リモート型 vs 対面型のリーダーシップ開発:リモート型学習の効果
~リモート型と対面型のリーダーシップ開発の効果に関する疑問にお答えします~
パンデミックの影響によりリモートワークが進みましたが、リモート型と対面型のリーダーシップ開発の効果に関する疑問が残っています。
パンデミックが始まったころ、多くのクライアントがリーダーシップ開発をリモート型にすべきか、対面型にすべきかといった疑問をもち、単にトレーニングを延期することがより安全な選択肢であると考える人もいました。しかし、ワクチンが普及し始めた今も、リモートワークやリモート型学習が浸透しているという現実を目の当たりにしています。今こそ、リモート型と対面型のリーダーシップ開発についての疑問に答える時といえます。ここでは、以下の疑問についてご紹介します。
・リモート型と対面型のリーダーシップ開発の違いは何か?
・バーチャル・クラスルーム (リモート型トレーニング)はうまく機能するのか?
・リモート型の学習者体験はどのようなものか?
・最適なリモート型のリーダーシップ開発を実施するためには?
リモート型と対面型のリーダーシップ開発の違いは何か?
リモート型と対面型のリーダーシップ開発に関する最大の誤解は、リモート型は自己学習、対面型は他者とともに学ぶことを意味すると思っていることです。自分のペースで進めるeラーニングやオンデマンド講義、ウェビナー などの学習形式の中には、確かに自分一人で行うものもあります。これらの学習形式は、概念を学んだり情報のインプットには最適ですが、学習者同士でスキルの練習をしたり、つながりの場が与えられるものではありません。
一方で、リモート型のリーダーシップ開発では学習者同士を結びつける体験を作りだすことができ、対面型のリーダーシップ開発と比較しても、相対的に一貫性が保たれています。学習者はグループに分かれてコンセプトを掘り下げて検討したり、ストーリーを共有したりします。さらに演習に取り組み、2人1組や小グループでスキルの練習もします。これらを通じて、つながりを築くことを目的としています。
トレーニング後には、人脈も広がります。彼らは継続的に会う機会を設け、トレーニングとは関係のない話題でも、気軽に連絡を取り合えることができるようになります。唯一の違いは、リーダーシップ・トレーニングを対面で行うか、自宅から行うかだけのことです。
また、グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト調査によると、対面型の学習が依然として強く望まれている一方で、オンラインでの学習を好むリーダーが増加していることが示されています。
バーチャル・クラスルームはうまく機能するのか?
では、わかりやすい比較として、対面型とリモート型の両方でトレーニングを実施したお客様の最新の事例をご紹介します。このお客様は、これまで対面で行っていたフロントライン・リーダー向けの能力開発プログラムを、パンデミックが始まった2020年にバーチャル・クラスルームに変更しました。
このプログラムでは、コミュニケーション、コーチング、変革推進、インクルーシブな環境の醸成に焦点を当てており、これまで対面での学習が不可欠であると考えられていました。直属の部下との問題解決の話し合いや難しい対話の練習は、物理的に同じ部屋で学んだほうが心地がよいからです。それでは、リモート型と対面型を比較して明らかになったことは何でしょうか? その結果は、とても興味深いものでした。
- 学習者は、リモートでの学習環境は対面型と同じくらい積極的に参画することができたと評価しています。
- グループワークは、スキル実習同等の効果が見られました。
- 学習者は、対面型と同等に、学んだ知識を職場で適用することに自信がもてました。
- バーチャル・クラスルームの参加者は、トレーニング中に他のリーダーと関係を構築することや経験を共有することについて、対面型よりも若干高い評価をしています(この企業では、リーダーの人脈形成において、否定的な影響はまったくありませんでした)。
DDIでは何年にもわたり、バーチャル・クラスルームに対する評価データを収集してきました。これらのデータからも、バーチャル・クラスルームの有効性は立証されています。
リモート型学習者の体験はどのようなものか?
私たちは、バーチャル・クラスルームの効果を熟知しています。対面型学習と同等に学習者が得るものはあり、彼らに行動変容を促すことができます。しかし、学習者はどのような体験ができるのでしょうか? それを好んでいるでしょうか?
その答えは少し複雑になりますが、やり方次第といえます。私たちは昨年、バーチャル・クラスルームを導入した多くのクライアントと仕事をした経験から、気づいたことがあります。
リモート型の学習を好むリーダーは、
- すでに優れた学習文化のある企業で働くリーダーです。これは何を意味しているかというと、学ぶことが奨励され、その状況が支持されていたというこということです。例えば、従業員は学習のために時間を割くことができ、上司は彼らの学習体験を聞いてフォローアップの支援をしています。
- 能力開発プログラムの実施に長けた企業で働くリーダーです。このような企業は、学習内容の明確な伝達、学習のスケジューリング、テクノロジーの提供やその使い方の研修などに優れていました。また、学習プラットフォームを介して教材を共有することで、学習者が容易に教材にアクセスし、職場でも活用できるようにしています。
- 最初から「テクノロジーに精通していた」わけではありません。彼らはテクノロジーを使いこなすためのサポートを受けていました。
- バーチャ・クラスルームのセッション中にカメラの電源を入れておくことで、参画意欲が向上しました。
- 多様性を尊重していることから、社内のさまざまな拠点や部署で働く学習者同士の交流を楽しんでいました。
リモート型の学習で苦労するリーダーは、
- これまであまりリーダーシップ開発を行っていなかった企業で働くリーダーです。トレーニング実施前の話し合いやフォローアップの話し合いも少なく、上司からのサポートも十分に得られていませんでした。さらに、学習が日常業務の弊害にならないようにすること望んでいるマネジャーもいました。
- 日常生活を維持するために必要不可欠な仕事に従事している、あるいは、危機に瀕している企業のため、学ぶ時間をとることが困難な企業で働くリーダーです。トレーニングに参加することでプレッシャーが増し、参加するのに適した状況ではありませんでした。また、物理的に気が散ることが多い環境に置かれているなど、周囲の環境が学習に適していない人もいました。
- パソコンにカメラがついておらず、セッション中は積極的に参画することができませんでした。
- 学習教材にアクセスするのが難しく、トレーニングの事前準備に苦労し、参加意欲に悪影響が及びました。
最適なリモート型のリーダーシップ開発を実施するためには?
これまで述べた洞察を基に、私たちが学んだリモート型学習を最適化する方法とは、どのようなことでしょうか? ここでは、いくつかのベストプラクティスをご紹介します。
- 技術的なオペレーションを担う専任の役割は不可欠。 私たちはこの役割を「プロデューサー」と呼んでいます。プロデューサーは、学習者とファシリテーターの両方をサポートし、誰もが問題なく円滑にセッションに参加できるようにします。
- 所要時間は重要な要素。 最大3~4時間が妥当です。コース設計によっては、セッション中の実習や作業量を調整し、集中して参加できるようにするために、所要時間をさらに短くする必要もあります。
- 学習効果の高いインストラクショナル・デザインが重要。 対面型トレーニングのコンテンツをそのままリモートに置き換えればよいわけではありません。短時間のセッションを設計するには、コンテンツを取捨選択し、学習者がセッションに集中し続けられるように、ビデオ演習やスキル実習といったさまざまなアクティビティを組み込む必要があります。
- 学習教材へのアクセスを容易にする。 これにより、学習者は円滑に課題を完了させることができ、良い学習経験を得ることができます。理想的には、学習管理システム(LMS)やデジタル学習プラットフォームなど、学習教材に容易にアクセス可能な総合ポータルサイトを自社でもつことが望ましいといえます。
- ブレイクアウトセッションはうまく設定しなければならない。ブレイクアウトセッション中でも指示がわかりやすいように工夫する必要があります(チャットやホワイトボードを活用して)。そして、ファシリテーターが様子を見ながら介入したり、フィードバックを与えたりすることで、緊張感を維持します。これにより、学習者が議題から脱線することなく、確実に話し合いに参画できるようになります。
- 参画意欲を高めるうえで、カメラを「オン」にするのは重要。
- リモートでも休憩は必要。 5分以上の休憩が必要です。
リモート型、および対面型トレーニング共通のベストプラクティス
リモート型、対面型を問わず、リーダーシップ開発に当てはまるベストプラクティスをいくつかご紹介します。
- 参加者数の問題。 ファシリテーター主導のバーチャル・クラスルームにおいて、対面型よりも参加者数を増やすことはできません。もし100名規模のセッションを企画しているとしたら、それはトレーニングではなく、ウェビナーになります。グループディスカッションを含むインタラクティブなバーチャル・クラスルームに最適な参加者数は、12~15名です。これは世界各地で異なるかもしれませんが、オーストラリアでは、このサイズが理想的です。16~20名の参加者数でも効果はありますが、一部の学習者からは「双方向のやり取りが少ないと感じた」というフィードバックがありました。多くの参加者が意見やコメントを述べる可能性があるため、ファシリテーターがグループに対して話し合いのテーマを出す頻度が少なくなります。
- 環境の問題。 リモート型においても学ぶ環境は重要です。セッション中に問題が発生したり、同僚から妨げられたりする可能性のある職場でバーチャル・クラスルームを行うことは、対面型と同様に困難です。インターネットに接続できる静かな場所を確保することが重要です。
- 学習文化の問題。 学びと成長のために時間をかける必要があります。また、学習者の上司も関与しなければなりません。リーダーシップ開発のROI(投資対効果)を得るためには、上司が学習者を支援し、良いコーチになる必要があります。
リモート型学習体験のメリット
バーチャル・クラスルームは今後も普及するでしょうか? 私たちはそう考えています。パンデミックの中で実施可能な学習方法の一つであること以外にも、多くの利点があります。リモート型と対面型のリーダーシップ開発の影響を評価した私たちの調査において、バーチャル・クラスルームも対面型と同等の効果が得られることが明らかになっています。
もう一つの利点は、より多様な学習者を世界中のどこからでも集めることができることです。さらに、物理的な会場やランチの手配をしたり、学習者を移動させたり、教材を発送したりする対面型に比べて、リモート型の学習は簡単に設定することができます。
バーチャル・クラスルームは、コロナの影響に左右されず、あらゆる企業の学習・能力開発戦略の重要な一部になり得ます。そして、企業がリモートでさまざまな場所から人を集め続け、人材プールを構築できるようになれば、リモート型の学習体験はさらに重要になってくるでしょう。
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