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アセスメントで加速するリーダーの能力開発

成長を加速させる最適な組み合わせ:アセスメントと能力開発

旅に出る前には、自分が今どこにいて、どこへ向かうのかを明確にしておく必要があります。たとえば、GPSが最適なルートを導き出すには、現在地と目的地の両方の情報が欠かせません。これらによって、時間も燃料も効率よく使うことができます。

同じことが能力開発にも当てはまります。アセスメントを活用すれば、自身のスキルや知識の「現在地」を的確に把握でき、どこを目指すべきかがはっきりします。アセスメントは、リーダーにとっての「GPS」のような存在です。明確な目的地と現在地を知ることで、能力開発の取り組みはより効果的かつ目的に沿ったものとなり、自身の目標に最適な成長の道筋を歩むことができます。

一方で、多くのリーダーが、アセスメントは自分の成長のためではなく、会社の都合で実施されるのではないかという懸念を抱いています。しかし、リーダーシップ開発の文脈で正しく活用されれば、アセスメントは多忙なリーダーにとって、限られた時間の中で最大の成長を実現するための強力な支援ツールとなります。明確な指針がないまま時間やエネルギーを費やしても本質的な成果には結びつかず、結果として燃え尽きてしまうリスクもあります。

優れたアセスメントは、主要なコンピテンシーにおけるリーダーの強みと能力開発領域を明らかにします。スキル、経験、個人特性が、重要な局面でどのように力を発揮し、あるいは足かせになるかを可視化してくれます。こうした洞察により、リーダーは自分の成長と成功に最も大きな影響を与える領域に集中できるようになります。アセスメントはリーダーに「押しつけるもの」ではなく、「リーダーのために行うもの」なのです。

なぜアセスメントが能力開発の基軸となるのか

アセスメントは、リーダー自身の強みや能力開発領域を客観的に可視化し、深い気づきを促す非常に強力なツールです。信頼性の高いデータを通じて自己理解が深まることで、学びはより個人的かつ意味のあるものになります。アセスメント結果に自分の姿を見出し、「まさにこれだ」と納得できたとき、注力すべき方向が自然と明確になるのです。

また、自らのコンピテンシーや経験、個人特性が仕事のパフォーマンスにどのように影響しているかを理解するのにも役立ちます。これにより、能力開発は画一的なものではなく、一人ひとりに最適化された具体的で実行可能な取り組みに変わります。アセスメントは、リーダーの成長の旅路を導くコンパスとして機能し、最も影響のある領域に焦点を当てることができます。こうした明確さが、学びをより意味のあるものへと変え、成長スピードは加速されます。

一方で、適切なアセスメントがなければ、リーダーは時間や労力を本質的な成長につながらない領域に費やす恐れがあります。限られた時間を、誤った方向に投じる余裕はありません。アセスメントは、正しいスタート地点を明らかにし、効果的な成長の道筋を描く支援となります。

さらに重要なのは、リーダーが最も成長を必要としている領域ほど、自ら気づきにくい傾向があるという点です。「見えないものは、改善できない」のです。アセスメントは、現状の能力や行動傾向を明確にすると同時に、表面的な課題だけでなく、成長を阻害する隠れた要因までも可視化します。漠然とした「ポテンシャル」を、具体的なアクションへと変えていくのです。

“リーダーには、まだ表出されていないポテンシャルが眠っています。アセスメントは、そのポテンシャルを具体的かつ実践的な形で定義し、的を絞った能力開発へとつなげます。”

アセスメントを活用すべきもうひとつの重要な理由は「時間」です。MSC/DDIの最新調査によると、業務を遂行する時間を十分に確保できているリーダーは、わずか30%にとどまるという結果が報告されています。リーダーに求められる期待がますます高まる一方で、学びや成長のための時間を確保するのは現実的には難しい状況です。 アセスメントは、情報のノイズを排除し、真に成果につながるポイントに能力開発の焦点を絞ることを可能にします。これにより、リーダー自身にとっても、人材開発部門にとっても、貴重な時間とリソースを無駄にすることなく、より大きな成果を生み出すことができるのです。

リーダーがの「能力開発を目的としたアセスメント」から得られるメリット

リーダーは日々、複雑な課題に直面し、厳しいスケジュールに追われています。このような状況下では、感覚や経験に頼った手探りの対応には限界があります。限られた時間の中で最も効果的かつ効率的にリーダーの成長を促すには、アセスメントを活用して優先事項を明らかにすることが有効です。具体的なメリットは以下のとおりです。

  • 強みと能力開発領域の可視化:自分の得意分野と今後開発すべき領域が明確になります。
  • 自己認識の向上:自分の行動傾向や能力開発領域、個人特性について理解し、自己認識が高まることで、より効果的なリーダーシップを発揮できるようになります。
  • 成長スピードの加速:汎用的な研修ではなく、自分にとって本当に必要なテーマに絞った、パーソナライズされた能力開発計画が立てられるため、効率的な成長が実現します。
  • 進捗状況の確認:現状を正確に把握したうえでスタート地点を設定することで、能力開発の進捗を継続的に測定できます。

チームパフォーマンスの向上:自分のリーダーシップスタイルと、メンバーの特性との関係性を理解することで、チーム内の連携が強化され、より効果的なチームづくりが可能になります。

組織が「能力開発を目的としたアセスメント」から得られるメリット

アセスメントの活用は、組織全体の人材戦略にも大きな効果をもたらします。能力開発の方向性が明確になることで、公平性が保たれ、事業部門の目標と連動した取り組みが可能になります。その結果、時間・予算・労力を最小限に抑えながら、持続的な成果に結びつけることができます。

  • ビジネスニーズとの整合性の確保:個々人のスキルを、成功に必要な主要コンピテンシーと結びつけることができます。
  • リソースの最適化:実際の能力開発ニーズと乖離した研修や育成施策に、時間や予算を費やすことを防ぎます。
  • 能力開発計画に必要なデータを入手:客観的なデータに基づいて、より効果的な能力開発プログラムが設計できます。
  • バイアスの排除:主観的な判断ではなく、客観的なデータに基づいて意思決定を行うことで、公平で納得感のある能力開発が実現します。
  • リーダーの供給体制を強化:将来の役割に向けて成長を促し、リーダー候補のポテンシャルを見極め、計画的な育成を支援します。

実際に、アセスメントを能力開発の起点として活用している組織は、そうでない組織に比べて約2倍の確率で優れたリーダーシップ・パイプラインを構築しているという調査結果も報告されています。

切り離すべきではない「アセスメント」と「能力開発」

多くの組織では、「アセスメント」と「能力開発」を別々の機能として捉え、異なるチームがそれぞれ独立して取り組んでいます。このような分業体制はよく見られますが、両者の機能間のつながりが断ち切られてしまい、重要なタレントマネジメント施策の効果を損なう恐れがあります。

従来の分断

アセスメントは、多くの場合「採用」や「後継者育成」を担当するチームが担い、候補者や従業員を評価して、「誰を採用するか」「誰を昇進させるか」「誰を後継者候補とするか」といった選抜の判断材料として用いられます。その際に、行動面接や心理テスト、コンピテンシー評価など、将来のパフォーマンスを予測するための手法が主に使われます。

一方、能力開発は「人材開発(学習と成長)」のチームが中心となって行われます。彼らはスキルの開発やスキルギャップの解消、パフォーマンス向上を目的とした研修、コーチング、学習体験の提供に取り組んでいます。その目的は評価ではなく「成長の支援」にあります。 このような分断は、アセスメントが「一時点での評価」であるのに対し、能力開発は「将来を見据えた継続的な支援」であるという、時間軸や目的の違いから生じています。

この「分断された体制」は、リーダーシップ開発の観点から、大きな機会損失を生み出します。アセスメントだけでは、優れた人材を見極めても育成につながらず、「選抜の手段」で終わってしまいます。逆に、アセスメントに基づかない育成は、画一的な内容に陥り、個々のニーズに応えられないリスクがあります。

アセスメントと能力開発の統合による新たな可能性

アセスメントと能力開発は、タレントマネジメントというコインの「表と裏」のような関係です。両者を連動させることで、相乗効果を生む強力なサイクルが生まれます。

人事部門は、アセスメントと能力開発を連動させた取り組みを積極的に検討すべきです。これは単なる「業務の効率化」の話ではありません。「人材の成長」に対する発想そのものを転換する大きなパラダイムシフトです。

これまでのような分断された体制を見直し、アセスメントと能力開発が連動した「ラーニング・ジャーニー」を設計することで、より的確な人材の見極めと、より効果的な育成施策が実現します。その結果、リーダー個人だけでなく、組織全体にとって望ましい成果が得られるようになります。 すでに先進的な組織では、このような統合的アプローチが進みつつあります。変化のスピードが増す現代のビジネス環境では、「人材を的確に評価し、確実に育成する力」は、もはや「あればよい」ものではなく、「持続的な成功に不可欠な条件」なのです。

能力開発を目的としたアセスメントの種類

アセスメントにはさまざまな形式がありますが、大きく分けるといくつかの基本的なカテゴリーに分類できます。いずれの形式もリーダーに関する貴重なデータを提供するものですが、その目的や活用方法はそれぞれ異なります。

認識に基づくアセスメント

認識に基づくアセスメントは、「リーダーとしての自身の行動が、自分や周囲からどう受け止められているか」を明らかにするものです。自己認識を高め、継続的な成長を促すうえで非常に効果的です。

ただし、こうしたアセスメントは能力開発目的には非常に有用ですが、採用や昇進の判断材料として用いるべきではありません。なぜなら、このアセスメントの本質的な価値は、評価そのものではなく、「自分のリーダーシップが周囲に与えている影響に気づくこと」にあるからです。代表的な例は以下のとおりです。

  • 360度診断(多面評価)直属の部下、同僚、上司など、さまざまな関係者からフィードバックを得るアセスメントです。本人による自己評価も含まれるため、他者の視点との違いに気づくことができます。
  • セルフアセスメント(自己評価):客観的な評価を目的とするものではなく、内省を促すためのツールです。リーダーは自身のスキルや習慣を見つめ直すことで、「どう成長すればよいか」のヒントが得られます。たとえば、「自分にコーチとしての成長マインドセットがあるか」「人脈づくりが自分らしいスタイルでできているか」などを振り返り、うまくいっている点と改善の余地を把握します。

テスト形式のアセスメント

テスト形式のアセスメントは、性格特性、価値観、知識領域といった科学的に検証された要素を測定するもので、個人に対する深い洞察を提供します。これらのツールは自己認識を深めるとともに、個々人の特性に基づいた、よりパーソナライズされた成長の道筋を示してくれます。以下はその代表的な例です。

  • リーダー適性テスト状況判断に関する設問により、リーダーが職場におけるさまざまな場面にどう対応するかを測定します。たとえば、DDIの「Leadership Skills Insights」では、15のコンピテンシーに関する客観的なデータとフィードバックを提供します。
  • 性格診断個人の根本的な性格傾向、動機づけ、リスク要因などを明らかにする診断です。たとえば、DDIの「Leadership Personality Insights Inventory」では、「リーダーシップ・スタイルレポート」を通じて、自身の影響力の全体像を把握することができます。また、変化を推進する姿勢やステークホルダーへの働きかけなど、性格特性が具体的な行動にどう影響するかを示す追加レポートもあり、対話や気づきを深めるきっかけになります。

シミュレーション型のアセスメント

シミュレーション型のアセスメントは、特定スキルに焦点を当てた演習から、対象職務を再現した1日の疑似体験まで多岐にわたります。設計次第で、偏りの少ない客観的な行動データが得られ、実務に近い状況下でのリーダーのパフォーマンスが明らかになります。これは、自己診断や他者からの印象では捉えにくい貴重な視点を提供します。代表的な例は以下のとおりです。

  • 演習型シミュレーション:限られた時間内に特定の職場課題にリーダーがどう対応するかを測る短時間の演習です。たとえば、難しい場面での対話や優先順位の判断といった現実的な状況を用いてリーダーの判断力や行動を測定します。時間やリソースを最小限に抑えながらも、的確な洞察を得ることができます。
  • ビジネスシミュレーション:いわば「リーダー用のフライトシミュレーター」のような、没入型の体験です。参加者は架空の企業で将来の役職を担い、複雑なシナリオの中でのメール対応、会議運営、時間制約下での意思決定、戦略的タスクの遂行などを行います。この「1日の疑似体験」は、参加者にとって大きな学びになり、人事部門にとっては、能力開発計画や後継者育成を加速するための豊富な行動データを得る絶好の機会となります。

能力開発を目的としたアセスメントを導入するには

能力開発を目的としたアセスメントの導入には、綿密な計画と十分な配慮が必要です。単に適切なツールを選定するだけでなく、プロセス全体が明確かつ公平であり、成長を主眼に置いて設計されていることが重要です。以下に、アセスメントの効果を最大限に引き出し、持続的な成長へとつなげるための主なステップをご紹介します。

複数のアセスメントを活用する
包括的なアセスメントと、特定のスキルに焦点を当てた短時間のアセスメントの両方を、能力開発プログラムや日常業務に取り入れましょう。リーダーは、リアルタイムで関連性の高い、個別化された洞察を得ることで大きなメリットを享受できます。

ステークホルダーと丁寧なコミュニケーションをとる
アセスメントの目的や意義について、すべての関係者に十分な説明と情報共有を行いましょう。アセスメントにはデリケートな側面があるため、細やかな配慮が欠かせません。特に重要なのは、「評価」や「選抜」を目的とするのではなく、あくまで「成長を支援するもの」であると明確に伝えることです。アセスメントから得られるデータや洞察は、批判ではなく、個人の継続的な成長を後押しするためのものである、という前向きなメッセージを発信しましょう。

役割と期待を明確にする
関係者それぞれの役割と期待を明確にしておくことも不可欠です。特にリーダーの上司は、能力開発において重要な役割を担います。アセスメントで得られたデータや洞察を共有することが、リーダーとその上司との間に協力的な関係を築くきっかけにもなります。上司は、リーダーが自身の行動や判断を客観的に理解し、裏づけを得るための「鏡」として役割を果たすことができます。

アセスメントデータの活用と共有方法を明確にする
アセスメントから得られるデータの取り扱いについては、あらかじめ明確な方針を策定し、関係者全員に周知しておくことが大切です。データはどのように活用されるのか、誰がアクセスできるのか、どこに、どのくらいの期間保存されるのか、といった点を事前に明示すれば、参加者の安心感と信頼性を高められます。

アセスメント結果を行動につなげるには

アセスメントは、それ自体が気づきや内省、学びをもたらす貴重な体験ですが、その真価が発揮されるのは、得られた洞察が「行動」につながったときです。アセスメント結果を体系的な能力開発施策に反映させると、個人や組織の成長を直接促進する原動力になります。ここでは、アセスメントの効果を最大限に引き出すための実践的な方法をご紹介します。

実行可能な能力開発計画の策定

優れたアセスメントは、「何を改善すべきか」だけでなく、「どのように改善するか」までを明らかにするもので、具体的な能力開発計画につながります。こうした洞察を基に個人またはチームの育成プランを策定し、具体的な学習体験や業務への適用、さらには測定可能な成果へと結びつけます。最も効果的な育成プランは、課題の克服と強みの活用の両方に焦点を当て、補完的というよりも前向きでエネルギーに満ちた成長へのアプローチを実現します。

進捗状況の確認とフィードバックの提供

能力開発を継続的な取り組みにするには、柔軟な見直しと新たなインプットが不可欠です。定期的に進捗を確認する機会を設け、設定した能力開発目標に対してどの程度達成できているのかを確認しましょう。その際には、客観的な業績データと主観的なフィードバックの両方をバランスよく収集します。このような継続的な進捗確認により、育成施策を状況に応じて柔軟に見直すためのフィードバックのサイクルが形成されます。 さらに、初回のアセスメント結果を基盤として、パルスサーベイやピアフィードバック、自己内省などを組み合わせれば、重点的に取り組むべき領域にリソースを集中させつつ、変わりゆく能力開発ニーズをより多面的に捉えられます。このように、アセスメント⇒行動⇒職場適用のサイクルを継続することで、能力開発は単なる計画書ではなく、進化し続ける実践的なプロセスへと変わります。

上司による支援とコーチングの活用

上司は、従業員がアセスメント結果を正しく理解し、活用するうえで極めて重要な役割を果たします。上司がコーチングスキルを身につけることで、アセスメント結果に基づいた意味のある対話が可能になります。コーチングスキルを身につけた上司は、複数のデータを読み解き、優先すべき能力開発領域を特定し、成長への責任が明確化するよう支援できます。パフォーマンスの高い組織では、上司が自信を持って能力開発に関する対話を行えるよう、必要なツールやフレームワークを整備しています。

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