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なぜリーダー職の半数は社内で充足できないのか ― その原因と打開策

「後継者準備不足」の課題をどのように解消するか?

社内の人材をリーダー職へ登用することは、多くの組織にとって重要な人材戦略の一つです。しかし、その取り組みが期待どおりの成果につながっているとは限りません。MSC/DDIの「HRインサイトレポート2025」によると、調査対象となった組織のうち、75%が「社内でリーダーを育成すること」を重視している一方で、重要なポジションを担う準備が整ったリーダーを確保できている組織はわずか20%にとどまっています。その結果、平均的な組織が社内人材で充足できているリーダー職の割合は49%にすぎません。

このギャップを放置すれば、将来的な人材パイプラインの不足を招き、組織の成長や事業継続に大きな影響を及ぼす可能性があります。では、この「後継者準備不足」の課題をどのように解消し、社内昇進をより確実な人材戦略へと変えていけばよいのでしょうか。

そのためには、単に「ポテンシャルのある人材を見つける」だけでは不十分です。重要なのは、将来のリーダー候補を継続的に育成し、その成長を可視化・追跡しながら、次の役割への準備を着実に進める、より包括的なアプローチです。

社内昇進がうまく機能しない理由

「人材の採用が現在直面する最大の課題である」と回答したリーダーは58%に上ります。こうした状況を背景に、多くの組織が外部採用だけでなく、社内人材の登用によってリーダー職を充足しようとしています。これは非常に合理的な選択です。

社内登用には、次のようなメリットがあります。

  • 組織文化や価値観を継承しやすい
  • 新しい役割への立ち上がりが早い
  • 高いパフォーマンスを発揮しやすい
  • ポテンシャルの高い人材の定着につながる

一方で、社内昇進が期待どおりの成果を生まないことがあります。その背景には、次のような見えにくい課題があります。

  • 勤続年数や経験年数を「昇進準備度」と混同している
  • 客観的なデータを用いずにポテンシャルを評価している
  • 「誰を昇進させるか」に注力する一方で、昇進に向けた育成が十分に行われていない
  • 後継者候補層の育成状況や成長度合いを十分に把握できていない

こうした課題の根底にあるのは、「ポテンシャル」に対する誤解です。

多くの場合、ポテンシャルは固定的な資質と捉えられ、過去の実績や経験を基準に判断されています。しかし、本来、リーダーシップは実践を通じて発揮され、成長していくものです。適切な支援や成長機会があれば、その能力をさらに伸ばすことができます。

継続的な評価と育成が、昇進の成功率を高める

リーダーへの昇進が失敗に終わるケースは、次の役割への準備状況ではなく、これまでの業績や勤続年数を基準に候補者が選ばれていることに起因する場合が少なくありません。その解決策として有効なのが、客観的なアセスメントデータの活用です。

アセスメントは成長への出発点

優れたアセスメントは、現在の能力を測定するだけにとどまりません。リーダーがどのように考え、変化に適応し、新たな状況に対応するかを明らかにします。特に、次の役割で直面する課題を再現したシミュレーションは、リーダーのポテンシャルを実践的な場面で把握するうえで非常に有効です。

こうした情報は、より精度の高い人材判断につながります。実際に、リーダー選抜の意思決定をアセスメントに基づいて行っている組織の方が、社内昇進の成功率が1.6倍高いことが明らかになっています。

育成は成長を加速させる原動力

アセスメントデータは選抜だけに活用されるものではありません。むしろ、その真価は能力開発にあります。アセスメントによって、リーダー一人ひとりの強みや能力開発領域が明らかになります。その結果をもとに、人材開発担当者は個々のニーズに合わせた最適な能力開発計画を策定できるようになります。

さらに重要なのは、育成プロセスそのものが、その人の成長可能性を見極める機会になることです。適切な支援を受けたときにどの程度成長できるのか。その成長速度や伸びしろこそが、次の階層への準備状況を判断する重要な指標になります。

つまり、ポテンシャルを見極めるだけで終わりではありません。必要な能力に焦点を当てて育成し、その過程で誰が大きく成長するのかを継続的に確認することが重要です。それが、後継者準備不足を解消する第一歩となります。

実際に、人材育成を戦略的かつ計画的に行っている組織では、社内昇進の成功率が大きく向上しています。

  • コホート型のリーダーシップ開発プログラムと組み合わせている組織では3.7倍
  • 段階的かつ体系的な能力開発プログラムを導入している組織では3.2倍
  • 上司による頻繁なコーチングを実施している組織では2.6倍

社内昇進を成功させるためには、適切なアセスメントと能力開発を組み合わせた継続的な成長サイクルを構築することが不可欠です。

まず、アセスメントによって開発すべき課題を明確にします。次に、その結果に基づく能力開発を実施し、成長を促します。そして再びアセスメントを行い、成長の度合いを確認するとともに、必要に応じて能力開発計画を見直します。このサイクルを繰り返すことで、リーダーは着実に次の役割への準備を整えていくことができます。

成長サイクル実践のポイント

最初に取り組むべきことは、「次の役割で成功するために必要な能力は何か」を明確にすることです。

そのうえで、多面的なアセスメントを活用し、あらゆる能力を測定するのではなく、その役割で特に重要な能力に焦点を当てて評価します。知識や個人特性だけを判断材料にするのではなく、実際の業務場面を想定した状況でどのような行動を取るのかを観察することが重要です。

また、ハイポテンシャル人材には、自身の現状と今後開発すべき能力を明確に伝える必要があります。そして、シミュレーション演習やストレッチアサインメントなどの実践的な経験を通じて成長機会を提供し、能力向上を促します。

ここで重要なのは、アセスメントや能力開発を単なる人事施策として捉えないことです。それらを「人材がどの程度の速度で成長しているか」を把握するための機会として活用することが求められます。

持続的な人材パイプライン構築の要諦

長期的に機能する人材パイプラインを構築するためには、「欠員を埋める」という発想から、「将来の組織能力を高める」という発想へと転換する必要があります。

そのためには、次の取り組みが重要です。

  • ビジネスへの影響が大きい重要ポジションに重点的に投資する
  • アセスメント結果を活用して、個々のニーズに合わせた最適な能力開発やストレッチアサインメントを設計する
  • 能力開発によって大きく成長する人材と、成長が停滞する人材を継続的に把握する
  • 行動変容だけでなく、事業成果への影響も測定し、実際の成果を通じてポテンシャルを評価する

まとめ

優れた組織は、ポテンシャルを評価するだけではありません。ポテンシャルを開発し、その成長を継続的に確認しながら次のステップへと導いています。

これからの時代に求められるのは、年に一度の静的な評価制度ではなく、アセスメントと能力開発を継続的に循環させる仕組みです。

将来にわたって優れたリーダーシップ・パイプラインを構築するのは、この「アセスメントと能力開発のサイクル」を組織文化として定着させた組織だといえるでしょう。

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■執筆者: DDI エグゼクティブ・サービス担当バイスプレジデント エリック・デュアリング

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