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2022年に向けた人事のリーダーシップの課題

2022年に向けた人事のリーダーシップの課題

~人事部門が知っておくべき3つの重要な課題と4つの取り組み~

膨大な離職者、急速な市場の変化、世界的なサプライチェーンの崩壊。組織はこのように絶え間ない急激な変化に対応しています。そして、人事部門はあらゆる階層のリーダーがこれらの変化に対処できるように、今後の展開に備えなければなりません。MSC/DDIの調査では、2022年にリーダーと組織が成功するために人事部門が知っておくべき、リーダーシップに関する人事の課題を明らかにしています。

このコラムでは、2022年に成功するために人事部門が知っておくべき3つの人事のリーダーシップに関する重要な課題と、先手を打つために今実施すべき4つの取り組みをご紹介します。

 

MSC/DDIのHR Leadership Insight Reportでは、1,700以上の組織の、15,000人以上のリーダーの回答を分析し、急速な変化によって人事がどのような影響を受けているかを検証しています。また、人事部門がこの絶え間ない混乱状態を最大限に活用して、成果に変える機会にするための方法を明らかにしています。ここでは、多くの組織がハイブリッド型勤務を取り入れ、将来の戦略目標を再検討し始めているなか、人事のリーダーシップに関する3つの重要な課題と、今後1年間でこれらの課題に取り組むために人事部門ができることについてお話します。

人事部門の3つの重要課題:2022年に向けて何に注力すべきか

ディスラプションの発生を防ぐためにできることはあまりありませんが、組織がどのように対応するかは重要です。あらゆるディスラプションへの対応を人事部門だけで決定することはできないかと思いますが、ディスラプションに対する人事部門の役割は、全従業員に影響を与えます。ここでは、今後の大きな課題を3つご紹介します。

 

1. 人事は戦略的な側面を磨かなければならない

今、組織は優秀な人材を切望しており、人事部門にはトップレベルの能力が求められています。しかし、人事部門は人数が少ないうえに、相反する優先事項が多くあるため、喫緊の人材ニーズに対応するという役割を果たすことで苦労しています。むしろ、多くの人事が受動的な役割を強いられていると言えます。

私たちは人事部門の典型的役割を3つのカテゴリーに分類しました。

 

  • 受動/反応型: ビジネスニーズに対応する
  • 協働型: ビジネス目標に向けて、事業部門のリーダーと協働する
  • 先見型: ビジネス目標に関連して、将来の人材のギャップを事前に予測する

 

私たちは数年前からこの3つの役割を追跡しており、人事が先見型として、より戦略的な役割に向けて着実に進化することを期待していました。しかし、2021年の調査では、自社の人事が先見型の役割を果たせていると回答した組織はわずか10%でした。2018年から40%低下しているのです。これは最近のパンデミックの影響を大きく受け、多くの人事部門が重要な業務運営をサポートするために、いかにして従業員の健康を維持するかに注力せざるを得なくなっているということです。

自社の人事を先見型と位置づけている組織は、適切な採用の判断を行う確率が高くなります。また、優れた人材の供給体制があり、変化に効果的に対応できる確率も高くなっています。しかしこのような組織でも、パンデミックのような大混乱に遭遇すると、受動/反応型にならざるを得ないのかもしれません。

 

混乱が生じたとき、人事は目の前の人材ニーズに柔軟に応じなければならず、時にはより受動的な役割を担うといった対応を余儀なくされることもあるでしょう。しかし、それと同時に先見的な役割を果たすことも怠ってはなりません。人事が受動/反応型の役割を担っている組織は、そうでない組織に比べて、変化に効果的に対応する確率が3分の1になってしまいます。

このような影響は、直属のチーム以外にも及びます。実際に、リーダーが変化にうまく対応している組織では、変化に苦心しているリーダーを有する組織に比べて、離職率が平均15%低くなっています。

 

2. リーダーシップを発揮して離職率を下げる

パンデミックの影響で退職者が過去最多となり、多くの組織において、離職率の上昇を危惧しています。実際、過去1年間に離職率が上昇したと回答した人事担当者は53%、大幅に上昇したと回答したのは20%でした。

膨大な退職者に関する他の統計によると、40%もの従業員が来年の退職を予定していることが示されています。

従業員が仕事や人生に求めるものを見直すなかで、退職は避けられないかもしれません。しかし、人事がこの離職の流れを止めるには、まず、リーダーシップに目を向けるべきです。

この問題に対処するために、リーダーにはどのようなスキルが必要でしょうか。グローバル・リーダーシップ・フォーキャスト2021調査では、リーダーが燃え尽き症候群や離職に積極的に対処するのに必要なスキルとして、「共感」「コーチングと権限委譲」「影響力」などを挙げています。

 

しかし、退職理由のなかにはリーダーがコントロールできないものもあります。HR Leadership Insight Reportでは、離職率が高い時期にリーダーがチームを率いるのに役立つスキルを明らかにしています。

 

  1. 権限委譲とエンパワメント: この2つのスキルをリーダーが活用することにより、これまで以上に増えた業務をチームがこなせるようになります。
  2. リモートで働くチームを率いる: 柔軟な働き方を求める従業員が増えるなかで、リモートで働くチームを率いるスキルに長けたリーダーは、在宅勤務者やハイブリッド型チームで働くメンバーと確固たる関係を築ける確率が高くなります。
  3. デジタル感覚: 場合によっては、退職した従業員の業務を補うために、リーダーはテクノロジーの活用を増やしてチームの効率化を図ることが必要となる可能性があります。

 

さらに、リーダー自身の定着にも配慮しなければなりません。リーダーの離職率は一般社員に比べて低いものの、私たちのデータによると、昨年1年間でリーダーの離職率は18%増加しています。このようにして空いた役職を補充するために社外から人材を採用する場合、その人が組織文化に適合し、かつ斬新なアイデアや視点をもたらすことができるかどうかというリスクを負うことになります。社内で昇進したリーダーが成功する確率は、社外から採用したリーダーよりも25%高いことから、多くの人がその実現に苦労しているのです。

 

しかし、社外から採用することが間違った選択であるというわけではありません。新しいリーダーを迎える必要がある場合は、次のような方法で成功率を高めることができます。

  1. 新たな職務に就任する前に、対象者の強みと弱みを把握するために、アセスメントを活用する。
  2. 上司と定期的に能力開発計画を見直すことを、リーダーに促す。
  3. 必要なときに瞬時に活用できるオンデマンドの学習ツールをリーダーに提供する。
    (ただし、これらのツールはリーダーが基礎的なスキルを事前に習得している場合に最も効果を発揮します)

 

3. 整合性が取れていないことにより波及する影響

混乱期には、人事とビジネスとの間に整合性が取れていない状況が悪化することがあります。そして、CEOとCHROが同じ考えを持たない可能性がさらに高くなり、その影響は組織全体に波及します。

CEO リーダーシップレポート2021」によると、CEOとCHROの連携が取れている場合、その組織は同業他社と比較して、業績上位に入る確率が1.5倍になります。逆に、連携が取れていない場合は、人事とビジネスの間に亀裂が生じることがあります。これは、「私たち 対 彼ら」のような環境を助長し、迅速に行動することがより困難になる可能性があります。

人事がビジネスとの連携の課題を克服するには、経営幹部と協働で優れたリーダーシップ戦略を構築する必要があります。そうすることで、CHROは戦略目標を支えるための人材戦略に具申することができます。また、最高経営幹部は明確な期待値とリーダーシップ・コンピテンシーを確立する必要があります。さらに、主要なダイバーシティ目標にもコミットしなければなりません。これらの整合を取ることは、組織全体の結束力を生み出すのに役立ちます。

4つの人事施策を行うことで、先手を打つ

上記の推奨事項に加えて、組織が人事のリーダーシップに関する課題に先んじて取り組み、これからの1年を成功させるために、人事部門にできることがあります。

 

1.  変化に対応できるリーダーを育成する

事業戦略に大きな変化が生じたときには、変化に対応するためのリーダーシップ・トレーニングを提供します。全階層のリーダーを対象に一貫したトレーニングを提供することで、組織全体が効果的に変化に対応できるようになります。人事部門でも、変化に対応することは難題です。また、変化の頻度とスピードが増している状況下で、変化に対応する準備が整っているリーダーがどの部門にもいなければ、リスクは大きくなります。

変化に対応するためのトレーニングが提供される組織では、優れたリーダーシップを発揮する確率が25%から50%へと倍増します。

 

2. 新職位への移行に伴う支援を確実に提供する

人事部門は、変化に対応するためのトレーニングに加えて、リーダーシップ開発プログラムのラインアップも把握しておく必要があります。ディスラプション時代には、組織の優先項目が大きく変動することから、リーダーシップ開発が見過ごされる可能性があります。GLF2021リーダーシップ・トランジション・レポートによると、新職位へ移行したリーダーのうち、リーダーシップ・スキルのトレーニングを受けたリーダーの割合は、2019年初旬の61%から2020年には48%に低下しました。

人事部門は、リーダーの成功に向けた準備度合いを確認するために、自社の人材開発プログラムを精査する必要があります。そして、混乱期には、リーダーが新職位への移行に伴う支援を受けられるよう、特に注意を払う必要があります。リーダーが最も支援を必要とするのはこの時期なのです。

 

3. 質の高いダイバーシティ&インクルージョンプログラムに注力する

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)プログラムは、単に組織内の管理者比率といった特定の属性の割合を改善するだけではありません。これらのプログラムは組織文化全体に大きな影響を与え、あらゆる背景を持つ人材を惹きつけ、定着させるのに役立ちます。実際、HR Leadership Insight Report 2021では、質の高いD&Iプログラムを持つ組織は全体的に質の高いリーダーを有する確率が9倍高く、重要な役割を担うリーダーの数が28%多いことを示しています。

人事部門は、現行のD&Iプログラムの質を向上させること、あるいは現在プログラムがない場合はその導入に注力することで、組織文化をより良い方向へと変えることができます。多様性を受容する文化に変えることで、組織は多様な人材を採用する確率が高まり、より多くの有能な人材をより早く発掘することが可能となります。

 

4. 一貫性のあるプロセスで採用・昇進を行う

一貫性のない採用活動を行うと、非効率的なうえに、暗黙のバイアスがかかりやすくなります。その結果、適切な採用の判断を下すことが難しくなります。後任者の選定に苦心している人事は、体系化された選考プロセスを導入することで潜在的なバイアスを最小限に抑え、採用と昇進の判断の質を向上させることができます。

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さらなる調査結果は、 HR Leadership Insights Reportをご参照ください。

なお、日本語版は2022年1月にリリースを予定しています。

原文はこちら


執筆者

 DDI 応用科学研究センター

 シニアサーチマネジャー ロージー・ライネ