2022年注目のリーダーシップ関連トピック トップ10
~トップインフルエンサーの投稿内容から予測したリーダーシップに関する注目のトピック~
2022年に注目すべきリーダーシップ関連のトピックやトレンドは何でしょうか。また、これらのトレンドは未来の仕事をどのように形成していくのでしょうか。ここ1年の激動の変化により、職場でのさまざまなことが再定義され、組織やリーダーが成功するために求められることも大きく変わりました。
DDIは過去7年にわたり、Twitterのトップインフルエンサー20人(本稿末尾の一覧参照)の投稿内容を分析し、その年のリーダーシップに関する注目のトピックを探ってきました。
最新の分析によると、2022年の注目の話題は、パンデミックによる絶え間ない試練に市場と経済がどのように耐えていくかという不確実性の高まりと、高い離職率といった複合的な影響から浮上してきています。
ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーたちの発言や投稿を基に順位づけした2022年のランキング、上位10のトピックは次の通りです。
1. 最優先事項として従業員のウェルビーイングの重要性が高まる
パンデミックによる明るい兆候の一つは、組織が従業員や地域社会の健康を守る必要性に迫られたことです。その結果、ウェルビーイングは昨年に続き、ビジネスの最優先事項となりました。従業員が健康でなければ生産性を上げることはできません。そして確実に家族にも影響が及びます。
現在、組織は従業員へのサポートを強化し、家族への福利厚生を充実させています。また、ウェルビーイングを重視することで、リーダー自身やチームメンバーには大切な人をケアするための時間と支援が必要であると、リーダーの意識も高まりました。従業員のウェルビーイングにリーダーがどの程度関心を持ち支援するかは、特に定着率を左右する最大の要因として、これからの1年、引き続き重要になるでしょう。
2. 「大量退職」が組織文化を変える
2021年末の離職者数は過去最高の450万人となり、「大量退職」がすぐに解消されないのは明らかです。一方で、経済的な不確実性が高まることにより、職場に安定を求める人は増加傾向になると予測されます。そして従業員は、「信頼」という、組織に不可欠な資質を持つところで働きたいと思うようになるでしょう。
信頼できる組織文化やリーダーを有することは、急速に差別化要因になりつつあるのです。特に、リーダーシップや社会的な制度に対する信頼がかつてないほど低下していることを考えると、これは信憑性が高いと言えます。実際、「信頼」をテーマとしたソリューションをリーダーシップ開発プログラムに組み込む組織が増えています。
そして何より、信頼関係を築き、従業員の忠誠心を確実に得るうえで、リーダーは中心的な存在であり続けるでしょう。
3. 不動のスキルはなくなる
ここ数年、特に専門的・技術的なスキルの再教育(リスキリング)が話題になっています。しかし振り返ると、この1年半はリーダーシップ・スキルの大改革期として、歴史に刻まれるかもしれません。かつて身につけたコミュニケーションなど、従来のリーダーシップ・スキルは、これまでとは異なるリモート環境に合わせて刷新する必要がありました。リモートワークやハイブリッド型勤務への転換により、リーダーシップ開発は一度きりで完結してよいのかという疑問が生じています。
そのため、リーダーは常にスキルの刷新とスキルアップが必要になります。リーダーはコロナ禍に学習時間を増やしたという調査結果からも、彼らがスキルアップのために努力を惜しまないことは明らかです。組織は、何年も変わらない職務記述書やスキル体系から脱却することで、スキルを磨き続けられます。また、ビジネスの戦略的優先事項に合わせてサクセス・プロフィールを見直し刷新するプロセスを確立することで、より継続的に重要な能力を定義できるようになります。
4. ロボットは人事を助けるために存在する
この1年、多くの業界で自動化が進みましたが、今後も人材不足を解消するために、自動化の重要性が増すことが想定されます。音声自動応答システム(IVR)により人手不足が緩和されたカスタマーサービスセンターの例は、これを如実に物語っています。
人事部門が史上最大の離職者の後任を採用する際に直面する課題を考えると、ロボットや自動化ツールが大いに役立つかもしれません。人事プロセスも同様に、より創造的な仕事は人に任せて、一部を自動化することで効率化を促進すれば、採用までの期間を短縮できます。組織が自動化を成功させるには、自動化がもたらすメリットを効果的に伝え、対応できるリーダーが必要です。
5. 従業員体験の新たな急所
従業員体験は、2年前に私たちの注目のトピックに急浮上しましたが、現在の人材獲得競争のなかで重要性が高まり続けています。2020年と2021年は、従業員にとって大切な学びの年でした。特に、専門性の高い若手人材は、働く場所と働き方について、大きな期待を抱いています。
柔軟な働き方や雇用形態の選択肢を大幅に増やすことは、人材の流動性と離職率の上昇への対応策として役立ちます。柔軟な働き方を策定することは今後も従業員体験の要になると思われますが、学習と成長の機会も同様です。
柔軟な働き方とともに、スキルアップやキャリアアップへの要求も高まっており、組織が無視できないものとなっています。そのため、リーダーは能力開発の議論や機会に対するアプローチの仕方を変えなければなりません。優秀な人材は、自分が評価されていると感じるだけでなく、将来の成長可能性を意識することがより重要になるでしょう。
6. テクノロジーは人中心に考えるべきという基調を定める
昨年は、特に小売業や接客業を中心としたデジタル・トランスフォーメーションの波に乗り、テクノロジーの進化が巻き起こりました。これはロータッチ(人が、集団的・画一的に対応すること)な未来を意味するものではなく、新しいテクノロジーを導入するときは、人々が快適に働けるようにするのが重要だということです。
人事部門がより効果的な採用をするために求められるテクノロジーは、人中心であることが不可欠です。これは、従業員の学習や能力開発に使用する際にも当てはまります。
また、AIやデジタルの進化を全面的に取り入れるには、新しい技術の可能性を見据えることのできるリーダーが求められます。将来のビジネス課題を解決するためにも、新しいテクノロジーの導入や開発に貢献できるリーダーが必要です。
7. 人材不足がダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)を促進する
この1年、組織はDE&Iプログラムに関する大きな進歩を遂げましたが、それでも優れた人材の確保と定着の問題を解消するには至っていません。今年は人材の採用と定着がこれまで以上に難しくなると予想されますが、DE&Iに優れたリーダーは特有の経験を持っており、それを役立てることができます。
組織は新しい情報源を模索し、隠れた候補者を惹きつけるDE&Iに長けたリーダーの専門知識を活用することで、メリットを得られます。また、人材が大量に流出するなかで、ダイバーシティはより多くの候補者を引き込む差別化要因になるでしょう。同様に、ダイバーシティへのコミットメントを示し、インクルージョンを促進することも、新たな候補者を獲得するのに役立ちます。さらに、多様な背景を持つ人材の離職防止にもつながります。
8. リモートワークにより、新旧のバイアスが顕在化する
リモートワークが平準化され、ネガティブな社内政治の影響は軽減される可能性がありますが、他のバイアスが浮上しています。近接性バイアスとは、物理的に近くで働く人に好感を持つというもので、管理が不十分なハイブリッド型チームのリスクとして、議論の中心となっています。
組織が、公平で多様性を受容する職場を目指すのであれば、リーダーはハイブリッド型の職場環境におけるパフォーマンスとポテンシャルをより適切に評価する方法を検討しなければなりません。
客観的なデータはバイアスのリスクを軽減し、重要な判断材料となることは明白です。例えば、組織やリーダーが選抜・昇進の決定を行う際に、質の高いアセスメントを通じて収集されたデータがあれば、限られた観察結果ではなく、個人の能力や経験に焦点を当てることができ、このリスクは軽減されます。
9. HRアナリティクスの新たな未知の領域
この1年で話題となったリーダーシップに関する共通のテーマは、より良いデータの必要性であり、人事部門ほどこれを確立することが重要な部署はありません。オフィス勤務や従来の働き方を変えることは、人材データと分析に大きな効果と期待をもたらします。
しかし、最も効果的なプログラムは、意思決定のプロセスから人を排除するのではなく、リアルタイムのデータを統合するために必要なテクノロジーを、リーダーに提供することです。そうすれば、より迅速で、よりデータに基づく客観的な意思決定が可能になります。理にかなった人材データシステムを目指すことで、最終的には、組織が将来に向けて成長する人材について偏りのない最新の見解を維持できるようになります。
10. 人材獲得競争における倫理観の重要性
昨年は、ビジネスにおいては倫理観が重要であるにもかかわらず見過ごされがちだと、強く意識させられる年でした。セラノス社の創業者であるエリザベス・ホームズ氏が刑事告発と投資家への詐取で有罪になったように、かつて信頼されていたブランドが、倫理的問題を見逃したり無視したりした結果、大きな代償を払うことになりました。このような例は、シリコンバレー以外にも多くあります。
これは、採用面接の応募者が倫理観や企業価値をより重要視するようになった時期に当たります。最近の調査では、82%の人が給与は高いものの倫理的に問題のある組織よりも、給料は低くても倫理的なビジネス慣行を持つ組織で働くことを選ぶと回答しています。
現在の人材獲得競争において、組織の評判とリーダーシップは、必要な人材を惹きつけるための差別化要因となり得るのですす。
2022年、注目のリーダーシップに関するトピックは、未来の働き方にどのような意味を持つか?
これらのトレンドは、今後の働き方にとってどのような意味を持つのでしょうか。これからの1年がどのような年になるにせよ、組織や人事部門のリーダーが、新たな人材の採用と能力開発の加速化において効果的で公平なシステムを確保するには、新しいアプローチを取る必要があることは明らかです。リーダーは今後も人材育成の中心的存在であり、コーチや成長モデルとしての役割がこれまで以上に重要になると考えられます。
そして何よりも、将来に向けて多様な人材を探し求め、育成し続ける組織が、今年もそれ以降も、不確実な時代に成功する可能性が高くなると言えるのです。
以下は、リーダーシップに関する注目トピックをまとめるために投稿を分析した、20人のインフルエンサーのリストです。
Abhijit Bhaduri |
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Adam Grant |
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Conor Neill |
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Dave Ulrich |
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David Green |
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Ester Martinez |
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Gordon Tredgold |
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Jacob Morgan |
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Jean Case |
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Jeanne Meister |
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Jim Stroud |
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Johnny C. Taylor, Jr. |
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Lewis Garrad |
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Meghan Biro |
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Sharlyn Lauby |
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Soumyasanto Sen |
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Stacy Donovan Zapar |
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Steve Boese |
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Susan LaMotte |
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Trish McFarlane |
■執筆者
ステファニー・ニール
DDI 行動研究分析センター ディレクター
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