コストセンターから収益推進へ:CEOが求めるHRの進化
先見型人事の条件
多くの人事部門は、本来“先を読む戦略”を取るべきところ、目の前の課題対応に追われているという、厳しい現実があります。しかし、勝てる人事戦略には、チェスト同じく「先を読む力」が不可欠です。数手先を見据え、変化を予測し、結果を形づくることが求められます。
すでにこの発想で動いている人事がいます。私たちは彼らを 「先見型人事」と呼んでいます。先見型人事を有する組織は、質の高いリーダーが33%多く、業績上位に入る確率が2倍高くなっています。
その違いはリソースではなく、マインドセットにあります。受動・反応型人事が日々の業務の対応に追われる一方で、先見型人事は「明日のリーダー」をすでに育てています。
では、両者を分けるものは何でしょうか?答えは、優れた人事部門が徹底して実践する 4つの不可欠な行動にあります。
先見型人事を定義する4つの行動
1. 人材戦略を「将来のビジネス」に結びつける
受動・反応型人事は、人員に欠員が出るたびにその埋め合わせをし、社内の適任者や外部採用に頼ります。一方、先見型人事は、3〜5年先の経営戦略をリーダー人材に求められる要件に落とし込み、現在の人材・育成の意思決定に反映させています。その成果は明確です。昇進後に成果を出すハイポテンシャル人材の成功率は24%高まります。変化の速い今、成果を出すまでのスピードは極めて重要です。
さらに、この先見性は経営層からの信頼を獲得します。彼らは、経営層の積極的な支援を得る確率が2.1倍。これは、必要なリソースと影響力をもたらす重要な後押しとなります。
そのために、経営戦略とリーダー要件を結びつけ、階層ごとに整合性を持たせることで、長期戦略を支える体制を築きます。
人材戦略が「次の四半期」までしか視野に入っていないとしたら、すでに遅れています。
2. 「深刻な状況になる前」に能力ギャップを予測する
正確な予測は、コストのかかる失敗を防ぎ、危機発生時のダメージを最小化します。
だからこそ、先見型人事は将来必要となるリーダー人材を予測するための体系的なプロセスを導入している確率が2.7倍高いのです。人材を誤った役割に配置する代償は大きいですが、それを回避する方法があります。その鍵は「迅速かつ頻繁な計画」です。彼らは年1回ではなく、毎月または四半期ごとにシナリオプランニングを実施しています。これにより、混乱が起きても、「とりあえず良さそうな人」を探すのではなく、準備の整ったリーダーを確保できます。
これは警鐘です。リーダーシップの欠如に気づいた時点で、すでに手遅れなのです。
3. 実際のビジネス課題を解決する能力開発を設計する
CEOが求めるHRの進化において、画一的なリーダーシップ開発はもはや時代遅れです。
では、何が求められているのでしょうか?
答えは、戦略的優先事項に直結し、測定可能なビジネス成果を生み出す育成です。しかも、それは各リーダーの現状のニーズと将来の成長に合わせて設計されます。能力開発が現実のビジネス課題に直結すれば、その投資は何倍もの成果を生みます。投じた1ドルが、リーダーの能力とビジネス成果の両方を高める投資になるのです。
4. 「本当に意味のある指標」を測定する
先見型人事は、測定の重点を事業成果に置いています。彼らは、研修の完了率や満足度といった“見た目だけの数字”ではなく、ビジネスに直結する指標――たとえば就任準備度合いや戦力化までの時間、リーダー1人あたりの収益など――に切り替えています。
実際、先見型人事は、単なる研修の参加率ではなく、後継者育成プログラムの実効性と成果を測定する確率が2.3倍高いことが明らかになっています。
人材施策をビジネス成果に結びつけられないとしてたら、その測定項目が間違っています。
まとめ
人事部門は重大な選択を迫られています。
先を読むか、取り残されるか。
受動・反応型人事の1日は、組織に必要なリーダーシップの優位性を築くチャンスを失う1日です。
先見型人事になるには、発想の転換が不可欠です。
・指示を受けるだけの存在から、戦略的アドバイザーへ
・空いたポジションを埋めるだけから、能力を構築する役割へ
・活動量の指標から、ビジネスインパクトを測る指標へ
この変化こそが、あなたの役割を高め、組織の未来を動かす力になります。
受動・反応型人事から先見型人事への転換は、確かな結果を生んでいます。
そのビジネス成果を手にする準備は、今、整っています。
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■執筆者:DDI社行動研究分析センター(CABER) ディレクター ステファニー・ニール
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