今後、能力開発のリモート化についてどのようにお考えですか。

相原:研修の担当部署とも、「かなりの部分はリモートでできる」と話しています。リモートにすれば、移動時間を節約できますし、やりたい時間にできるなど、非常に効率的です。昔はリモートというと知識をインプットするeラーニングくらいでしたが、実はリモートでも結構議論ができることがわかりました。思っていた以上に有効に活用できるというのが実感です。これを使わない手はないし、我々はもっと習熟するべきです。
ただ一方で、対面型の研修のよさもあります。インフォーマルなネットワーキングであるとか、ちょっとしたヒントからアイデアを生み出すといったことは、フェース・トゥー・フェースのほうがよいでしょう。ですから、かなりリモートにもっていきつつ、両者のハイブリッドを模索するというのが、大きな方向性です。
例えばブレーンストーミングをする場合、今はまだフェース・トゥー・フェースのほうがはるかにやりやすい。それをリモートでどこまで解決できるのか。運用の工夫なのか、ツールが必要なのか、あるいはフェース・トゥー・フェースがいいのか、見極めていく必要があります。ただし、フェース・トゥー・フェースで研修をするにしても、ある程度リモートで終わらせておいて、必要な部分だけをフェース・トゥー・フェースにするというやり方が主流になると思います。
また一方で、3~5年後くらいには別の副作用が出てくると思います。今はどちらかというとリモートに振る方向ですが、フェース・トゥー・フェースのよさは間違いなくあり、おそらく全部をリモートにはできません。注意して見続け、最適なやり方を模索していかなければと思っています。

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できることに目を向け、早く小さく始める

田上:御社はいち早くアセスメントをオンライン化されましたが、多くの企業は今まさに検討されている状況だと思います。そうした企業に向けてアドバイスをいただけますか。

相原:企業の仕事の仕方によって違いはあると思いますが、“ニュー・ノーマル”を考えると、リモートを活用していかないと競争に遅れる気がします。やはりスピード感が違いますし、世界中で一斉にできるメリットもあります。ですから、慎重に考えて完璧にできると思ってからやるのではなく、早く小さく始めることをお勧めします。やってみて課題が見つかったら、どうすればよくなるかを検討するということを繰り返していくと、違うものが見えてくるはずです。

長谷部:私自身はどちらかというと、新しいものを積極的に受け入れにくい性質があると自覚しています。ただ、仕事の立場上、変化を受け入れ変化を起こしていく必要があります。今回のことでいうと、管理職昇格試験を遅れさせるわけにはいかないというビジネス上のニーズが一番にありました。
その際に、「これもできない」「あれもできない」とできないことに目を向けるのではなく、何ができて、それによってどうカバーできるか、必要要件を満たせるのかと、できることから考えていくと、始めやすいと思います。

田上:実感がこもっていらっしゃって、力強いお言葉ですね。蛭間さんはいかがですか。

蛭間:できないだろうと思うことも、MSCさんのサポートでかなりの部分が可能になると思います。例えば、大部分はリモートで行うが、インバスケット演習だけ紙で送るという方法もあるとか、いろいろな方法を模索していただけますので、「できない」と検討する前からシャッターを下ろすのではなく、できるやり方を模索し、ビジネスを止めないことが大事です。
当社は、アセスメントをオンライン化したことで、6月に実施することができました。おかげで、当社の管理職候補者、またそこから見えてくる全社的な共通課題により早く気付くことができ、先日の報告会はかなり盛り上がりました。実施したことで課題が見え、次の一手を打つことができますので、恐れずに進んでいっていただければと思います。

田上:お話を伺って、新型コロナウイルスが広がり始めた2月ごろからの数ヵ月で、人事の皆さんが怒涛の勢いで変革を進めてこられたと感じました。
御社のお取り組みは、いち早くリモート型のヒューマン・アセスメントに切り替えた貴重な事例であり、多くの企業の参考になります。お忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。


対談者プロフィール

ファイザー株式会社 取締役執行役員 人事・総務部門長
相原修氏
大学卒業後、東レ入社。人事部、勤労部、アメリカ駐在等各部署を歴任。GEエジソン生命、DHLジャパン㈱執行役員人事本部長、ベーリンガーインゲルハイムジャパン㈱取締役人事本部長を経て、2018年9月より現職。リーダーシップ開発、エンゲージメントの向上、企業風土の変革、M&Aとインテグレーション、働き方改革等多くの変革イニシアティブに取り組んできた。一貫して人事マネジメントに従事し、現在新たな変革に挑戦している。

ファイザー株式会社 人事オペレーショングループ担当部長(給与・C&B担当)
長谷部ゆり氏
大学卒業後、菓子メーカー勤務を経てファイザー株式会社名古屋工場に品質管理スタッフとして入社。その後、工場担当人事、人事データ・プロセス管理、C&B、メディカル・Enabling Function部門人事を経験し、2019年3月から現職。グローバル主導の人事業務アウトソースプロジェクトやグローバル人事システム導入にデータ管理・プロセス担当として貢献してきた。現在は給与業務の改善と報酬制度改定に取り組んでいる。

ファイザー株式会社 人事オペレーショングループ
蛭間公平氏
大学卒業後、ファイザー株式会社にMRとして入社。2011年にエスタブリッシュ医薬品事業部埼玉中央営業所に配属。その後、2016年6月に公募制度を活用しHRに異動。これまで給与、勤怠、休職関連の業務に従事し、2019年4月より、現職のパフォーマンスマネジメント担当としてC&Bに所属。

株式会社 マネジメント サービス センター コンサルタント
田上あやの
大学卒業後、外資系製薬会社に勤務。グロービス経営大学院経営研究科修了(MBA取得)。前職では、MR、営業力強化支援、マネジメント職を通じ、戦略立案・人材育成など組織運営を経験。MSCでは、主にヒューマンアセスメント・トレーニングを担当。企業が求める人材像を理解し、人の強みや能力の幅を広げることで、各企業の課題解決に繋がる人材育成のサポートに情熱を注いでいる。

会社名
ファイザー株式会社
設立
1953年8月1日
売上高
4,586億円(2019年)
社員数
4,513名
事業内容
医療用医薬品の製造・販売・輸出入