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学習と能力開発の違いとは?

学習しているにもかかわらず、なぜ、成長していないのか?

人事担当者は、リーダーシップ開発プログラムの投資対効果を立証しなければならないというプレッシャーを受けていることがよくあります。リーダーの貴重な時間を使い、限られた予算の中で、プログラムから最大限の効果を得るにはどうしたらよいでしょうか?一つの方法は、学習と能力開発の違いに着目することです。しかし、学習と能力開発の違いとは何でしょうか?その違いはどのように現れるのでしょうか?

学習とは新しい知識を得ることで、能力開発とは、その知識を活用して成果を上げ、成長することです。リーダーシップに関して言えば、リーダーが単に学ぶだけで成長しないようなプログラムを作る余地はありません。 もし貴社のリーダーが学習しているにもかかわらず、成長していないとしたら、次のようなことが考えられます。

1. 組織が自律的学習に頼りすぎている

リーダーは自身の能力開発を自律的に行うべきだという話をよく聞きます。確かに、リーダーは能力開発に積極的に取り組み、学んだことを活かして成長していくように努力すべきです。しかし、これは自律的学習だけに頼ればよいという意味ではありません。

多くの組織では、膨大な学習コンテンツが搭載されたオンライン・ライブラリに投資しています。そして、リーダーシップ・スキルをオンデマンドで身につけるための「ワン・ストップ・ショップ(すべての学習コンテンツが集約されている場所)」として、リーダーに推奨しています。さらに、これらのコンテンツは質が高く、説得力のある方法で提供されています。

しかし、この「ものを作れば売れる」という戦略では、より協調型のリーダーシップ開発プログラムと同じような効果を得ることはできません。協調型のリーダーシップ開発プログラムでは、リーダーは心理的安全性が保たれた環境でスキルを習得し、同僚と協力しながら新たに身につけた行動を職場で実践することができます。

昨今、リーダーは、社会的要素が盛り込まれた能力開発を求める傾向があります。リモートワークやハイブリッド型勤務で働く時代において、リーダーは同僚から孤立していると感じることがよくあります。MSC/DDIの最新の調査「グローバル・リーダーシップ・フォーキャト2023」によると、リーダーが最も望んでいる学習手法は、ファシリテータによる研修です。一方、オンラインによる自己学習は、下位に位置づけられています。

2. リーダーが能力開発プログラムに参加するが、行動変容も成長もしない

学んだことは、職場で実践されてこそ、成長につながります。リーダーがトレーニング・プログラムに参加しても行動が変わらなければ、彼らは学んだだけで、確実に成長していません。

行動変容も成長もしない原因は何でしょうか?それは多くの場合、自己洞察が欠けていることです。自身の盲点を明確にするには、360度診断シミュレーション・アセスメントのような診断ツールが役に立ちます。また、なぜ変わる必要があるのか、どうすれば変わることができるのかを示すためにも適しています。さらに、これらのツールから得られるデータや洞察によって、リーダーは行動変容に取り組むようになります。

リーダーは、部下の能力開発が組織のビジネスや文化的な優先事項と結びついていないと感じている場合も、行動変容をするのに苦労します。組織に大きな変化があったにもかかわらず、同じ学習プログラムが何年も実施されている場合、リーダーはそのプログラムを、時代遅れで仕事との関連性が低い、あるいは単なる形式的なものと見なすかもしれません。業績上位の組織では、どのようにこのような状況を回避しているのでしょうか?それにはまず、リーダーのニーズ分析を定期的に行うことから始めるのがよいでしょう。また、組織が提供する能力開発プログラムを、リーダーが現在直面している課題に合わせることも有用です。

学習と能力開発の違いを考える一つの方法は、「現在のビジネス状況において、リーダーが最も懸念していることは何か?」を自問することです。離職率が急増しているのであれば、それに対応できるスキルを身につける必要があります。会社が合併や買収を経験しているのであれば、リーダーシップ・プログラムでは、複雑な利害関係者にうまく対応し、変化をリードするスキルをリーダーに習得させる必要があります。リーダーが、リモートやハイブリッド型勤務で働くチームのリーダーとして適応するのに苦労しているのであれば、リーダーシップ・プログラムで、チーム憲章の作成、バーチャルチームにおけるリーダーシップ、健全なリモートワーク文化の醸成に関するスキルを向上させる支援をする必要があります。

3. 学習が断片的で「つながり」に欠けている

学習が単回の発生ベースで、一連の能力開発の一環となっていない場合、有益なリーダーシップ開発の流れを作ることは難しくなります。リーダーは、リーダーシップ開発の機会を最大限に活かしたいと思っているかもしれませんが、それにはアドバイスと方向性が必要です。リーダーシップ開発の専門家であるあなたの仕事は、そのような仕組みとアカウンタビリティ、エンゲージメントを作り出すことです。

そのために、多くの組織がラーニング・ジャーニーのアプローチを取り入れています。このアプローチでは、能力開発を、時間をかけて行う行動変容と捉えています。リーダーが、強化するスキルに焦点を当て、公式な学習、1on1のコーチング、アセスメント、オンラインの補完ツール(ジョブエイド、マイクロコース、チャットボット、シミュレーション演習など)を組み合わせて取り組むことで、行動変容が起こります。ラーニング・ジャーニーではリーダーに、能力開発のロードマップと、学習したことを職場で適用するためのあらゆる方法が提供されます。

ラーニング・ジャーニーの効果に関するMSC/DDIの調査によると、このアプローチを採用している組織では、質の高い能力開発施策のある確率が3.4倍、リーダー人材の供給体制が優れている確率が2.9倍、高業績である確率が2.5倍高くなっています。

4. リーダーが上司からの支援を受けていない

学習者が最も成長できるのは、上司からコーチングの支援を得られたときです。このような環境では、学習はパフォーマンスを向上させるための手段であって、目的ではありません。学習を能力開発につなげるためには、上司が学習者に新しいスキルを職場で適用させ、有益なフィードバックを提供しなければなりません。

上司の中には、「人事が解決できるだろう」と考え、苦労しているリーダーを善意で研修プログラムに参加させることがあります。リーダーシップ・スキルに悩んでいる人は確かにリーダーシップ開発プログラムに参加すべきです。しかし、パフォーマンスの問題を人事に委ねることは、上司がリーダーの能力開発に、もっと積極的に関わるべきだという兆候と言えます。

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執筆者:DDI社 リーダーシップ・アドバイザー マーク・スメドレー

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